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新フォーチューン・クエストL 2
ゲームテイストの入ったファンタジー小説。主人公の女の子の一人称で描かれ、一風変わったチームで冒険をしている話。

この作品の貴重な点は、主人公たちが露骨なヒーローやヒロインではないところ、崇高な目的がないこと、ファンタジー的な日常に焦点が当てられていることである。

間違いなく主人公の女の子は作者の分身だろう。冒険に行った話を小説に仕立てて原稿を売って生活の足しにしている、という設定になっている。日々生活のやりくりをし、チームのことを考えてがんばるけど、時々間が抜ける。彼女の一人称で語られているため、彼女自身についての客観的な描写は一切ない。それがある種のリアリティを感じさせる。

たとえば、作中にはかっこいい男や女、かわいい男の子や女の子が出てくる。そんな登場人物の描き方は、そのまま主人公の彼女の感情として語られる。そんな魅力的な登場人物が、彼女やチームメンバーに好意を寄せたりしたんじゃないか、という描写をする。一人称なので断定がない。

主人公の彼女に対して、同じパーティに二人の男の子がいるが、仲間としてつきあっている。ただし、そのうちの一人トラップは、ひょっとして主人公に気があるの?というそぶりを見せる。もちろんその描写も主人公の彼女の視点で一人称で語られる。もう一人のクレイは、地味に見えるけど実はそこそこかっこいいという設定で、性格も非常によくリーダーの仕事をきっちりがんばっている。こういう人を仲間に持ってるんだ、という喜びを感じたいという作者の願望が、読者と共有する仕掛けになっていると思う。

ちょっとイヤらしい言い方になってしまったけれど、この作品の表現方法は非常によくできていると思う。一人称の使い方が少女漫画っぽいのだけど、主人公を作者の分身としたことで都合のいい夢物語では得られないリアリティがある。チームにはほかに、巨人とやや小人っぽいのと子供と動物がいるのだが、これらの特徴的だが地味な脇役たちは、あえてチームを同世代の男女だけにしないことによって妙な日常感が出ている。

以上がシリーズについての説明なのだが、今回の「新フォーチュン・クエストL 2 静かな湖畔のモンゲーナ」について言えば、非常に淡白で面白くなかった。ゲームをそのまま小説にした感じで、何の奥行きもない。それもそのはず、ページの 25〜30% を RPG の遊び方に割いている。作者は RPG を広めるためにこの作品を書いたのかと疑う。ここでいう RPG とは多人数でやるほうのもので、コンピュータRPG がメジャーになった裏でマイナーなオタク遊びと見られるようになったほうのものである。
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