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日本人の知らない日本語
日本語学校の先生をやっている原作者が、生徒である外国人たちの突飛な質問や疑問を受け、笑ったり考えさせられたりするエッセイマンガ。

普段当たり前のように使っている日本語の意外な面に気づかされる。「恐れ入りますが」と「さしつかえなければ」の違いとか。

「シカト」とは無視するという意味の日本語のスラング(俗語)だが、元々は任侠用語で、花札の鹿の絵がそっぽを向いていることから「鹿十(10の札だから)」から来ているらしい。ピカイチもそう。確かピンキリもそうだった覚えがある。

作者は日本の日本語学校で働いていて、生徒の外国人たちは日本でアルバイトなんかをして生活をしているのだけど、そのアルバイトの場なんかで結構日本語が乱れていて間違った日本語を覚えてきてしまうらしい。日本語学校の事務の女性が間違った敬語を話したり。とても敬語が上手な中国人留学生の趙さんが、作者相手にやたら丁寧な言葉遣いをするので、生きた日本語を学ぶべく居酒屋チェーンでアルバイトするようになってから、「かしこまりました」が「ハイ!よろこんでー!」になったとか。

アメリカや中国やフランスでは、○が否定的、×が肯定的な意味になるらしい。なんとプレイステーションのコントローラについているボタンの絵柄の○と×が日本とは逆なのだそうだ。

「鮪(マグロ)」という漢字は中国ではチョウザメを、「鮭(サケ)」はフグをあらわすらしい。昔の日本人が中国の文献を読んで適当に想像して間違えたのだそうだ。当時の日本人が勘違いした様をマンガで面白おかしく描写していて笑った。

絵が親しみやすい。頭身の少ないデフォルメされた登場人物たちはみんな個性的で魅力的で表情豊か。時代劇大好きなスウェーデン人女性とか結構かわいいし、ちょっとしたドラマもある中国人の趙さんや高倉健のファンのフランス人マダムとかいい味でてるなあと思った。

ですます調は江戸時代は芸者さんの言葉だったらしい。地方から上京してきた田舎武士たちが芸者遊びをしたときに芸者さんたちの使う言葉が標準語だと思って広まってしまったのだそうだ。「ざます」は高級娼婦おいらんの言葉で、彼女たちが上流階級に嫁いだことから上品な言葉遣い(?)として定着したとのこと。そのほか、いまの標準語は一昔前はぜんぜんそうじゃなかったということを紹介している。

三国志を知らない中国人が、三国志の登場人物を日本のゲーム三国無双のキャラだと思っていたり。

作者が入院したときに生徒たちがしきりに見舞いに来てくれた描写があって、なんだか羨ましくなった。日本語学校の先生という職業は、日本語だけで教える分には簡単そうに思えるが、ちゃんと指導要領みたいなのがあるらしく、また私たちは意外と日本語のことを知らなかったりするので、結構勉強が要りそうだ。生徒からの質問の例が本書にはいくつか紹介されているが、即答できないものの方が多かった。

読みやすいし面白いしためになるし話のタネにもなるので、とてもお得な本だと思う。空白やコマが大きい贅沢なつくりをしているのが若干気になったけど、デザインとしてはいい感じ。ほとんどの人に勧めてもハズさず楽しんでもらえそうな良書。
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