スタンダード 反社会学講座 |
社会学という学問のいい加減さを、つづいて社会学者たちが調査から都合のいい部分だけを抜き出して作ったウソの結論のタネ明かしをし、真実はまったく違うのだというのを講義形式で痛快に説明した文章。
特に第二章「キレやすいのは誰だ」では、最近10年のデータを示して「最近の青少年はよくキレる」と主張する学者たちを批判し、戦後数十年分のデータをグラフにし、あざやかに反証してみせる胸のすく話。実は 2002年現在で 60歳手前の年代が一番犯罪が多かったという。ここ10年の青少年の犯罪増加は、それと比べると小山のようなものなのだ。
そして私が一番おどろき怒りを抱いたのが第四章「パラサイトシングルが日本を救う」だった。現在住んでいる以外の家を持っているのは大体が高所得者層で、彼らが大家となって家を人に貸して儲けているという。とまあ私が説明してしまうと単純な話になってしまうが、著者はむやみに独立する若者が増えると住宅が貸し手市場になり家賃が高くなってしまう、などいくつかの興味深い結論を出している。
第6回「日本人は勤勉ではない」もインパクトが強かった。著者はただ引用しているだけだが、江戸時代の町人の二割三割がフリーターだっただとか、「働かざるもの食うべからず」は実は明治以降キリスト教の影響で入ってきた言葉だったなど、非常に興味深い話を著者がたくみにまとめて書いている。
著者はこれらの講義が一種のユーモアだとあくまで主張しており、トップページでは読者に対して笑うことを求めているかのようである。自分の出した結論を、無意味でくだらないもの、と警告している。私はこういう冗談が好きにはなれない。結論が社会学のように無責任であるというのは認めるが、煩雑な手続きをとってまじめに論じても、芯の部分は変わらないはずだ。
著者は何者なのだろうか。Q&A には「パオロ・マッツァリーノ」などと冗談っぽく言っているのでそのように紹介する。
私の個人的な体験で言えば、私が学生の頃の哲学の先生が何かのとき突然「社会学は学問として失敗している」と言ったのが興味深かった。その先生の説明もこのサイトの第一章と大体似ていた。社会学の先生は非常に面白い人だった。教養課程なので大したことは学ばなかったが、基本的なことばかりだったので、枝葉で行われているいい加減な社会学的研究を扱ってはいなかった。
なにしろ社会学者として日本で一番有名なのは多分宮台真司であり、この男は渋谷とかで若者やコギャルにまじって社会調査をするという非常にイメージの悪い学者だ。著者が第一章で述べていることは誇張ではない。
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