時をかける少女 (アニメ映画版) |
あるとき急にちょっとした時間移動の能力を得た高校生の少女が、男友達二人との友情から知らないうちに恋を意識しはじめて戸惑う中で、周りの事件を解決するのにこまめに時間移動の力を使っていくうちに、大事件が起きたりあっと驚く真実が明らかになったりする青春アニメ映画。
原作は筒井康隆の少年少女向け小説で、原田知世主演のテレビドラマが大ヒットしたほか、これまでに何度も映像化されているらしい。私は学生の頃に筒井康隆の著作を全集片っ端から読んだはずだがまったく記憶に残っていないしドラマも見たことがないので、まったく独立した作品として見た。
まず主人公が魅力的。ショートヘアの快活でちょっとそそっかしい少女。頭より先に体が動くタイプ。彼女にはなぜかよくつるむ二人の男の子がいるが、恋愛関係にはなく単なる友達づきあいをしている。竹を割ったような(?)すがすがしさがある。
序盤はまずそんな彼女が時間移動の能力を身につけて少し前の過去に行けるようになり、お調子者の彼女が自分に降りかかるちょっとした危機を回避するために能力を乱用する描写が楽しい。
しかし中盤、自分が時間移動の能力を使って危機を回避するたびに、他の誰かがその分だけ不幸になっていることに気づく。
そしてついにとりかえしがつかないことが起きる。
人によってこの作品の楽しみ方は色々あるんだろうけど、私はこの普段あまり難しいことを考えていなかった明るい少女が、急に色んなことが起きて考えて考えて悩んで悩んで一生懸命になるところがとてもよかった。
あとは…とりかえしのつかないことが起きようとしているときに、どうなるんだろうとドキドキして先が気になった。うーん。改めて考えてみればそれくらいか。
ヒロイン以外の登場人物に魅力が感じられなかった。男友達二人は割とリアリティがあったのだけど、ありきたりで表面的な描写に終始している。千昭のほうはもっと掘り下げたほうがよかったんじゃないだろうか。それともいまどきの若者はあんなものなのだろうか。ボランティア部の三人の女の子もちょっと極端に走りすぎじゃないだろうか。
でもほんとヒロイン見てるだけで腹がいっぱいになるのでバランス的にはこれでいいのかも。中学の頃にこんなに明るくてよく走り回っていたショートカットの女の子がいたなあ。
筒井康隆の原作ってことにしなくていいんじゃないの?Wikipedia見てみると話の内容が全然違うし。そりゃ宣伝にはなるんだろうけどさ。題名だけで。そのへんはちょっと汚いけど、そうでもしないと観ない私たちも悪いのかも。ネットの口コミで広まってよかった。
筒井康隆は「時をかける少女」が代表作だと思われていることに腹を立てているらしい。その怒りはとてもよくわかる。ほとんどハチャメチャな作品ばっかりだもんなあ。それに加えて大江健三郎とか南米の世界的大作家とかに影響されてから文藝に目覚めてヘンな趣向の作品ばかり書いているし。そういうのが大して評価されないで、子供だましみたいに書いた作品が大ヒットしたんだからそりゃ怒るわなぁ。でも私は「虚人たち」で放り出した口だから、もっと分かりやすい作品を書けばいいのにって思った。
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