歴史の嘘を見破る 日中近現代史の争点35 |
中国に「○○○」と言われたら、という35編の小ネタを各執筆者が書いた小論文をまとめたもの。諸君!という保守系の雑誌の特集がベースとなっている。
これだけ沢山の人が書いているにも関わらず、駄作が見当たらないのは素晴らしいことだ。二三ちょっと論旨が分かりにくいものはあったけど、一つ一つの文章がテーマを絞っていて読みやすい。テーマを外れて野心的に自説を語り出すような人はいなかった。
資料から事実を抜き出してまとめたタイプの文章が多く、膨大な本を読まずにネタに出来そうなところが良い。それぞれの末尾に読書案内まで付いていて、さらに知識を深めるための手引きとなる。
あえて言わせてもらうとしたら、面白みに欠けるきらいはある。この本を手に取るような人にとってはいまさら面白みは不要だからだろう。なので、最初に読む入門書としてはもっと適した本、特に小林よしのりの作品のように面白く主張にあふれたものが良いと思う。
私が本書で特に興味深かったのは、戦中の混乱した中国の実像に触れたものと、盧溝橋事件について旧ソ連の流出資料から共産ゲリラが引き金を引いた説よりも有力と思われる中国犯人説、21ヵ条要求やリットン報告書の詳細が実は正当な武力の行使の妥当性を裏付けるものであったこと。
だが何といっても一番素晴らしいのは、編者である中嶋嶺雄による巻末の論文だ。幣原外交は中国の本質を知らない最悪の軟弱外交だったこと、戦前戦中の排日運動のすさまじさ、そしてそれを現代と紐付けて危機を訴える迫力に圧倒された。非常に説得力のある文章で、読んだあと戦慄した。ちょっとおおげさか。ともかく、本書を手にとったら、買わなくてもいいから巻末のこの論文だけでも読むと良い。そんなに長くないし。
本当は諸君!誌の新聞広告を見て雑誌の方を買おうと思っていたのだが、そのあとすっかり忘れてしまったので、新書という形にまとまってくれてよかった。
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