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イリヤの空、UFOの夏(の評論鼎談)
サブカルチャーを扱っているサイトで秋山瑞人「イリヤの空、UFOの夏」というライトノベルについて何人かで評論している記事。

私はこの手の宮台とかがチラつくサブカルチャー系の人たちって大嫌いなのだけど、読んでみたら結構納得できたしそれなりに面白かったので簡単な要約と自分の意見を書くことにする。

三人のキャラクターとかまではっきりと読み分けたわけじゃないのでよく分からないけど、三人合わせた知識量ってのは結構すごいなあと思った。「イリヤの空、UFOの夏」の作品の位置づけなんかをサラリと説明してくれる。ポスト・エヴァでサイカノ(最終兵器彼女)との関係がどうのとかだけでなく、エロゲー的な部分とかガンパレードマーチみたいなゲーム方面や、バトルロワイヤルやエイリアン9なんていうメジャー方面とも絡めている。このへんぐらいならオタクにとっては結構常識なのだろうけど、キチッと抑えられるかどうかが重要だと思う。

ヒロインの伊里野に萌えない、と誰かが言っていたのには安心した。最後の方でからかわれて怒って「ったくオタクはみんなイリヤみたいなのに萌え萌え言ってると思ってやがるなこのサブカル野郎め!
」と青木摩周という人が言っているとおり、サンプルが少ないながらやっぱりこのヒロインはオタクからも敬遠されたからこの作品がヒットしなかったんじゃないかと改めて思った。

セカイ系とビルドゥングスロマン(成長物語)とオーソドックス(な恋愛物語)のどれなのか、という議論は思ったより分かりやすかった。私はこういう言葉遊びにハマりがちな評論が嫌いなのだけど、ここで展開されている議論は確かにこの作品の本質に切り込んでいっているなと思った。

社会との関わりについての議論では、主人公の浅羽は成長したのかどうなのかという点で争っていた。私は「善良な市民」という人の「浅羽は何も成さなかったけど成長した」「何も成せないけど成長するのが成長物語の常道」みたいな考え方に同調する。だけどここの解釈の違いで、青木摩周という人がこの作品は成長物語の限界を示した上で普通の恋愛物語を復活させようとしたんだと言っているのも分かるような気がする。

なんだか私は彼らの目論見どおりにこの評論を読み進んでいったような気がしてならないが(笑)、読んでいて違和感を感じるところもあった。

榎本(や椎名)についてちょっと同調しすぎなんじゃないだろうか。最後はちょっと自己陶酔過ぎると「善良な市民」という人は言っているが、最後以外も不自然なところが多いと思う。私は彼らを単にセカイ系のための演出にすぎないと思う。彼らの姿勢が作中あまりに無批判に描かれているからである。もし彼らに人格を認めるならば、彼ら自身が社会の圧力の下にあることをもっと強調すべきだし、彼らが少年少女たちを見る目も愛憎半ばで過去の自分を投影したものとなるはずである。榎本視点=作者という見方にはまったく賛成できない。作者はあくまで浅羽の主観で作品を描いていると私は思う。そして浅羽の認識の及ぶ範囲内でしか語られていない。

構成のバランスで登場人物を後退させたんじゃないかと分析するくだりはなるほどと思いながら読んだが、そんなに計算高く描くものなのだろうか。って確かに作者の秋山瑞人は文章巧者だから本当にそうなのかもしれない。ますます腹立つけど。

最後余計なお世話かもしれないけど、「善良な市民」っていう筆名はいちいちカギ括弧でくくらなければならずうっとうしいのでやめたほうがいいと思う。
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