ボクガール 7巻まで |
女の子みたいにかわいい男の子の鈴白瑞樹は、クラスの女の子の藤原夢子のことが好きだったが、彼女は親友で男らしい一文字猛に好意を持っていた。男らしくなりたいと思う瑞樹だったが、気まぐれな神ロキによって女の子に変えられてしまう。少年マンガ。
2ちゃんねるのネット実況板のアニメ系スレッドで、この作品のことを「ヤンジャンの最終兵器(アニメ化における)」と言っていた人がいたので、気になって読んでみた。
いやいやなるほど、確かにこれはアニメ化に向いていそうな作品で、主人公の「ボクガール」こと鈴白瑞樹がとてもかわいかった。でもそれ以外の点では色々と微妙な作品だった。
この手の作品には珍しく(?)、本当に女の子の体に変えられてしまう。女の子みたいな男の子が、女の子になりたくて女装したりするのではなく、男らしくなりたいのに女の子にさせられてしまうという逆方向の話になっている。
読者は彼(彼女?)をどういう目で見ればいいんだろうか。いくら体が女の子になっても、元々は男の子だったのだから、ヒロインとして見ることに抵抗がある(アッー)。じゃあ主人公として感情移入できるかというとそっちも微妙で、せっかく女の子の体になったんだから好きにやったらいいのにという思いもあって、男らしくありたいみたいな気持ちにも共感しにくい。
そもそもこの女体化は、異世界から来たいたずら好きの神ロキによって行われた遊びで、そのロキがただ単に困惑する瑞樹をながめて楽しむだけの趣向だというのがなおさら興ざめだった。ロキ自身は美少女のなりをしていて、舞台となっている全寮制の高校に後輩として潜入してきて身近に瑞樹のことを観察して楽しんでいるのだけど、こいつには天敵がいないので好き放題やってる。なにかこいつにもライバルみたいなのがいたらもっと面白かったんじゃないかと思った。
脇役が色々と雑なのも残念だった。特に瑞樹の父親にはとてもガッカリした。いくら面白くしたくても、動かしちゃいけないキャラってのがあると思う。下着メーカーの御曹司の七太郎はキャラ設定的にはアリだと思ったのだけど、描かれ方が雑すぎて好きになれなかった。いい作品だったらこういうキャラにも少し愛着を持てるものだと思うのに。
瑞樹の親友の一文字猛は良かった。親友として瑞樹のなによりの理解者であり、変わらず接してくれるかけがえのない友だったのだけど、二人の関係は徐々に変わっていってしまう。猛は瑞樹が女の子になったことで時々かわいく思えてしまい、瑞樹も猛から愛されたいという気持ちが芽生えてきてしまう。そういった気持ちは抑えきれなくなり、猛は瑞樹の体に触れて言い訳の出来ないことをしてしまうし、瑞樹も猛のことを考えながら自らを慰めたり猛へのやきもちを口に出してしまったりする。このあたりの描写はとてもグッときた。
でも瑞樹はまだ気持ちが揺れていて、相変わらず藤原夢子のことが好きだし、男の子に戻りたいと思っている。
うーん。なんなんだろう。これ瑞樹が元々猛のことを好きで、だけど男の子だから好きになっちゃいけなくて、それを見た異界の神が瑞樹を女の子にしてくれたとかだったほうが、もっと面白くて素直に楽しめたような気がする。
藤原夢子が「瑞樹に想われている」「猛のことが好き」という二役を担っているのがこの作品の重要な点なのだけど、なんかこの点が一番微妙だと思う。まず瑞樹はなぜ彼女のことが好きなのかがよく分からない。猛にアプローチし続けるところを間近で見てきて好きになったというのが一番説得力あると思うのだけど、そういうわけでもなさそう。瑞樹の彼女への想いは、彼女みたいに猛に対して素直になりたいといういわば「なりたい自分」の姿であったならば分かりやすかったんじゃなかろうか。
夢子は猛のことが好きなのだけど、でも瑞樹が迷子になったときに自分のことよりも瑞樹の心配をしてしまうなど、甘いところがある。というかこの作品世界はやはり瑞樹を中心にできていて(ロキの一方的ないたずらといい)、そこがこの作品を浅くしているように思えてならない。瑞樹のことを心配する猛に対して自分の恋心をぶつけるような夢子だったら、読者少なくとも自分は夢子のことをもっと好きになれたし、そんな夢子と相対している瑞樹や猛のこともさらに好きになれた気がする。
瑞樹のことが好きな女の子も出てくる。でも、扱いづらいと思ったのか、作者はこいつをたまにしか出さない。
この手の作品にとっての必須条件「女の子のような男の子がかわいく描かれていること」については素晴らしいと思う。ちょっと絵が古いというか、少女マンガっぽいというか、少年マンガで言えば新谷かおるっぽい感じがするのだけど、見て好きになれるぐらいかわいい。口元のホクロがまたいい。猛もガッチリした体格の男らしい外見でかっこいい(格闘ゲームに出てきそう)。夢子も奔放な少女って感じでよかった(西尾維新の物語シリーズに出てくる戦場ヶ原ひたぎにちょっと似てる)。絵はうまいと思う。でもギャグのときのデフォルメされた絵が雑でげんなりした。
なんだか文句が多くなったのだけど、やはりまだ続きが読みたいと思うので、自分はこの作品を楽しんだんだと思う。でも、この作品を楽しめるのは多分一部のマニアだけだと思うので人には勧めづらい。少女っぽい何かが困惑する姿が楽しめる人にとっては大好物なのだろうけど。
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