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うそつきパラドックス 2巻まで
前から気になっていた胸の大きい同僚の女性・栖佑(せいゆう)からパソコンの修理を頼まれて夜遅くまでたった二人で残業することになった青年・八日堂は、スキだらけの彼女に対してエロトークを仕掛けて口説こうとするが、自分には男がいると断られる。しかしその様子に脈ありと感じた八日堂は一計を案じた。自分が彼女を好きだというのはウソなのだから、彼女のほうもウソで自分を好きになってくれと言う。こうしてウソという建前で浮気が始まった。青年マンガ。

大阪に転勤していった後輩が勧めてくれたシリーズ第三弾。こんなファンタジーが好きだったとは…。今回はさすがに全部読めなかった。

この作品は社内恋愛ものだ。いまどきの会社でこんな感じに口説いたらセクハラで訴えられるリスクが高すぎる。同僚の女性社員にオナニーのときに好んで想像するシチュエーションを聞くなんて。まあ彼女のせいで残業しなくちゃいけないハメになっているのだし、そんなに露骨なエロじゃないので、イケメン無罪が成立する範囲内なのかもしれない。セクハラって相手が不快に感じるかどうかがすべてだし、男はこのぐらい切り込んでいかないと口説くことなんて出来ないんじゃないかとも思う。失敗してもしつこくなければ退けば大丈夫だろうし。なんか妙にリアルな口説き方だと思った。

でも最初に引いたのが彼女の大きな胸。担当編集者の趣味らしい。写真まで持ってきて注文をつけてきたとのこと。こればっかりは好みの問題なのだろうけれど、垂れるほどの巨乳で、自分にはちょっとこの胸がだらしなく見えた。張りのあるDカップとかせいぜいFぐらいまでの巨乳なら需要が大きいと思うのだけど、このヒロインの垂れるほど大きな胸はマニアックな域に達していると思う。でこの巨大な胸が、主人公の強引な攻めでしょっちゅうボロンと顔を出す。ひくわー。

主人公の八日堂は彼女のことを探るために、同じく同僚の大人っぽい女性・丸悦さんにも近づく。八日堂に他意はないのだけど、この丸悦さんが外見に似合わず男性経験の少ない人なので、自分が八日堂に口説かれているのではないかと勘違いしてしまう。なんだかいたたまれなくなってくる。八日堂は八日堂で自分のことで手いっぱいなのは一応分かるんだけど、なにこの鬼畜主人公って思ってしまう。こいつにまったく共感できないんだよなあ。

もうとっくに気付いているかもしれないけれど、この作品に出てくる登場人物の名前はたぶん大手スーパー系列の名前になっている。八日堂はイトーヨーカドーだし、彼女の名前である栖佑(せいゆう)はもちろん西友だし、丸悦さんはマルエツ。すごいテキトーだな。栖佑なんて変わってるけど印象的な名前だなあと思ったのに、八日堂は露骨すぎてあきれた。名前って結構重要だと思うんだけどなあ。春野友矢「ディーふらぐ!」なんて京王線の駅名をそのまんまつけてるし。

2巻まで読んでも面白い話がなかったし、このままダラダラと続いていくんだろうなと思ったら、もうこの先を読んでもしょうがないなと思って切り上げた。

おっぱいちゃんこと栖佑は、八日堂との関係はウソだからいいんだと思っていて、だから八日堂に対しても自分のことを好きだなんて言うなと言っているし、自分も八日堂のことを好きじゃないし、好きだと言ったとしてもそれはウソなのだと言っている。もちろんそれはウソで、そのへんがこの作品の題である「嘘つきのパラドックス」に掛かっている。「私はウソつきです」と言う人はウソつきなのか?というアレのことだ。でもこれって栖佑にとってそんなに重要なことなんだろうか?おまえらさんざんちちくりあってんだから、そんなつまらんこと気にしてもしょうがないだろ、と言いたくなる。ウソをテーマにしているはずなのに、ウソに全然重みがない。

そもそもこの話には無理があると思う。栖佑が八日堂のことを好きだと言わないのは分かるのだけど、八日堂が栖佑のことを好きだと言うのを栖佑が止める意味がわからない。こういうときの女って、自分の責任さえ回避してしまえばあとはどうでもいいと思うもんじゃないだろうか。つまり、自分は八日堂のことを好きなわけじゃないけれど、八日堂が自分のことを求めてくるから仕方なく応じていた、ということにすれば何も問題がなくなる。それなのに、互いに本気じゃないんだということにしたい意味が分からない。そもそも、やることやっているのになんでそんなことが気になるんだろう。単にズルいだけだし、ズルさが余計に際立つようにしか思えない。

もしこの話を題名どおりにまとめたいんだったら、栖佑をもっと高潔なキャラにしなければならなかったと思う。簡単にズルズル流されたり、すぐに肉体関係を持ったりするようでは話が成り立たない。それか、八日堂のほうに本命の彼女がいて、栖佑が迫ってくるという風に逆の話にするか。栖佑の本命の男はとりあえず2巻までは名前とか電話の声しか出てこないので、栖佑のウソにはそれほど重みが感じられないのだけど、主人公が本命の彼女をウソで裏切り続ける描写があればウソに大きな意味が出てくる。まあさっさと別れろやってことになるんだけど。そう考えると栖佑がなぜ本命の男と別れないのかもよく分からない。話をあまりよく考えずにその場のシチュエーションだけで盛り上げようとしか考えていなかったんじゃないかとさえ思える。

要は大してエロくないエロマンガを読まされている気になってくる。っていうか、いまのエロマンガのほうがむしろストーリーがあって面白かったりするぐらいなので、なんでこの作品が生まれたんだろうと首を傾げたくなる。それでも全10巻まで出ているのでそこそこ需要があったんだろうなあ。よくわからない。
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