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学校を出よう!5〜6
超能力が使えるようになってしまった若者を収容する全寮制の学園内で突如謎の死体騒動が起きた。際限なく深刻化する事態、謎の観察者の暗躍。いつまでも暗いトンネルの中を進んでいくような登場人物たちの歩みが、メタな視点とともに描かれる物語。

この作品のことはとても一言では語れない。良く言えば様々な要素がちりばめられた魅力にあふれた話なのだが、悪く言えばそれらの要素どれもが微妙で完全には納得しがたいのである。

これからそれを一つ一つ説明していくが、私は4巻を読んでいないのでそこに重要な要素があったとしても分からないのでそこだけは断っておく。

まず形式的に分かりやすいことから述べると、本作にはメタな構造があり、それは目次と本文を多少読み進めば明らかである。この物語を俯瞰する何者かの存在が描かれている。それがなんであるかについて、私はもっと納得のいく説明があってほしかったが、結局作者はこの構造だけ描いて終わってしまっている。これだけで楽しめる人もいるが一部のマニアだけだろう。SFの悪いところの一つだ。

SF的な仕掛けも完成度が落ちる。出来の悪いものが描かれているのではなく、一から十まで語られないので納得できない。特に最後の解決がどういう原理なのかがよく分からない。その他いろいろ。多分作者的にはどうでもいいことなのだろうと思われる。

筋書きとしては、どんでん返しが用意されている。純粋に筋書きだけを抜き出すとあまりよくできていない。本作の事態が何のために作り出されたかという理由付けが弱いからだと思う。理由付けは二つあるが、そこについての描写が今一歩なのが弱さの原因だろう。そのうちの一つは読者の想像力に委ねているとするならばそれもアリだと思うが、もう一つのほうは明らかに描写不足だろう。ひょっとしてそれが私の読んでいない4巻にあるのだろうか。

ええい、まどろっこしい言い方はやめよう。抜水優弥の存在を底深く描きすぎたために、物語は深遠になったが読者も煙に巻かれているのが一つ。縞瀬真琴という突出したキャラを使ってラブストーリーに仕立てたことで、読者が共感とは程遠いところに投げ出されてしまったのが一つ。

そして本作いや本シリーズ全体を通じて最大の魅力であり弱点でもあるのは、登場人物の心情が具体的には説明されず、間接的にしか描かれていないことである。作者からすれば、もうこれだけ描けば説明なんていらないだろうと思っていることだろうし、それには私も完全に同意する。しかしおおかたの読者にとっては、分かりやすい何かが必要なのではないかと思うのだ。

真琴の最後の台詞がまさにその分かりやすい何かなのだと思うのだが、真琴については先に述べたようにキャラが強すぎてわけの分からないことになっているから読者も受け止めにくいのだと思う。少なくとも私自身がそうだった。それ以前に、重要なシーンがあっさりと描写少なに語られるのは演出というより技巧的な問題のような気もする。

そして最後の宮野の判断もまたその分かりやすい何かであり、これらは今まで色々な物語で使われてきた手法である。宮野が本作の騒動で何を一番楽しんだかと言えば、それはもう騒動の中でのふれあいに違いないのだが、これを理解し楽しむには読者の経験とのつなぎあわせが不可欠である。

じゃあなにか、たとえば「宮野は楽しかった」みたいな説明があればそれでいいのかというとそれも違う。それをどうにかするのが作家の仕事なのである。結局のところ小説というものは、読者がこれまで感じてきた様々な経験を作家が引っ張ってきて、作家のセンスでつなぎあわせてみせるものだ。シンプルにつなげるのも一つだが、少なくとも本シリーズの売上実績からするとあまり成功しているようには見えない。

という余計な思索をついついしてしまうのも本作の魅力だろう。本作の中でも登場人物たちが様々な思索に耽る。物語と関係ないことや間違った考え、さらには思索自体が最後まで行かず不完全なまま放り出されたりと、実に奔放である。それを読者が楽しむか遊ばれたと思うかは人それぞれだろう。

要は何を言いたいのかというと、一言で言えば本作は読む人間を選ぶということであり、以上の私の説明を読んである程度納得できる人ならば読む価値の高い素晴らしい作品だと思う。
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