いつか夢の中で 1,2巻 |
中世ヨーロッパ風の世界に魔法を加えた典型的なファンタジー世界を舞台に、眠れる森の美女を自称するぐーたら姫と森に住む魔法使いの青年が繰り広げる少女漫画にしては強烈なギャグとちょっとだけラブロマンスのある作品。その他、独立した短編がいくつも収録されている。
作者は絵がヘタだが卓越したギャグセンスと感動話の作り手の遠藤淑子。この作品はぐーたら姫シリーズと銘打たれている。
最初にヒロインが登場するシーンからすっとぼけている。3コマ続けて姫のベッドが描かれ、「起きないので紹介のバストショットのコマが描けません」と解説が入る。ファンタジー世界なのに姫が通販にハマっていたり、ところどころ現代の要素がギャグに使われている。少年誌で数年で廃人になる一線のギャグマンガ家と比較しうる高いレベルのギャグセンスが素晴らしい。
ただ、最初に読んだときはページをめくるごとに声に出して笑ったものだったが、再読してみるとさすがに古さを感じるしギャグもベタに思える。とはいってもじっくり読んでいくと今でも笑える。今と昔だとマンガの速度が違っていたんだなあと思う。
終盤が長編形式になっていて、ストーリーも描写もいまいちなのが残念。普通のファンタジーっぽい話を無理に描こうとして失敗したんじゃないかと思う。それ以外はまあまあ。
ぐーたら姫以外の短編は、まあ好みが分かれるところだろう。私の感覚で言えば、おおむね普通のレベルの作品ばかりだ。
一つ「きらきら星」の出来が一つ抜けていると思う。自称いんちき占い師のもとに相談に訪れた少女は、イギリスに転勤する男と結婚して彼に付いていこうとしたのだが、本当にそれで良いのかどうか悩んでいた。金に目がくらんだいんちき占い師は次々に少女の世話を焼いていくのだが…。ギャグと感動の絶妙なコンビネーションで遠藤淑子の魅力が凝縮された作品だ。結末がちょっと弱いけど。
あとこの人はSFの要素が好きなんだなあといまさらながらに思った。SFの仕掛けだけで話をまとめたりはしないのでSF作家という感じはしないのだけど。
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