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ヘルシング HELLSING 6巻まで
空想現代のイギリスの農村で謎の連続殺人事件が発生し、「吸血鬼」のしわざであることをかぎつけた特務機関「HELLSING」がそれを制圧する。彼らの使命は人外を操るバチカンの裏組織などの敵対勢力からイギリスを守ることだった。少年マンガ。

この作品に出てくる戦争狂の「少佐」の演説が、サブカル界隈ではおそらく「機動戦士ガンダム」シリーズのギレン・ザビやハマーン・カーンの演説に次いで有名で、ときどきネット上の書き込みや他の作品で引用されるので、それらをちゃんと楽しむために原典であるこの作品を読んでおくことにした。いまいちだった。

この作品を一言で言うなら「中二」(なんだかよくわからないけれどかっこいいものを詰め合わせた物?)だと思う。バチカンの「イスカリオテ機関」とかナチスの残党なんかが出てきて、それをヴァン・ヘルシングの子孫であるヘルシング家の当主インテグラに率いられた「吸血鬼」たちがイギリスを守るためにバッタバッタとやっつけていく。

最初のエピソードで婦警セラスが敵の吸血鬼に襲われて殺されそうになるのだけど、味方の吸血鬼アーカードが彼女の意志を訊いた上で彼女を吸血鬼化する。こうして不本意にも吸血鬼となったお調子者の彼女は、ぶっきらぼうなアーカードのもとで新米吸血鬼として振り回され戦いに随行するようになる。

自分がなぜこの作品を楽しめなかったのかというと、強力な戦闘能力を持った個人を擁する組織と組織がその存亡を掛けて全力で戦うという以外に魅力的な要素に乏しかったからだと思う。婦警セラスがちょっとかわいかったけど。

まず気になったのが、あれだけ強い吸血鬼アーカードが、なぜヘルシング家の当主インテグラの言うことに素直に従っているのか。なにか強力な恩なり強制力なりがあるかというとそういうことはなさそうし、インテグラ自身に魅力があるようにも見えない。彼女(インテグラは女)には国を守るという意志があるけれども、そこまで崇高に思っている風でもなく、彼女が当主を継ぐときもなりゆきでそうなったに過ぎない。どちらかというとやる気がないようにさえ見えて、諦念みたいなものがにじみでているところに人間味すら感じる(特にジト目がかわいい)。

執事ウォルターがヘルシング家に忠誠を誓いながら当主のために戦うところとか、戦いの口上を交わし合うところとか、やっぱりかっこいいんだけど、本当にそれだけだった。登場人物たちの背景を想像で補わないと楽しめないと思う。

作中でキャラがおどけるシーンが幾度もあるんだけど、そのセンスに自分はついていけなかった。同じ作者の「ドリフターズ」のアニメで信長がおどけるシーンを見てなんだこりゃと思ったのを思い出した。

6巻まで読んで「少佐」の演説も分かったしこれ以上読んでもしょうがないなと思ったので読むのをやめた。「少佐」がちんちくりんメガネなのが意外だったけれどこれはすごくハマっていたと思う。

もっと若い頃に読んでいれば楽しめたのかもしれない。

絵は素晴らしいと思う。男も女もモブに至るまでみんな渋くてかっこいい。モブで思い出したけど自分はペンウッド卿が一番良かった(名前あるしモブじゃないか脇役だな)。敵だとマスケット銃で戦う「魔弾の射手」リップヴァーン・ウィンクル中尉(女)がよかった。空母の上で戦う戦闘シーンがとても印象に残っている。

中二バトルものを楽しみたい人ならば読んでおくべき作品なのかもしれないけれど、自分はまあ読まなかった方が良かったと思う。最初に書いたとおり「少佐」の演説目的だったのでしょうがないんだけど。
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