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バテン・カイトス2 始まりの翼と神々の嗣子
田舎で孤児たちの面倒を見る母親のために、そして帝国の皇帝に復讐するために帝国の暗黒部隊に入隊していた少年サギは、ついに皇帝暗殺の実働部隊として派遣されるのだが…。少年に付き従う謎の人形ギロと、帝都で出会った箱入り娘のおてんば少女を仲間に、遥かな昔の神話と交錯する遠大な冒険のコンピュータRPG。

2ちゃんねるのまとめサイトで、戦闘システムが楽しいRPGとして本作品が紹介されていたので、前作ともども秋葉原で投げ売られていたのを買ってプレイしてみた。

今回は前作と同じ世界の話だが時代が遡っている。前作に登場した人物が何人も出てくる。冒険の舞台もグラフィックスが使いまわされていたりする。それはまあいいか。

そしてさらに神話の世界の話が平行して進む。主人公サギが時々ひどい頭痛に苦しめられると、不思議なことになぜか神話の世界に飛ばされてそこで別人格になって冒険が進められる。この世界は一体なんなのか。彼らは一体何と戦っているのか。物語の後半になってそれは明かされる。

前作も構図のものすごい転換で驚かされて、それはそれで楽しませてもらった。今回もそれに劣らないぐらい見事な転換がある。この作品の一番核心にあたる部分なのでここで解説するのは控える。

でもすごいのは構図だけで、プロットや脚本がひどい。前作もそうだったけど今回も改善なし。まず、主人公の少年サギが帝国の暗黒部隊に所属しているところからしていきなりうんざりさせられる。そのくせ性格は甘チャン(もう死語か?)。ちんけな陰謀に巻き込まれる。そこで軍務官ネロに拾われ、彼のために小間使いをすることになる。ストーリー前半はこうして各地のマキナ化(機械化)を防ぐために奔走する。

ヒロインのミリィアルデとは、主人公サギが帝都でピンチになったときに急に助けに現れて出会う。絵に描いたようなおてんばキャラ。サギの相棒の謎の人形ギロとしょっちゅう喧嘩する。でも何かサギに隠していることがある。すごく思わせぶりだけど終盤にならないとその秘密は明かされないし、明かされた時点ではもうどうでもよくなってる。

前作のライバルキャラのジャコモが少年の姿で出てくる。っていうかこの時代は少年だった。負けん気の強い少年として何度も主人公の前に立ちふさがる。制作側の並々ならぬ愛情が感じられるのだが、プレイヤーの私はシラケた。しかもこいつがやたら強いんだよなあ。戦闘のシステムが最初よく分からなかったから相当苦戦した。何度も全滅してやりなおした。雑魚戦は全滅すると一発でゲームオーバーなのだけど、ボス戦は何度もやりなおしできる。それはいいけど、気がつくと一時間以上延々戦闘してたりする。ゲームバランスが結構厳しい。

ジャコモは今回はそんなに出張ってこなくて、今回は違うライバルキャラらしいのが三人か四人ぐらい出てくる。そいつらも妙にぬるいんだよなあ。最後はいい人になっちゃうのには本当にうんざりさせられた。

あんまり細かいこと言ってもしょうがないのでまとめちゃうと、この作品の物語を作った人っていうのはどうも感覚がおかしいと思う。この作品のストーリーを楽しめる人はどれだけいるのだろう。同人誌のしかも出来の悪いぐらいのレベルじゃないだろうか。細かいわき道のエピソードにもセンスが感じられないし。

なんでもカードでやってしまうゲームシステムは前作から引き継がれている。今回はクエストマグナス(いわゆるアイテムカード)を沢山もてるようになった。前作は持てる数が少なくてストレス感じまくりだったので改善されたことになるのかと思うところだが、やっぱり少なく感じる。重要アイテムだとばかり思っていたマグナスが、実はあとでいくらでも取れることが分かって、ただ場所をとっていただけだったり。

戦闘は方式が前作から変わった。前はポーカーみたいに特定の法則にしたがって数字を出していけば大ダメージを与えたり、相反する属性の数字が相殺されたりするのを考慮したりするのがメインだった。今回はカードに書かれた数字の小さい順に出していくようになった。前よりヘンに頭は使わなくなったけど、やっていてそんなに面白くない。前作だとカードを特定の順番に出すと新しいカードが手に入ったが、今回はそのシステムがなくなってしまった。

相変わらずグラフィックスが素晴らしい。街はだいぶ使いまわされているけど、ダンジョンはほぼ新しくなった。3Dのポリゴンとか戦闘の特殊効果とかはとても完成度が高い。この分野の巨人スクウェアにひけを取らないレベルだと思う。

音楽は前作は曲が少なくて使いまわされていたが、今回は曲リストを見ると結構沢山ある。戦闘の音楽を中心にいい曲が揃ってる。通常の戦闘のテーマのフィドルなんかとても美しいし、ボス戦のちょっとプログレっぽいロックとか、ジャコモ戦のラップっぽいのが入ったロックとか良かった。あ、これは前作と同じ曲か。フィールド系も映画音楽的なイメージにあふれた曲ばかりだと思う。

クリアまでに100時間近く掛かった。正直プレイしていてあんまり面白いと思える時間はそんなになかったと思う。何かと言うとストレスが掛かったり、展開に退屈していたり、面倒くさかったりした。戦闘に掛かる時間が長いのも退屈な理由だろうな。戦闘はつまらなくはないのだけど、作業感がある。トランプのスピードを延々やってるような、ある種の快感も感じることは感じるのだけど、面白いのかどうか分からなくなってくる。

こうしてクリアしてから考えてみると、あえてプレイするほどのゲームではなかったな、という思いがある。時間の無駄だったと言いたくもなるのだけど、さすがに色々よく出来ている部分もあるのでそこまでは言わない。

次回作を作る前にまずシナリオライターをクビにするべき。これじゃグラフィックスや音楽を作っている人たちがかわいそう。世界観は独特で悪くないんだけど。とにかく新しい虚構を一から作り上げたという点では、西洋人からは評価されるかも。でもプロットと脚本がだいぶぶちこわしてる。皇帝を直接選挙で選ぶ世界設定もどうかと思うし。ゲームシステムももうちょっと練って欲しいかな。
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