星界の戦旗 II |
一介の突撃艦の艦長として兵役に就いていた帝国の王女ラフィールと諸侯ジント少年は、占領したばかりの流刑惑星の領主代行を面倒くさがりの双子の提督に押し付けられる。そこには領民代表を名乗る四人のリーダーが互いに覇を争っていた。空想未来の宇宙戦争を描いたシリーズ本編第二章。
素晴らしい。よくこんな作品を思いついて描いたものだと思う。政治的に何もないところから取り決めを作っていって治めていくところと、それが力で破綻してしまうところがなんともリアル。
流刑惑星なのでまず看守たちの一派がいる。そして囚人は居住区によって三派に分かれている。生殖活動は禁止なので、男と女は基本分かれて住んでいるが、去勢手術を受ければ一つの区で共に暮らせる。つまり、看守、男、女、男女、と四つの勢力がある。
帝国の名代として降り立ったジントは、やはりこの惑星の支配者として看守一派の長メイディーンを代表として認める。するとせっかく解放されたと思った囚人たちが反対する。ジントは彼らに移民を許可する。しかし女たち一派が移民しようとするのを男たち一派が止めようとする。彼らが自分たちの未来を拓くには生殖が可能な女が必要だからである。こうして武装闘争が始まってしまう。
政治というものへの深い理解がなければ決して書けないだろう。無政府状態の中から秩序を作っていこうとする流れがとても緊張感があっていい。それぞれの言い分を聞いてまとめようとしてなかなかまとまらない。
ようやく大体の方針が決まってからの展開も素晴らしい。段取りを決めて必要なものを調達する流れが逐一説明されている。作者の経歴にサラリーマン出身とあるが、会社員か官僚かなにか(生徒会でもいいんだけど)を経験していないとこういう描写はできないと思う。
ただ、終盤グダグダになる点だけは惜しい。例によって王女ラフィールのツンデレ描写があってそれが最後の感動的なシーンにつながっていくのだが、ちょっと作者の集中力が切れたのかなと思った。
アメリカがイラクやアフガンで何をしたいのか、どんな失敗をしているのか、ということがニュースを見るよりもこの一冊を読んだ方がずっと想像できると思う。囚人と看守に喩えるのもアレだけど。
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