高校球児ザワさん 6巻まで |
甲子園の常連になっている強豪校で、一人女子で野球部にいる天然スポーツ女子・都澤理紗の、淡々とした中で時に周囲をドキッとさせる日常を描いた青年マンガ。
髪を切りにいったときにやたら待たされたので雑誌を読んでいたらこの作品が目にとまり、なんともいえない魅力を感じたので既刊分を全部読んでしまった。
野球マンガの金字塔「タッチ」を描いたあだち充も近年「クロスゲーム」という女の子が野球部にいて色々ある作品を描いているのだけど、あっちがファンタジー寄りなのに対してこっちはいくぶん現実的というか、まあそれでもだいぶありえないのだろうけれど、しっかり野球部のキツい練習をこなして男子部員に溶け込んでいて、女扱いされるギリギリ手前で踏みとどまっているところがなんともいえず引き込まれる。「クロスゲーム」に出てくる美人野球女子よりも私はこっちの都澤理紗のほうが好きだなあ。
バカでちょっとエッチな体育会系男子の一人が、携帯電話のバッテリーをま○この臭いがするとか言い出して、その携帯を仲間に手渡していってみんな臭いをかぐのだけど、その中にごく自然と彼女が混じり、フツーに臭いをかいでスルーしていくシーンがあって、特にこれ以上ツッコミのないままそこで話が終わるのがウケる。
彼女の周りの男子学生たちも面白い。みんな野球部らしく坊主頭で熱心に野球に取り組んでいる。彼らは彼女を自分たちの仲間だと認めていて当たり前のように平等に扱っているし、彼女もまた天然気味なせいか彼らの中に自然と溶け込んでいる。でも時折見せる彼女の女っぽい部分に、一部の男たちが内心反応してしまう。でも彼らはその想いを決して外に出さないので秩序がたもたれている。
彼女は自分が女であるという意識をあまり持っていない。でも自分のことをなぜか名前で「理紗は…」と言ったり、自分の苗字が「都沢」と書かれるとちょっと意地になって「都澤」と正式な旧字に書き直すという子供っぽい側面もあったりして、なんともいえないかわいさを持っている。でもちゃんとガタイがよくて172cmあってしっかり腹筋が割れていてそんな自分の筋肉を鏡に映して悦に入るみたいな。
はっきりしたストーリーはなく、毎回エピソードに明確な結末をつけていないことが多くて、なんというか詩のような感じがする。日常の一コマを切り取ってみせたらそれでいいやっていうスタイルなんだろうか。それがこの作品の魅力を引き立てていると思う。男子部員たちにまぎれこんだ一人の異分子によってかもし出される雰囲気こそがこの作品のすべてなのだから。ギャグもあってたまに笑わせてくれるのだけどそれほどじゃないし。
女くさくない女が好きで山もオチも弱くてかまわない人にならぜひ勧める。
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