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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 3巻まで
神々がその力を自ら制限して下界へと降り立ち人々と暮らしている世界の迷宮都市で、零細女神ヘスティアの加護のもと唯一の眷属として駆け出しの冒険者をやっている少年ベルは、祖父の影響により冒険に男女の出会いを求めていたが、あこがれの女性の前で屈辱的な経験をしてしまう。ファンタジー小説。

2015年にアニメ化されたのを見てまあまあ面白かったのでいずれ原作も読んでみようと思っているうちに4年が過ぎ、今年になってアニメの第2期が始まったのでその前に第1期の内容を復習しておこうと思って3巻まで読んでみた。割と微妙だった。

この作品の何が魅力的かって、ロリ巨乳で僕っ娘で独占欲の強い女神様が、主人公のベル少年と廃墟の教会の地下で貧しい二人暮らしをしていることだろうか。あまりに貧乏すぎて神様がバイトしているのがウケる。主人公のベル君はまだ弱くて無鉄砲だけどやさしくてひたむきでかわいいので女神ヘスティアは夢中なのだった。

舞台となっている世界はいわゆるファンタジー世界なのだけどゲームっぽい要素があって、神々の加護を得た人間の背中には各能力の高低の数字が浮かび上がるようになっている。能力値のほかにスキル(技能)が発現することがあって、あるときベル君に謎のスキルが発現したことにより自分以外の女の存在が分かり女神ヘスティアは嫉妬に狂うのだった。かわいい。彼女はあざとい僕っ娘なのだけど時折「〜だぜ」って言うところがハマった。

迷宮都市オラリオの中心部にはバベルという名の高層マンションのような塔が立ち、その地下には広大なダンジョン(地下迷宮)が広がっている。その中を冒険者は探検していく。ダンジョンは下へ行くほどモンスターが強力になっていく。本来もっと下層にいるはずのミノタウロス(牛人間)がある日ベル君の前に現れ、駆けつけた美少女剣士アイズに助けてもらうが、あまりの恐怖と羞恥にベル君はその場から逃げ出してしまう。

他にサブヒロインとして、ギルド(冒険者組合)の職員でベル君に色々と教えてくれたり心配してくれたりするハーフエルフのお姉さんエイナ、飲食店の呼び込みで声を掛けてきていつも弁当を作ってくれるようになる積極的な娘シル、冒険者の荷物運びで生計を立てている小柄でおませな少女リリなんかがいる。

魅力的な世界に魅力的なキャラがいるのに思っていたほど楽しめなかった理由は多分大きく二つあって、まずベル少年の憧れる美少女剣士アイズが十代のボンヤリした少女なのに剣の腕が都市最強クラスという異常な振り幅。こいつが主人公の外伝まで出ていて本編に迫る巻数が刊行されている上にアニメ化までされているので結構読者人気があると思うのだけど、自分にとっては彼女だけでなくその仲間たちも臭すぎてアニメを見ていられなかった。こういうすごく強いキャラが余裕ぶって敵をバッタバッタとなぎ倒したり簡単に難しいことを成し遂げたり、時にちょっとしたピンチを迎えてもおどけながら切り抜けたりするような作品が自分は大嫌いなのだけど、こういうのが好きな人にはたまらないのかも。

ベル少年は美少女剣士アイズに特訓してもらう展開になるのだけど、ボンヤリした少女が彼女なりにベル少年のためになりそうな特訓方法を考えるところはよかったけれど、ダンジョンの中では長いこと潜っていると休息も必要になるからいつでもすぐに寝る訓練だと言ってベル少年の前で急に眠ってしまうシーンがある。なんだこりゃ。アイズのこういうところがたまらなく好きな人が多いからこの作品は人気なんだろうなと思いつつも、すごく甘ったれた世界だなあと思って自分はうんざりした。

次にストーリーなのだけど、ベル少年が美の女神フレイヤの目にとまり、彼女の気まぐれに翻弄される形で1巻と3巻の決着がつくことに少々うんざりした。たぶん冒険ものだとボス戦で盛り上がって終わるのが常道なのだろうけど、それを何か大きな存在による気まぐれでやられてしまうとしらけてしまう。気まぐれですごいことをする悪役なんていう味付けで安易に強大な敵だということを演出されるとうんざりする。

まあベル少年にとってみれば強い敵に打ち勝つことが重要なのであって、特に3巻で再び対決することになるミノタウロスとの勝負はとても重要なイベントだと思うのだけど、その勝利への道筋や決意の内容や描写がどうしても薄く感じた。題にあるようにベル少年にとっての冒険とは異性にかっこいいところを見せてモテモテになることなのだけど(?)、やはりそれが命を懸ける理由にはなりえないというのがこの作品の構造的な欠陥だと思う。それとも、好きな人の前でかっこ悪いところは見せられない、というのは命を懸ける理由になるのだろうか?その前のリリを逃がすために命を張るというのはよくわかるのだけど、ええかっこするために命を張るようなキャラには感情移入できない。

一方で2巻のリリの物語はかわいそうで泣けてしまった。彼女の考えていることや行動に迷いがあって揺れるところがギュッと迫ってきてとてもよかった。どうでもいいことだけど荷物持ちは「サポーター」よりも「ポーター」でいいと思う。一線から落ちこぼれた冒険者が戦闘をあきらめて他の冒険者の荷物持ちをするようになるという設定が世の縮図みたいでよかった。

結局のところこの世界の神というのはどういう存在なのだろう。特に強力な力を持っているわけでもなく、ただファミリアを形成して人間と共にいるだけ。尊敬はされているけれど崇められているかというとそうとは限らない。一種の貴族みたいなものなんだろうか。貴族というと偉そうにしているだけのただの強欲な人間に見えるので、それぞれ個性を持った神ということにしたんだろうか。高貴なキャラってそれだけで物語を彩ってくれる存在だから。そう考えると、よく考えられているようでいて、すごく安易な設定なんじゃないかとも思えてくる。神同士が喧嘩!?みたいな。でもやっぱりヘスティアが女神だっていう設定は彼女の魅力を引き立てていると思う。

ベルくんはかわいい。

というわけで自分はあまりこの作品を勧めないけれど、最初よわっちくても一生懸命がんばる主人公のベルくんを見守りたい人なら読んでみるといいと思う。
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