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漂流教室
ある日突然小学校がどこかへ飛ばされ、学校にいた 864人の生徒や先生たちががんばって生き延びようとする話。怖くて残酷なホラーとして、現代文明批判や人間ドラマとして、非常に優れた作品。比較的最近放映されたテレビドラマ「ロング・ラブレター」の原作。作品としてはかなり古い。

筋を言わずに解説するのは難しい。ちょっとなら言ってもいいだろう。最初子供たちは、学校だけが助かって、まわりの街が壊れたのではないかと思うのだが、実際は小学校だけが飛ばされた。自分たちの親がどうなったのか気にしたり、親に会いたいと泣いたりする。

小学校が飛ばされた先は、あたり一面砂漠のようなところで、水も食料もない。学校には食料の備蓄が少ない。この状況をどうにかしようと、主人公の翔がリーダーのような形でみんなを引っ張っていく。しかし翔の前に欲望にとりつかれた様々な人々が立ちふさがる。

もうバタバタ人が死にまくる。とても残酷な話だ。餓死ならまだいいが、いろんな災厄がおとずれる。仲間同士なのに殺しあったりする。なかでも私があまりの不気味さに戦慄したのは、せっかく育てていた食用となる食物の上に奇妙なキノコが生えてくるところ。

ホラー的な要素だけでなく、親子の愛も描いている。息子の身を案じて狂ったように色々な試みをし、実際に息子を助けることになる母親。物語の最初に、親が子に、子が親にプレゼントを渡そうとするがすれ違いで渡せない、というフリがあって、そこがなんとも胸を打たれる。

オカルトの要素も入っている。私はオカルト系はあまり好きではないのだが、子を助けたいと願う母、母を求める子の想いを描くには不可欠だったのだろう。その他、ちょっとありえない現象を描いて物語に厚みを持たせている。

現代文明批判もベタだが強烈だ。ネタバレになるが、実は小学校は未来に飛ばされたのだが、現代の私たちが平気でモノを消費し捨てていく生活をしていたことが、未来を悲惨なものに変えてしまったのだ。未来に飛ばされるなんていうありえない出来事を描いてこそ、このように真実味があるのだろう。

絵にはクセがある。古い作品なので絵にも古さを感じる。しかし多分単純馴れの問題だろう。人物も描き分けられているし、独特のタッチで不気味な世界を描ききっている。

ストーリーの語り口は、そんなにうまいというほどではないと思う。語る内容が非常に優れているからこそ、私たちに迫ってくるのだと思う。細かいエピソード一つ一つに注目してみると、途中で放り出しているものもあって、ほじくればアラはポツポツ見つかる。

私は少し読み急いでしまったせいもあるが、読み終えてすぐの今は、いつか読み返したいと思うような強烈な読後感はなかった。読み終えたときには感動で涙が出たのだが、大作の幕引きにふさわしい展開に感動したのではなく、最後に突然語られるある人物の心情にグッときたからだ。

読んで損のない傑作だと思うが、熱心に人に勧めるほどの作品ではなかった。
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