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きみとぼくが壊した世界
ミステリ好きの高校生の男女二人組が、顔の広い知り合いの頼みで、イギリスの作家が書いたという「読んだら呪われて死ぬ」小説の謎を解くという名目でイギリスに旅行する話。推理小説自体をネタにした、推理小説の体をした娯楽小説。「世界」シリーズの三作目。

一作目で大きなインパクトのあった病院坂黒猫という論理的に蕩々としゃべり続ける少女が再び登場する。しかも今回はさらにキャラの壊れっぷりがいい。表紙の絵に彼女がシャーロックホームズのようなスタイルで描かれている通り、彼女はホームズの大ファンなので、イギリスのホームズ博物館で大はしゃぎする。このシーンがぶっ飛んでいる。加えて終盤のスネるシーン最高。活字というメディアをここまで活かしたナチュラルハイやスネた描写は、ほんと大げさでなく言葉の芸術だと思う。

この作品の構造的な魅力については、説明すると非常に興が削がれるので触れずにおいておく。私は何度もだまされた。普通に考えたらベタなのにすごく新鮮な感じがする。力量で寄り切ったって感じ。

例によってこのシリーズの軸として、ミステリーだか推理小説それ自体をネタにして解説するかのようなメタな内容がある。今回は内容的にちょっと小粒で、知的好奇心をあまり刺激されなかったが、二人の軽妙な会話が中心なのでむしろ娯楽要素を邪魔しない控えめなバランスでちょうどよかった。

作者これ絶対出版社の金でイギリス旅行に行っただろうと突っ込みを入れる準備万端であとがきを読んでみたらまったく触れられていなかった。

これまで触れてこなかったけど、イラストのTAGROっていう人の絵もなかなか味があっていい。

旅行をメインにした作り話って例外なくつまらないと思っていたけどこの作品はまさに例外中の例外だった。難点は、構造上、締めがどうしてもああなってしまうことで読後感が多少損なわれるところだけど、そんなことがあまり気にならないぐらい素晴らしい作品で、私の中の架空の旅行の思い出が増えた。

題名の意味はさっぱり分からなかった。
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