ALWAYS 三丁目の夕日 |
昭和三十年代の東京の下町を舞台に、集団就職(?)でやってきた少女や自動車修理工の家族、文学賞を取れずに子供向けの小説を書いて食べるいる元ボンボンの青年とそこへ預けられた子供の物語。貧しい中にある人と人との暖かい絆が描かれる。
評判を聞く限り懐かしいだけの映画かと思ったら、脚本もしっかりしているし役者の演技もいいし、もちろん昭和三十年代の美術も雰囲気出てるし、普通に楽しめてホロっときた。
自動車修理工の家に住み込みで働くことになった少女を堀北真希が演じている。性的な魅力を感じさせないリアルに田舎くさい少女だ。修理工の一家にきどらずなじむ様子が微笑ましい。親への想いも終盤ジンとくる。でも実はこの少女にはそれほど焦点が当たっていない。そこが気に入った。肉体派のオヤジの姿とか、そのオヤジにブレーキをかけるおばさん、無邪気でちょっとにくたらしいガキと、均等に描かれているのだ。
文学青年のほうは吉岡秀隆が演じている。クレジットでも多分この人が主演ということになっている。養うことになった子供や、子供を押し付けてきた飲み屋の女との、最初は一方的だった関係が徐々に双方向になっていくところに心が温まる。文学青年の情けない声色を聞いているうちにどんどん感情移入していってしまった。
自転車でかっ飛ばすばあさんとか、昔の思い出の中で生きつつも元気でやってる医者とか、なにげにちょろっと出てくる温水洋一のさみしい頭とか、脇役陣もそれぞれ味がありつつ自己主張が控えめでいい。ちょっとベタだったり微妙さを感じさせるところもあったけど、ほとんど気にならなかった。誰にでも分かる強い感情に根ざした話ばかりだからだろう。
これだけ色々感傷的なものを詰め込んでおきながら、感傷に流されていないバランスの良さはすごいんじゃないだろうか。私はこの世代じゃないので特別な思い入れがないのだけど、ジャストミートな世代の人はもうそれだけで胸が一杯になるんだろうなと思った。一応私も駄菓子屋とか模型飛行機あたりで少しかすっているので分かる。
今週の週刊文春には、この映画を安倍首相が大好きみたいでしきりに周りの人に勧めているらしいのだが、この程度の映画を賞賛するのは審美眼がないみたいなことが書かれていて、それで私は気になって今回録り貯めていた本作を観てみた。とてもいい作品だと思う。こういう人と人とのつながりが安倍さんの言う「美しい国」なのだとしたら、ぜひ実現してほしい。ときれいに結んだつもりになってみる。
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