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トロピコ 日本語版 [Best Selection of Games]
南海に浮かぶ小国のプレジデンテ(大統領)になって未開の島を発展させる箱庭系ゲーム。農園でさまざまな作物を作らせ、教育や治安などのインフラを整備し、工業や観光業を興してお金を儲け、裏金を海外の自分の口座に貯めて悠々と引退することを目指す。

シムシティを代表とする経営シミュレーションゲームと呼ばれるジャンルの中で、島国というごく狭いエリアを扱うことで一人一人の人間の動きから国全体をシミュレートすることを実現しており、限定的ながらとてもリアリティのあるゲームになっている。

たとえば農園をいくつか作る。農園ごとに賃金を設定できるのだけど、当然賃金の高いところに人々が集まりやすい。また、住宅地を造成すると、職場に近い場所から家が建っていく。狭い集合住宅は多くの住民を収容できる反面、治安が悪くなりやすい。

高度な産業を興すには人々の教育レベルが必要になる。そこで学校を作るのだが、先生のなり手がないので最初は外国から人を招くことになる。こうして学校が機能するようになると、徐々に人々の教育レベルが上がっていく。高卒が増えると工場が動くようになり、農産物を加工して輸出できるようになるほか、様々な文化施設が機能するようになる。さらに高度な施設を動かすには大卒が必要になるので、同じく海外から人を招いたり大学を作って育成する。

人々が豊かになっていくとその要求水準も高くなっていく。教会を作れだの、病院を作れだの、娯楽施設が欲しいだの言ってくる。施設を作ったり維持したりするにはお金が掛かる。農産物や工業品や観光収入をもっともっと稼がなければならなくなる。何年かに一回選挙があり、落選するとゲームオーバーになってしまう。

シムシティみたいなマクロ的な箱庭ゲームとの最大の違いは、リアルタイムストラテジーゲームのようにマップ上を一人一人の人間が実際に歩いている点だ。時間軸からすればトコトコ歩いているのはおかしいのだけど、そこはモデル化ということで分かりやすく単純化されている。クリックして選択すると沢山の情報を見ることができる。健康状態、娯楽の欲しさ、職場、賃金、家族構成、具体的に何をしたいかリストまである。はっきりいって一人一人の国民をかまう時間はないのだけど、時々様子を見て問題を見つけて解決してやれば島が発展していく。おおざっぱなシミュレーションと違って、ちゃんと問題点がなんらかの形で目に見えるのが面白い。

たとえば、せっかく作ったレストランが機能していないのはなぜか。まず、そこで働く人間がいるのかどうか。賃金が安すぎたり、教育レベルが足りなかったりしないか。客にとって料金は適正か。人々は自分の給料の三分の一以下のところでしか飲み食いしない。条件が満たされると職員や客は実際にマップ上を歩いて施設に入っていく。

このゲームのさらにユニークなところは、国を発展させるだとか人々を豊かにするだとかが必ずしも最終目的ではないところだ。面白いことに、あくまでプレイヤーの分身であるプレジデンテ(大統領)の財産を増やすことがスコアにつながるようになっている。だから、建築許可を与えるたびに大統領の裏口座に一定額を送金するように取り決めることができるなど、大統領を潤すための方法がいくつも存在する。

その究極的な形として、独裁国家を運営することもできてしまう。人々の賃金を低く抑え、不満分子を弾圧するために警察官や軍隊を増強する。建前として民主主義国家なので選挙があるが、選挙を裏で操作することもできる。

アメリカやソビエトをモデルとした巨大な国家からの支援を取り付けることもできる。彼らが満足するような政策を立てて実行すれば、援助金をもらえたり施設の能力などにボーナスが得られたりする。

とにかく分かりやすいところが素晴らしい。いきなり近代的な町を作る必要はなく、最初はただ農園を作ればいいだけ。人々の住居は特に造成しなくても勝手にバラックを建てて住み始める。もちろんいろんなことを効率化するには色々と考えて手を打たなければならないのだけど、そういう奥の深さに触れる前に手軽にゲームを始めることができるのがよかった。チュートリアルも充実していて、ベテラン声優が茶目っ気のある声でプレイヤーであるプレジデンテをよいしょしながら遊び方を教えてくれる。

一度遊び始めると結構ハマる。数時間ぐらい一気に遊んでしまう。でもマップの広さに制限があるほか、五十年?だかの時間制限があるので際限なく進めるようなこともなく、一回一回のプレイに集中できる。行き詰ったらまた新たな島でやりなおせばいい。次はもっとうまくやろう、とやる気が高まる。

欠点もいくつかある。人々があまりに小さすぎるので、クリックするのが難しい。もっとクリック可能範囲を広げるべきだと思う。画面下部の操作パネルがいくつかの点で分かりにくい。各種政策や建物の選択方法がごちゃごちゃしている。この点シムシティ4なんかだとツリー状のメニューで選択できて分かりやすかった。

注意してほしいのは、このゲームはシリーズ化されているのだけど、ここで紹介したのは最初に作られた作品であり、続編はまったく違うゲームになっているらしい。よく分からないけれど海賊の島を経営するゲームだったりするとのこと。それはそれで面白そうではあるのだけど、評価はあまりよくないみたいだ。遊ぶならまずこの初代からがいい。

ただ、動作環境が基本的にWindows 2000/XPとなっており、Vistaでの動作確認はしたとのことだが保証はしてくれないみたいだ。可能ならWindows XPマシンを用意するほうが良いと思う。私はXPで遊んだ。最近のゲームと比べると多少古さを感じさせはするものの、ゲームの面白さに見た目はあまり関係ないのだということを改めて感じさせてくれる。いま買うと安いのもいい。廉価パッケージの定価が3,800円で、家電量販店とかだともう少し安く買えるはずだ。
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