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キノの旅
キノという名の若い銃使いライダーと、エルメスという喋るモトラド(バイク)が、SF風の不思議な国々を訪れてそれぞれの国で変わった体験をしていく連作短編。

訪れる国々がすべて極端な特徴を持っていて、それらの国々の持っている特長が各短編の題になっている。たとえば一話目が「人の痛みが分かる国」で、二話目が「多数決の国」だ。題名を聞くだけでどんな話が語られるのかちょっとワクワクする。

各話はまず主人公キノとエルメスの簡単な掛け合いから始まる。キノの持つ装備の説明とか、いま走っている場所の描写、ふざけるエルメスの冗談なんか。ちょっとぎこちないけど丁寧に書こうとしていることが伝わってくる。

でもなあ。一言で言うと、弱い。あらゆる要素が弱い。一番致命的なのは、アイデアが弱いこと。アイデアさえ良ければ、どんなに拙い文章でも面白いのに。第五話「大人の国」だけはちょっと面白かったけど、あとのはどこかから取ってきたような話を中途半端に焼きなおしただけ。特にSF好きからすれば評価が辛くなる。いちいち各話を解説しながらけなしていくだけの価値もないので触れないことにする。

ライトノベルってやっぱりアニメの脚本を意識して書かれているんだろうな。首藤剛志のコラムを読んだあとなので余計にそう思う。そういう目で見れば、この人はあたりさわりのない良い脚本家になれそうな気はする。つまらないけど。
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