ファイアーエムブレム 覚醒 |
とあるファンタジー世界、王子が率いる自警団に記憶喪失の状態で拾われた主人公が、周りの国々の不穏な動きに一緒に対処して転戦するうちに仲良くなってかけがえのない仲間となり、絆の力で世界を救おうとする物語。日本にシミュレーション・ロールプレイングゲームというジャンルを根付かせたシリーズの最新作。
毎度毎度なにかしら文句言いながらも私はこのシリーズをプレイしつづけている。最後に遊んだのはゲームキューブで出た「〜蒼炎の軌跡」で、親切な作りとほどよい難易度の手堅い作りだったので、Wiiで出ている続編もいずれ遊ぶことになるだろうと思っていた。でもWiiはまだ買っていないのだった。
以前ゲームキューブを最終的に9800円で買ったので、Wiiも最低でも15,000円を切るようになったら買おうと思っていたのだけど、Nintendo 3DSはあっさり15,000円に値下げしたくせに、同じく落ち目のWiiはコントローラとかソフトをつけて二万円という値段をいつまでも維持しているので買う気になれなかった。今年2012年の年末にWii Uという新型機が出て完全上位互換らしいからそれまで待つことにした。一方でソフト不足でローンチ(立ち上げ)に失敗したNintendo 3DSが前述のとおり値下げされた上に、ソフトの充実を図ってきてその一環としてこのファイアー・エムブレムシリーズの最新作が出た。店頭デモやコマーシャルで見てとても面白そうだったので3DS本体ごと購入した。スーパーマリオ3Dランド同梱パック。
前置きが長くなってしまったので先に結論を言うと、これも手堅い作りの良作だと思う。
まず一番分かりやすく演出面から言うとこれは最高だと思う。トゥーンレンダリングの技法で作られたとても完成度の高いアニメ風の3DCGが3DSの裸眼立体視でとても鮮やかに再生される。画面は小さくて再生時間は短いものの出来は圧倒的で、まるで宝石の中に映った映像を手元でのぞき込んでいるかのような気分になった。映画館の大画面でキャメロンの「アバター」やピクサーの3DCG立体映画を見てきた上でも感動あり余った。
声優の配役も豪華で、アニメでよく見かける名前が多数あり。王女役の阿澄佳奈の声は一発で分かって吹いた。王子役の杉田智和はアニメだとふざけた役(銀魂の銀さんなど)の印象が濃かったので分からなかった。男装の女性役に例によって小林ゆうがキャスティングされているのはもはやお約束なんだろうか。台詞はフルボイスで全部読み上げるのではなく、特定の台詞に対してそのときの感情や勢いをあらわす短い台詞が数種類用意されていてその中から選ばれて再生されるだけのことが多い。フルボイスだと文字読んで声聞くのが途中でうっとうしくなってくるのでこれは良いと思う。
戦闘のアニメーションは、色んな兵種のユニットによる攻撃がどれも美しい。最大2対1(2対2?)と同時に出るキャラ数が少ないせいか3DSのあまり強力とは言いがたい性能を引き出しやすそう。通常攻撃だけでなくスキルが発動したときのモーションや演出が素晴らしい。ゲーム的にはただ眺めているだけなので飛ばしてもいいのだけど、結局切らずに全戦闘分を見てしまった(最後のほうちょっと飛ばしたけど)。
最初にゲームモードを設定できて、本シリーズのマゾいファンならば倒されたユニットが問答無用で死んでしまうクラシックモードを難易度ハードで遊ぶことが出来る上に、さらにコアなファンに向けてルナティックという難易度が用意されているが、手軽に楽しみたい人にはたとえユニットが倒されてもそのステージでのみいなくなるだけのカジュアルモードを難易度ノーマルで遊ぶことができる。本シリーズのリセット当たり前の伝統的な遊び方が大嫌いな私はもちろんカジュアルモードを選んだ。難易度もノーマルでw
今回は主人公を自分で作ることになる。本シリーズとしては珍しい趣向か。結構いろんなパターンが選べて楽しい。性別も男と女が選べて、あとで説明する結婚システムとあわせて自由度が高くて面白い。
プレイヤーの分身である主人公は最初記憶喪失で世界に放り出される。そこへ王子ご一行が通りすがって小さな戦闘から物語が始まる。最初の数ステージでは自警団の面々が徐々に加わっていき、新しいユニットの特徴やゲームシステムやこの世界のことを段階的に説明してくれるので、無理なくゲームに入っていける。
王国は王子の姉が女王として治めていて、王子は自警団を組んで王国の正規軍とは別に動いて王国の治安を守っている感じ。ことを荒立てないために隠密裏に動いて、周辺国の不穏な動きに対処する。このへんのストーリーは悪くない感じだった。
仮面をかぶった謎の人物が一行を助けたり立ちふさがったりする。こいつは一体何者なのか?ネタバレになるのでこれ以上書けないのだけど、最近流行りのタイムリープものになっている。悪くはないんだけどちょっと食傷気味。正直メインストーリーは中盤以降いまいちだと思う。西に広がる大陸を舞台にしたエピソードは必要だったんだろうか?その分をもっとメインストーリーの充実に当てた方が良かったんじゃないかと思う。女王の振る舞いとか世の中のこととか、もっとプレイヤーに色々考えさせるようなテーマを盛り込むことが出来たんじゃないかと思う。最終的に邪竜ギムレーというラスボスと戦うことになるのだけど、これもなんだかなあ。主人公の正体だとかそのへんをもっと丁寧にやってほしかったなあ。それっぽさとかうわべだけな感じ。
各ステージに関しては、難易度ノーマルでやったせいか特にいじわるいものはなかったと思う。敵の盗賊が宝箱を奪ってもマップを脱出するまでは取り戻すチャンスがあるし、そんなに無理に味方を突出させなくてもいい。
今回はワールドマップみたいなものがあってステージ間で自由に動けるようになっている。ランダムで敵が出てきて遭遇戦を行うことが出来るので、メインストーリーのステージの前に好きなだけ味方を鍛えることができるようになっている。ただし武器は磨耗するのでお金にも気をつけないといけない。難易度ノーマルだと敵が金塊を多めに落とすので金にほとんど困らなかった。自分でこの難易度を選んでおいて言うのもなんだけどヌルゲーだった。でもたとえ難易度ルナティックでも、序盤さえ乗り切ってしまえば異界という場所で好きなだけ戦闘して味方を鍛えることが出来るので結局ヌルゲーになってしまうらしい。そのへんはプレイヤーのさじ加減次第か。誰だって単調なプレイはしたくないだろうし。
ユニットのクラス(兵種)は相変わらずな感じ。騎兵系と剣士系と戦士系と魔術師系と盗賊系と弓兵系と重装系など。上位ジョブで統合されることも。亜人はジョブなし。村人なんてのもいる。今回は主人公クラスがいずれも剣持ちなので、構成的に剣士系が余り気味になる。回復専業のプリーストが上級職になると魔法が使えるようになる道のほかになんと斧を使える道も用意されていて、世界観がぶっこわれるとネットで不評だった。その意見には同意できるけれど、でも女の子のプリースト(プリーステス)であるマーク(女)が斧を振り回すのだけは見ていて面白い。
闇魔法を使えるダークマージが味方になる。こいつら結構面白い性格してる。男のダークマージは最初軽薄で気に入らなかったけれど、ミニイベントで真相が語られて見方が変わった。女のダークマージは言動がストレートすぎて、でも魅力的だった。こいつの子がさらに面白い。
味方ユニット同士を重ねるダブルという状態にすることが出来る。そうするとベースとなるユニットが大幅に強化される。これの使いどころが最初分からなくて戸惑った。最初というか最後まで悩んだ。土台になるユニットにしか経験値がいかないので、育成に便利なことは確か。でも上に乗っかるユニットは行動できないので遊ぶことになる。そのさじ加減を考えるのが面倒であまり面白くなかった。ちゃんと考えればそれなりのバランスがあって面白いのかもしれないけど、いまいち好きになれなかった。
このゲーム、特定のユニットが集中攻撃を受けることが多いので、ユニットが強化できると有利なのは確か。ただし防御力をおろそかにして攻撃力だけ強いと、襲い掛かってくる敵を次々と倒してしまい、まるで掃除機のように敵を吸い込んでいって敵にHPを削られ続けて倒されてしまう。
ユニット同士を重ねるダブルにしなくても、隣り合わせるだけでもデュアルといって協力して攻撃やら防御やらしてくれる。これも発動が運次第なので戦術に組み込みにくくて難しい。確率的なことを考えて攻略するのでゲーム性があるのだけど、期待値を上げていってもほぼ確実なレベルにはならないのでイライラする。失敗イコールやりなおしになるだけに。このゲーム、失敗したときの建て直しが出来ないんだよなあ。だからガチガチに陣形組んで、わざと馬鹿に設定された敵を誘い出すのが基本戦術になる。でもそれだけじゃ面白くないからと、宝箱を奪おうとする盗賊やらターン制限なんかがあって、それをなんとかするのを要求される。もっとなにか別の形に出来ないのかなあ。
ユニット同士をダブルにしたり隣り合わせて行動させたりすると、徐々にユニット同士が仲良くなっていく。一定以上仲良くなるごとに、支援度が上がってデュアルの発生率が上がるほか、ステージ間でミニイベントを見ることができる。このミニイベント、登場人物×登場人物で用意されていて、かなり膨大な量が用意されている。とてもじゃないけど一度や二度のプレイではすべて見るのは不可能。支援度はゼロから始まってC, B, Aと深まっていき、異性同士だとSになると結婚する。結婚すると外伝ステージが出てきてそこに二人の子供ユニットが登場し、仲間に出来るようになる。なぜ子供がすぐ出てくるのかというと時間移動しているから。子供同士も仲良くなることが出来る。でも孫は生まれない(例外あり)。結構感動的なミニイベントがあって、メインストーリーよりも面白い。ただ進めるのがとても面倒。
結婚して子キャラを作ることの、ゲームを進める上での利点といえば、親世代よりも子世代の方が初期の基本スペックが優れていて戦力強化になることだと思うのだけど、正直親世代だけでも十分クリアは可能。アイテムで好きに転職させて鍛えなおすことが出来るのでまったく問題なし。だから結婚システムは攻略という面からいえばおまけみたいなもの。今回ゲームシステム的に遊びの要素が多すぎるように感じた。武器を鍛えるだとか、有料コンテンツの舞台である異界とか、やたら豊富な種類があるアイテムとか。色んな要素で楽しめるのはいいのだけど、製作側からの「好きに遊べば?」的な放り投げ方が雑でうんざりする。もっと必然性があって欲しかった。
登場人物はみんないい感じなんだけど、突き抜けた魅力を持ったキャラがいなかった。みんなそつないというか、噛み締めるとじっくり味わえるのだけど、プレイヤーの想像力次第といった感じ。あ、個人的にはリズ(王女)とデジェルとマーク(女)が良かった。とにかく色んなキャラがいて設定的にもそれなりにおいしいので二次創作が結構作られそう。支援度が上がりにくいので各キャラのイベントがなかなか発生しないんだよなあ。狙って発生させようとしてもなかなか発生しないのはバランス調整ミスだと思う。
Nintendo 3DSのすれちがい通信を利用して、プレイヤーが編成した軍団を交換することが出来るのだけど、これも意味不明だった。好きに戦えるのだけど、クラシックモードだとユニットが倒されたら死ぬので真剣に戦えない。ほどよく強くてアイテムを保持した軍団が好まれるという謎事態に。強い軍団を作るには有料コンテンツを利用するのが便利なので、好きな人は購入して自分の軍団を育てているみたいなのだけど、それって楽しいんだろうか。結局ステータスを上限まで上げてスキルをたくさん覚えさせて満足したいだけなんじゃないだろうか。好きな人はそれだけで幸せなんだろうけれど。
いまふと思ったのだけど、タクティクス・オウガみたいに地下100階ぐらいまである隠しダンジョンを有料じゃなく本編の裏のコンテンツとして用意して、それを攻略すると真のエンディングとやらを見ることが出来て、そのために軍団を鍛える必要があって、それを効率的に行うには有料コンテンツが便利、でもちまちまと本編のコンテンツだけでも鍛えることができますよ、ただしこれはあくまでおまけなので全員やる必要ありませんよ、みたいにしたら良かったんじゃないだろうか。っていうかまだ追加コンテンツ(無料)が配信されているみたいだから、そういう流れにしていったりするんだろうか?でも邪竜ギムレーはもう使えないしなあ。しょうもないエンディング分岐のせいで。
とっつきやすい良作で、色々楽しめる要素が豊富で素晴らしいので広く勧められるのだけど、何かもっときっぱりしたディレクションがあったほうが良かったんじゃないかと思う。
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