東京喰種トーキョーグール 10巻まで |
人並み外れた力を持ち人を喰らう「喰種」(グール・食人鬼)が普通の人々に混じって生活している空想世界の東京を舞台に、人間の上位存在として君臨しようとする喰種たちと、「喰種」を絶滅させようとする特別捜査官、なんとか人間との共存の道を探ろうとする平和的な「喰種」たちとの争いを描いた作品。少年マンガ。
2014年にアニメ化されたのを見て、つまらない作品だなあと思って途中で見るのをやめたのだけど、こういう変わった設定を作り込んでいる作品ってやっぱり原作を見てみないと世界観とか色々伝わってこないんじゃないかと思って手を出してみた。でもやっぱりいまいちだった。
なんていうか昔流行った岩明均「寄生獣」に少し通じるところがあるなあと思って読んでいたのだけど、こっちの「東京喰種」は基本的に戦闘メインでストーリーがまるで面白くなかった。
事故がもとで半分「喰種」になってしまった主人公の少年が、なにかとつっけんどんな少女に尻を蹴られながらこっちの世界になじもうとする。しかし、「喰種」を根絶やしにしようとする捜査官や、他の好戦的な「喰種」と戦わざるをえない。そうしているうちに少年は特別な力に覚醒していく。ストーリーはこんな感じ?
この作品の魅力は、「喰種」という独特な存在がいる世界の描写と、それぞれ個性的な力を持った「喰種」同士の戦いを描くバトルもの要素、それに魅力的だけどツンツンな少女とのやりとりなんかだと思う。
人間を喰う生き物が出てくるのに、グロテスクな描写が割と控え目に感じた。若い女がむごたらしく殺される描写がいっぱいあったほうが売れたんじゃないだろうか。掲載誌もそういうのが得意なヤングジャンプなんだし。
岩明均「寄生獣」には哲学的な要素があったけれど、この「東京喰種」にはそういうのは一切ない。作者はバトルものを描きたかったんじゃないかと思う。「喰種」の能力にも色々あって、まるで冨樫義博「HUNTER×HUNTER」に出てくる「念能力」のようにいくつかの系統と強弱関係がある。
第二の主人公として、亜門という若くてイケメンの捜査官が出てくる。そして捜査官側にも亜門の他に個性豊かな登場人物が配されている。人並み外れた力を持つ「喰種」に対してどうやって捜査官が戦うのかというと、「喰種」の体から採取した器官を武器に改造してカバンに入れて持ち運んでいて、その器官が人体の延長として自由自在に動いてくれる。つまり捜査官も「喰種」と同じような力で戦う。また、捜査官には階級があって組織を構成している。ただ、捜査官同士の功の奪い合いや派閥などの組織特有のいやらしさみたいなものはあんまり描かれておらず、階級のかっこよさだけ使ってるように思えて浅く感じる。
一方の「喰種」のほうは、主人公が身を寄せる喫茶店「あんていく」の吉村老人の一派のほかに、喰種の収容所を襲うほどの力を持つ「アオギリの樹」や、他にも区ごとに別々の組織があったりして、それぞれ方針が違っていて衝突したりして面白いのだけど、その方針がいまいちよく分からないというか何に根差しているのかが微妙であまり魅力を感じない。それよりも特定の強い個体に惹かれて集うといった単純な理由で動いている喰種が多くて、大した理由がなく人間ドラマもないので、話が面白くなりようがないと思う。それどころか主人公の少年が覚醒したあと一体何がしたいのかすらろくに語られないで話が進んでいっている。
ツンツン少女のトーカちゃんはかわいいのだけど、主人公の少年が覚醒してからはほとんど出てこなくなる。主人公の少年は覚醒した自分がもう人間の中に溶け込んで暮らすのは無理だと悟るのだけど、彼女には人間とのおだやかな生活を送って欲しいと願うようになる。これだけ聞くとなんだかいい感じのストーリーが浮かんでくるようだけど、描写が乏しいので意味が分からなくなる。少年はなぜ彼女にそんなことを願うのか。それにせっかく出てきた彼女の兄貴の存在はどうなったんだろう。少年と彼女は一緒に訓練したりと行動をともにするけれど、恋愛感情が互いにあるように見えなかった。二人が面倒を見ているヒナミちゃんという少女についてもただいるだけ。
だらだらと読んできたけれど、これ以上読んでも話が面白くなりようがないと思って読むのをやめた。まあダラダラと結構読んじゃったんだけど。
まあだから、ちょっと変わった異能力バトルものが読みたい人以外には勧めない。
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