俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる 4巻まで |
恋愛結婚でラブラブ(死語)だった両親が離婚して失踪したために恋愛アンチとなった高校生のガリ勉(死語)青年・季堂鋭太だったが、クラスで隣の席になった校内一の美少女・夏川真涼に目をつけられ、告白ばかりされてうんざりしていた彼女から偽装カップルを持ちかけられる。中学生の頃の恥ずかしい妄想を書いたノートを奪われて仕方なくその要求を受け入れた鋭太だったが、彼には家ぐるみで仲良くしていた幼馴染の少女・春咲千和がいた。かくして偽装彼女と幼なじみの修羅場が幕を開けた。ライトノベル。
ここ最近のライトノベルの作品名がひどすぎるという話題が出たときに、長いこと真っ先に挙げられていたのがこの作品だったのだけど、最近はもっとひどい名前の作品がいくつも出ていて目立たなくなってしまった。本当に名前だけの作品なのか気になったので読んでみた。
結論からいうとギャグは面白かった。校内一の美少女・夏川真涼は完全に猫をかぶっており、主人公の鋭太に対しては平気でひどいことを言いまくる。それにうんざりして鋭太が真涼の言うことを拒否しようとすると、鋭太が中学生の頃に書いていた中二病の妄想全開のノートを真涼が取り出して適当なページを広げて読み上げる。その内容が痛すぎて痛すぎて何度も声に出して笑った。このノートがある限り、鋭太は真涼に逆らえないのだ。
そんなこんなですっかり鋭太の彼女の座に収まった真涼に対して、小さい頃から一緒だった幼馴染の春咲千和は面白くない。千和は体育会系の単細胞で食い意地の張ったキャラなのだけど、交通事故にあって以来後遺症を抱えてスポーツが出来ない体になり、ずっとやっていた剣道をあきらめざるをえなかった。鋭太はそんな彼女の体を直すために国立大学の医学部への進学を目指して猛勉強していたのに、なぜ急に真涼を彼女にしたのか。
でもここからが批判になっちゃうのだけど、ヒロインたちの心情の描写がいまいち納得できないんだよなあ。千和は鋭太を奪われたのになぜか鋭太に固執せずに自分がモテモテになることを目指すようになる。当てつけっちゃあ当てつけなんだろうけど、天然すぎて計算でやってるとは思えないしやけっぱちとはまた違う感じがする。真涼は真涼で恋愛アンチになった深い理由がありそうなのだけど結局4巻まで読んでもよくわからない。思わせぶりなだけのシーンが何度かあったけれど推測すらできなかった。家庭環境が複雑そうなんだけど全然はっきりしたことが描かれない。彼女の妹がたびたび出てきてあからさまな悪役として振舞うのだけどこちらも意味不明。
そのうえさらにヒロインが追加される。日本人形っぽい内気な少女・秋篠姫香は、なんと現役で中二病で日々妄想している。鋭太のことを前世での恋人だと言って「元カノ」として振舞うようになる。さらにさらに風紀委員の超ツンデレ少女・冬海愛衣までも鋭太をめぐる争いに参戦する。こいつは風紀委員だけあってやたら人に対して高飛車なのだけど、どこか頭のネジがたまに緩んで、「愛ちゃん大勝利〜」とか「おそとはしってくる!」などと退行する。
言われて気づいたけどヒロイン四人の苗字が春夏秋冬になってるんだなあ。鋭太の苗字は季道(きどう)だし。ヒロインたちが日々いがみあったり、なんだかんだで不思議と仲良くなったりして交流しているさまは読んでいて楽しい。
でもやっぱりこの作品はシリアスパートが弱いと思う。だから、もう一歩のところで登場人物に愛着が持てない。主人公の季道鋭太にしてもそうで、恋愛アンチから抜け出す気配がまったくないので、ヒロインたちの想いをほぼスルーしていて、基本的にいまのところ自分の弱みである妄想ノートを死守することを第一に動いている。だから各巻でストーリーが進んでも最後まで突き抜けることなく消化不良に思えてしまう。つづきものだから構造的に決着がつけられないのは仕方が無いのだけど、ちょっとずつ進まないとつまらない。4巻で真涼が観念しかけるのだけど、表面的な決着で済ませちゃったしなあ。読んでいて私が勝手に期待しすぎてしまった面もあると思う。シリアス「も」ある作品、というバランスなのかなあ。
脇役として主に二人、鋭太の親友である人格者でなよっとしたカオルと、鋭太を引き取って保護者となっていてエロゲーム会社で働いている叔母が出てくるのだけど、ぜんぜん魅力なし。カオルのほうはまさか実は女?みたいなほのめかしがあるようなないような。叔母のほうはなんでも見透かしているような超人系キャラで、そのくせだらしないところもあるというちょっとうんざりする感じ。手堅いんだろうけど。
イラストを「るろお」という人が描いているのだけど、この人の絵は普通の青春もの小説向けっぽくて、いまいちこのベタなライトノベルの本作には合っていないように思った。千和と姫香は割といい感じ、鋭太もまあそれなりだけど、ハーフで銀髪の性悪美少女・真涼と超ツンデレ愛衣のビジュアルが合わなさ過ぎる。
物足りないところもあったけれど、感動したいと思わなければ十分楽しめる面白い作品だと思う。
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