ReLife |
就職してたった三か月で会社を辞めた海崎新太の元に、「リライフ研究所」の人間だと名乗る謎のチャラ男・夜明了が現れた。高校生としてただ一年間過ごせば就職口を斡旋するという。体を若くみせる薬や強力な監視網を持った謎の組織のもとで、現在進行形で悩み続ける若者たちの中に放り込まれて自身を顧みていく物語。少年マンガ。
2017年にアニメ化されたのを見てとても面白かったので、原作に手を出してみた。面白かったけれどアニメ以上のものはそんなに得られなかったと思う。
主人公が大人の目線で、現役の高校生たちを生暖かい目で見ているのがちょっと面白い。あの頃は自分もこうだったなあって感じ。ちょっと人物造形が作り物めいているところはあるけれど、割とリアルに高校生のトガり具合が描かれていて、なんだか懐かしい感じがした。
主人公の海崎新太は、真面目すぎて社会になじめなかった若者で、会社を辞めたのも汚い組織にうんざりしたからだった。そんな彼が、人間関係に悩む高校生たちを見て放っておけなくなり、彼らを自然に導いていく。そんな彼自身も、謎の組織「リライフ研究所」の職員から見守られ、行動を観察されている。彼らの社会実験は何を目的としているのか?というのはあまり描かれないのだけど。
普通の青春ものと比べると、大人が自然に混じっているところが新しい。でも見た目は完全に高校生で、心の中だけ大人なので、ちょっと成熟した高校生でも十分この役は務まりそうな気もする。大人の読者の共感を得るためだろうか。主人公は社会人としては失敗(?)したけれど、学生としては失敗していない(?)ので、主人公の物語と高校生たちの物語とがそんなにリンクしていない。そのあたりがどうにも中途半端に思えてしまう。
自分がこの作品を読んで面白かったのは、主人公が不器用な女の子を好きになって、その女の子も主人公に対して生まれてはじめての恋愛感情らしきものを抱き始めるところとか、あとはこの独特な設定とは関係なくただ青春群像劇の中の友情とか、主人公は高校生たちより長く生きているのでちょっと心に余裕があるけれど時々彼らに振り回されるところ。一方で、設定の妙を生かした何かが占めるウェイトはそれほど多くなかった。
自分はこの作品を結構楽しめたのでこういうことを言うのもなんだけど、いくつかの点でいまいちなところがあると思う。まず、たった三か月だけど働いていた会社での女性の先輩社員の話。色んな会社があるんだろうけれど、ここまでひどい会社ってあるんだろうか。ちょっと腑に落ちなかったので、一つの挫折の話としてだけ読んだ。バレー部のエピソードでも、設定と展開が細い綱渡りを見ているようだった。登場人物たちの真剣な感情の発露があったことで楽しめたのだけど、ずっと話の内容には引っかかっていた。
狩生玲奈というトガりまくった女の子が実はこの作品の結構真ん中にいるのだけど、こいつは成績では日代千鶴とクラス1を争い、バレー部では超高校生級の玉来ほのかと張り合うという、チート級にハイスペックなのに二人に負けて満たされない救われない魂の持ち主。主人公にも突っかかるけれどやさしい一面も持っていてかわいい。
あ、いまなんとなくわかった。この作品は、負の感情がとても魅力的に描かれていると思う。ほの暗い気持ちも描かれるのだけど、ジメジメと陰湿にはならず、それを含めて人間がとても尊いものとして描かれているように思う。誰だってなにかしらこういう気持ちを抱えて生きてきただろうし、感傷であり慰めであると思う。
設定を生かした大きな感動が期待できれば最高だったのだけど、いまのところそういう風に持っていきようがないのが残念に思う。それとも何か見せてくれるのだろうか。弱気になっていた主人公に自己肯定させる方向で、かつての失敗を振り切るようなクライマックスが待っているのだろうか。あまり期待せずに待ってみることにする。
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