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ああ言えばこう食う
タレントでエッセイストの阿川佐和子と、女優で本も書く壇ふみの、往復書簡式の連作エッセイ。罵倒とも取れるあけすけな突っ込みあいの下には深い友情があった。

詳しいことは知らないが本書は結構ヒットしたエッセイ本だったように思う。1999年に講談社のエッセイ賞を受賞しているそうだ。

とても面白かった。そもそも私は阿川佐和子のファンなのであるが、相方の壇ふみとのコラボは非常に良い相乗効果をもたらしていると思う。阿川佐和子の変人性は、自分で自覚して書いている分でも十分面白いほどだが、壇ふみという非常に近い親友の目から見た視点が加わることでさらに魅力を増している。

本書の最後に五木寛之もまじえての鼎談が収録されており、その中で五木が本書の魅力を異性、食、家族の三つだと言っており、まさにそのとおりだと思った。

異性というのは阿川の見合い数十回という定番ネタや、壇ふみの海外でのロマンス(ただし空気読めず)あたりだろう。これも食も絡んでくるのだが、阿川の破談ネタは一体いくつあるのだろうかと思うほど本書でも披露されている。

往復書簡なので数ページずつ二人で大体交互に書いているのだが、片方が他方のことに触れた話が次の項で明らかになる構造はとてもワクワクする。たとえば壇ふみのページで阿川がクッキーを千数百枚焼いた話がサラリと揶揄気味に触れられると、阿川のページでその顛末が語られたりする。阿川が賞味期限の切れたものが冷蔵庫にあふれている話の中で壇ふみの強靭な胃腸についてやはり揶揄気味に触れると、壇ふみがそれについて釈明したりして話を展開する。

阿川佐和子の父親の阿川弘之の相変わらずのキャラクタがウケる。阿川弘之が犬を飼おうとしていることを聞きつけた壇ふみがいくつか助言をするのだが、数週間後に結果的に助言をたがえた阿川弘之からのコトヅテがシンプルで妙に面白い。母親が入院したのに麻雀の区切りがつくまで病院に行かなかったエピソードなど、暴君だけど妙に子供っぽくて小物っぽいところが面白い。

壇ふみの「おじさま」の話もウケた。叔父がヨーロッパ旅行に行くというのでマナーを教えるために壇ふみが随行したときの話なのだが、パリに三つしかない(当時)三ツ星レストランに田舎の親父を連れて行くノリでドキドキハラハラする。

こんなに読みやすくて面白くて万人ウケする本ならそりゃヒットするだろうなと思った。広く勧めることのできるとても良い本なので、見つけたら手に取ってみて欲しい。
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