ドイツの軍事再台頭 |
ドイツが戦勝国史観を完全に受け入れた上で再び欧州のリーダーとして台頭し、ついにはフランスと組んで軍事的なことまでするようになった流れを具体的に紹介し、アメリカが弱体化する国際情勢下で日本が大国を目指すならばたとえ濡れ衣でも戦勝国史観を受け入れるしかないと言っている。
作者は海外メディアを分析しているジャーナリストの田中宇。この人のサイトが有料化されてからちょっと遠ざかっていたのだけど、無料の記事で未読がたまってきたので最近適当に興味がわいたものだけつまみ読みし、時々また巡回している。
かつての同盟国で日本と同じ第二次世界大戦の敗戦国であるドイツの最近の歩みについての紹介が興味深かった。日本の場合、実は日本のことをなにかと悪しざまに言っているのは特定の東アジア諸国だけで、それ以外の東南アジア諸国やインドなどにとどまらず世界中の国々はおおむね日本を尊敬していたり一目置いていたりしているのだけど、なにかとその特定アジアの国々が足かせとなって国内世論も含めて日本の政治的な大国化という方向に行かない。いまだに韓国軍に弾を貸しただけであれだけわけのわからないことになる。それに比べると、ドイツがフランスと組んでアフリカに軍隊を派遣して軍事介入するなんてちょっとびっくりする。
で日本とドイツの違いは、ドイツがひたすら戦勝国の言い分を受け入れ続けてきたからじゃないか、それに引き換え日本はやっぱりどこか納得できなくて細かいところでポロッと本音を漏らすからじゃないかというようなことを主張している。
この人は単に冷静に現状を分析しているだけなのでこの結論は概ね合っていると思うのだけど、やはり日本とドイツとでは周辺の事情が異なると思う。ひらたく言うと、中国と韓国が国家として幼すぎてどうしようもない。
日本は中国にも韓国にも多額の賠償をしているし、長らく平身低頭してきたけれど、いまだに難癖をつけてきている。中国は同じ戦勝国であるアメリカが引いた線を越えて尖閣諸島に侵攻しようとしているし、韓国は戦後日本が軍隊を解体されている隙をついて竹島に侵攻して居座り続けている。両国ともに国家的に不安定なので反日を煽って求心力にしている。中国は日本の技術提供と資本受け入れをしてきたのに反日暴動で台無しにするし、韓国は日本とちゃんと国際条約を結んで賠償を受け入れたのに「従軍慰安婦」だ強制連行だと言ってひっくり返してくる。両国の主張を受け入れ続けるのは非常に困難だ。すでに日本は常識的にありえないほど技術援助してきて、そのせいで両国は工業国として日本を脅かしているのに、ここまでしてもいまだに収まっていないのはもはや気が狂っているとしか思えない。日本が衰退しないと友好な関係にならないんじゃないかと思う。
ちょっと日本に焦点を当てすぎたので元記事のほうに戻るけれど、アメリカが衰退していっているこれからについてどうするべきかという、作者の田中宇が好んで論じる方向に話を進めていっているのだけど、別にアメリカが衰退していっているのだったら戦勝国全体の影響力も落ちるということだから、あえてこれから戦勝国史観を受け入れる必要なんてないと思う。中国とはどうせ敵対するし、ロシアはシェール革命で資源の価値が相対的に下がっていっているので国際的な影響力が落ちるだろうし、ヨーロッパはそれほど日本に政治的な関心があるわけでもない。
ふと思ったのだけど、なぜイギリスやアメリカはドイツがフランスと仲良くなるのを阻止しなかったのだろうか。単に出来なかっただけなんだろうか。ドイツがヨーロッパ大陸で大きくなると、イギリスやアメリカは困らないんだろうか?それとも、ドイツを骨抜きにする仕組みでもあるんだろうか?
この人の考えていることはなかなか面白くて、日本は外務官僚なんかを中心に官僚が対米従属することで自らの地位を保っていると主張していて、それは一応納得できるのだけど、もうちょっと具体的な根拠というか仕組みを解き明かしてほしいなあと思う。自分の理解が追い付いていないせいもあると思うけれど、なかなかイメージがつきにくい。公務員が日本という国家に寄生しているのは税金から給料が支払われていることからわかりやすくて納得しやすいのだけど、官僚がアメリカへの従属を続けることでその地位を保っているという主張はふわっとしすぎていると思う。アメリカみたいに官僚が完全に産業の影響下にあると分かりやすいんだけど。理想的には官僚は国民の利益を代表して欲しいけれど、そんな仕組みはとても難しいと思う。
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