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セーラー服と機関銃 (長澤まさみ版)
小さい頃に母親を、作中に事故で父親を失った女子高生の主人公が、血縁が理由で浅草を根城とする小さなやくざの組長になり、若頭の佐久間に助けられながら組長の責任を果たすためにがんばったり、父の死の真相を探ったり仲間を守ろうとしたりする話。

原作が人気作家赤川次郎で、過去に薬師丸ひろ子や原田知世が主演してテレビドラマ化された作品が有名で、本作は2006年に時の流行アイドルとされる長澤まさみの主演でリメイクされたもの。

私は原作も知らないし大ヒットした過去のテレビドラマも知らないので完全に真っ白の状態で今回観た。週刊文春で堀井憲一郎が今作と過去のテレビドラマとを愛情込めて(?)比較していたので、機会があったら見てみようと思っていた。この人が勧めるテレビドラマは「タイガー&ドラゴン」「木更津キャッツアイ」とそこそこ面白かったから期待していた。だがこの作品は私には期待外れだった。

第一話でただの女子高生をやくざの組長にするまでの流れにイライラした。先代が死ぬときに血縁者を指名する理由がどうしても納得できないし、その先代の言葉を守って奔走する本来組長になるはずだった若頭の葛藤も物足りない。すべては主人公の女子高生のためにあるような展開が微妙すぎ。

第二話は組長になった主人公が女子高生と組長を両方やっていこうとし、特に組長として仲間や町の人の信頼を得ようとする話。やくざが成り立っている仕組みについての描写など、全体的な流れとしてはそれなりに出来ていたと思うのだが、一番盛り上がる場面での妙な甘っちょろさにがっかりした。

第三話は若頭にうらみを持つ男が若頭を殺そうとする話。この回は話の構造的にはよく出来ていたのだが、論理先行の熱い脚本に演出がついていっていなくていまいち気持ちが盛り上がらなかった。

第四話は足手まといになることを気にして堅気のサラリーマンになろうとする組員の物語。途中まで割と丁寧に進めていたと思うのだが、このドラマ初の犠牲者が出るシーンでこれはないだろうという展開にガッカリして視聴をやめた。長澤まさみの緊縛シーンだけは良かった(笑)。

主人公の女子高生以外は主な登場人物が大体男なのだが、数少ない女性の登場人物にぜんぜん魅力がない。主人公の父親の彼女だったっぽい水商売の女、組に金を払って守ってもらっているストリップ劇場の女、主人公の学校の同級生。人物造形がうすっぺらくて訳が分からない。

この作品の最大の魅力って女子高生がやくざの組長をやるっていうところにあると思うのだが、学校の描写がほとんどないのがもったいない。もっとギャグを沢山入れられたと思うのに。まあその代わり安易になってしまうとは思うが。

過去のテレビドラマから持ってきた主題歌がとても魅力的だった。メランコリーだが泣かせようというあざとさを抑えた情感のある旋律にじんわりとくる。長澤まさみの歌も初々しくてよい。

役者の演技にはまったく不満がない。多分良いと思う。だけど脚本がいまいちで話に乗っていけない。というか原作自体に無理があるというか、あまり細かいことにこだわっちゃいけないようなところがあるんじゃないかと思う。原作知らないけど。もっとサラリと力を込めずにアイドルのドラマとして作るのが正解だったんじゃないだろうか。
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