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東京開化えれきのからくり
やや脚色した明治維新後の日本で、もと岡っ引きの善七は不思議な炬燵アザの死体の謎を追ううちに、維新を利用してなりあがろうとする実業家の佐久間の野望に行き当たる。火消しや花魁や発明家や人足など様々な立場の登場人物たちが重層的に絡み合う文明開化ミステリー小説。

作者はSF作家の草上仁。私はこの人の初期のあたたかい短編集と処女長編が大好きなのだけど、その後の長編は振るわないなあ。前に読んだ「お父さんの会社」だったかはサラリーマン社会のネットゲームということでアイデアは面白かったけど長編的な魅力に乏しかった。本作について言えばアイデアもつまらない凡作だった。

色んな登場人物を沢山出して平行して語り、物語が進むにつれて糸が一本になっていく手法って、いわゆる普通の小説ではかなり一般的なものだと思うのだけど、登場人物それぞれに魅力あってこそのものだと思う。私はこの作品に出てくる登場人物には誰にも魅力を感じなかった。あいつとあいつが遭ったらどうなるんだろう、っていうドキドキ感が微塵も感じられなかった。キャラの設定だけで満足しちゃったんだろうな。類型みたいなのとで。

それでも最後にうまいこと解決するところだけは気持ちよく読めるだろうと思って放り出さずに全部読んだのだが、正直さっぱりだった。よく我慢して全部読んだよなあ自分。

敵の内幕を語りすぎなんじゃないだろうか。コロンボ型と言ってしまえばそれまでなのだが、それならそれで気を使って書かないと面白くならない。登場人物が危機に陥る場面にもまるで危機感がない。一方であっさり死んでしまう人がいたり。うーん、ミステリーっぽいものを書くのがヘタなんだろうな。

ついでに唐沢なをきの絵も嫌い。第一印象から悪かった。なにこのヘンにコミカルで世界観を押し付けるような絵は。
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