クレオパトラ D.C. |
世界最大の大財閥コーンズグループの黒人少女会長クレオパトラと四人の個性的な重役が様々な事態を乗り越えていくお話。政治経済のからむ冒険モノ人情モノ陰謀モノ。
作者の新谷かおるは、戦闘機乗りの男たちを扱った名作「エリア88」を代表作に持つ人。絵のタッチが独特でうまく、特徴から言えば少女マンガに近いとも言えるが、この人独自のもので位置づけが難しい。
まず主人公がかわいい。16歳の黒人少女だが、遺伝的に稀ながらも金髪に碧眼。このかわいい主人公が大財閥の会長、という設定は非常にありえないのだが、この大胆な設定を読者に受け入れさせる魅力を持っている。彼女を取り巻く四人の重役が、若くてエリート揃いだが常識的な感覚を持っており、四人が四人とも主人公クレオを愛している。
この物語の魅力は、財閥の力を使って事件をバリバリ解決してしまうこと。なんでも金で解決してしまう、というとつまらないように思うかもしれないが、金というよりも財閥の組織力や人脈を使って解決することが多く、物語に深みを持たせている。時々大きな渦に巻き込まれてピンチに陥るが、主人公と四人の機転で乗り越えていく。
この作品、背景は知らないが、書かれた当時にしては読者サービスいわゆるエッチな描写が多いと思う。衣類が破けるとか刺激的な格好をするとかだけでなく、レイプ、レズ、拷問なんかのシーンもあり、この点もこれはこれで魅力的だ。
私が一番好きなストーリーは、10歳の天才少女がコーンズをのっとろうとする話だ。今回再読してもやっぱり泣けた。この作品で一番優れたストーリーだと思う。三回ぐらい泣ける。
だが全8巻中、後半は明らかにだれていると思う。何巻にわたって続く中身の薄い長編が続く。最後の最後で盛り上げて終わってくれるところは良いが、長編は基本的にアクションシーンが多い。作者の画力は良いのだが、物語を楽しみたい私には物足りない。
ちょっと面白いのは、この作品の舞台がアメリカで、主人公もアメリカの視点でモノを見ていること。日本に遊びに行くところもでてくる。また、当時問題になっていた牛肉オレンジ問題にも作者の分析を重役に語らせており興味深い。日本車の優れた点を紹介しながらも、あくまで主人公の愛車はシボレーのコルベットで、他に出てくるのもベンツやポルシェなんかだ。
あと笑ったのは、「貿易センタービル」が作品中で爆破されてしまうこと。さすがに名前を変えなければ…。
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