「少年犯罪被害当事者手記集」を読んで |
自分の子供を少年に殺された親たちの言葉をまとめた『話を、聞いてください』(サンマーク出版)という本を読んでの、田口ランディが同じ子持ちとしての率直な感情を書いたもの。「私は本当に正直に言うと、聞きたくないと思った」という驚くべき感情とその理由説明により、なぜ被害者の親たちが地域社会から避けられるのかを推測している。
テレビや週刊誌で、少年犯罪について深く掘り下げられて、事件にかかわる犯人の親や遺族の親、学校の先生や保護者たちのことが報道される。決まって見られるのは、被害者の遺族に対する妙な風当たりの強さである。法律や裁判官はもちろんのこと、同じ子供を持った地域社会の親たちまでもが、事件や被害者の遺族を避けるのだ。こんな不可解なことがなぜ起きるのか、私には全然理解できなかったので、これも日本の閉鎖的な村社会がそうさせるのだろうと漠然と考えていた。
それが、田口ランディの、自らも同じ子供を持った親としての率直な気持ちを書いたこのレポートを読んで、おおかたの疑問が氷解した。自分の子供がいつ事件に巻き込まれるのか分からない、という不安を抱えたくないのだという。それはそうだ。被害者になることだけでなく、加害者となることもありうる。そういう現実に向き合いたくないのだ。
こういう自分のネガティブな感情も書くことのできる田口ランディには多少の敬意を持つ。親としての無責任さを指摘することもできるだろうが、それはそれとして、できれば彼女の指摘するように、子持ちの親ではない人たちがなんとかできないものかと思った。多分子供を持っていない人は持っていない人で、少年犯罪とは距離があるのかもしれないのだが…。
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