香港人の集中力 |
香港在住の作者が、香港人の異様なまでの集中力を、公園での老人と孫、街頭での痴話喧嘩、家庭内のだんらん、で見た様子をメールマガジンで実況した話。かなり面白い。
孫が公園で何度言い聞かせても言うことを聞かず、しかたなくすべり台に立ちふさがって孫をにらみつける老人。いつまでもいつまでも無言でにらみつづける。
街頭で行き違いを起こしたカップル。女の方がキレて、あらぬ方向を向いたまま石のように動かなくなるらしい。男はそんな女をのぞきこみながら必死になだめるそうだ。道の真ん中で、通行の邪魔なのに、全然眼中にない。しまいには男もキレて、やはりあさっての方向を向いたまま無言で固まる。
作者はこれまで何度も、石のように固まったカップルを目撃したそうだが、それが「ビッグバン」により解決したのを見たのはたった一度だけだそうだ。男があきらめ、固まったままの女を置いてスタスタ去っていったらしい。そんな男を視界の隅にとらえて一瞬まゆを動かす女。しかし、と作者の名調子が続く。
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しかし!なによりも面子が大事な(ただ見栄っぱりなだけともいう)香港人、たとえ通行人であれ、自分の形勢不利を見られてはいかん。女として生まれてきたからには、男は自分に従属しちやほやしてくれるものであり、振られるなんてことはあってはいかんのである。眉こそピクッと動かし、去り行く彼氏を目の端でこっそり追いながら、それでもなお「私は怒ってるのよ!プンプン!」のポーズを崩さず、石でありつづける女。彼女がどこまでこのポーズをとり続けたかは定かではない。私だって見届けるほどヒマじゃないからね。あしからず。
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三つ目の例は、作者が嫁に入った大家族内での夕食風景。テレビが二台あり、両方ともつけるそうだ。一つは義父母が、もう一つは娘さんがチャンネルを決めるそうだが、全然違う番組をボリューム大きくして見ているそうだ。片方は恋愛ドラマで、もう片方が「はじめてのおつかい」の台湾版。義母は、義父と恋愛ドラマの展開で論争したかと思ったら、とつぜん「ぎゃははは!この子、かわいい〜!!転んで泣いちゃったよ〜!!」と、なんと両方のテレビを同時に見ていたそうだ。
最新号が昨日届いた。香港人のワールドカップ騒動と、義母が見立ててくる材質とセンスの悪い服との格闘。とにかく文章のテンポがよく、語り口がパワフルかつコミカルで面白い。面白い滞在記の大きな条件の一つは、現地人たちを実にリアルにクセの強さを描き出してあるかどうかだと思った。
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