ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド |
和洋折衷した独特のファンタジー世界ハイラルで、かつて繁栄を誇っていた王国は百年前に滅び、残った人々は世界の隅々でひっそりと暮らしていた。ほこらの中で目覚めた青年リンクは一切の記憶を失っており、謎の声に従って世界を救う旅に出る。京都にあるゲームメーカー任天堂による世界的人気を誇るアクションロールプレイングゲームシリーズの最新作。
発売当初から大絶賛だったのでハード(ゲーム機)のNintendo Switchが潤沢に出回りだした2018年頃にようやく近所のビックカメラに入荷していたのを一緒に買って遊んでみた(Wii U版もあるけどさすがにそっちはハードごと買う気にはなれず)。ところが期待に反して思ったほどハマれず、ゾーラの里までたどり着いたあとで続ける気がなくなっていったん中断していたのだけど、最近ようやく再開し一気にクリアした。とても面白かった。
今回の最大の特徴は欧米のゲームでは当たり前となったオープンワールドつまり舞台となっている世界を自由に歩き回れるシステムを取り入れたこと。いままでは柵があったら越えられず、海や川があったら泳げないので渡れず(そういえばイカダはあったな)、家の中には入れても屋根の上には上がれず、険しい崖や山は侵入不可能だったのだけど、今回はすべてがんばれば踏破できるようになっている。がんばりゲージというのを消費する必要があって限界はあるのだけど、ゲージを増やすことも出来るので行ける範囲が広がっていく。内外を自由に動き回れる様は「アンチャーテッド」みたいだった。
実を言うと自分はこのシリーズが大好きなのにWiiで出た「トワイライトプリンセス」と「スカイウォードソード」をやらずに来たのでシステム面とかであまり深く踏み込み過ぎるとヘンなことを言いそうだから今回はあまり総論的なことは言わずに個人的に感銘を受けたり気になったりした部分だけを書いていく。
正直最初結構戸惑った。
導入部はチュートリアル的にゲームのシステムをざっと学べるよう「始まりの大地」と呼ばれる高地に移動が限定されている。そこから出ようとすると高い距離を落下して死んでしまうのでおとなしく最初は手近な冒険をすることになる。それでも従来のゲームの感覚からすれば結構広い範囲を動き回れる。神殿の廃墟を中心に、丘陵や森や野原や川や池や冬山があって4つの祠(ほこら・ミニダンジョンみたいなもん)と1つの塔がそびえている。
塔はよじのぼることができて(最初の一本は埋まってるけど)、一番上まで行くと古代の機械があり、シーカーストーンという古代のタブレットをそこに差し込むと周辺の地図が手に入るようになっている。世界中にこのような塔が十数個あり、塔に登らないと周囲の状況が分かりにくいので、新しいエリアに足を進めるとまず塔を目指すことになる。塔は先に述べたがんばりゲージを消費してえっちらおっちら登っていく。一度には登り切れないので途中にある足場で休みながら登る。最初操作が慣れなくて塔の途中から何度か落ちて大ダメージを受けたり時には死んだりした(笑)。
ゼルダの伝説シリーズというと冒険を助ける小道具が色々あるのだけど、今回は序盤も序盤で全部の小道具がそろってしまう。爆弾(二種類)、マグネキャッチ、ピタロック、アイスメーカー、ウツシエ。
まず爆弾に違和感があって、古代の謎の技術によりうっすら光る爆弾を好きなだけ作ることが出来る。ただし一度に出現させられるのは一種類ずつだけ。コロコロと転がっていく丸いのと転がらない四角いのの二種類がある。爆発はするけど攻撃力は微々たるもので、敵の近くで爆発させても大してダメージを与えることが出来ないほか、古代の超すごい技術を使っているせいか驚くほど軽く、風に乗ってコロコロと転がっていってしまう。でもヒビの入った壁なんかはきっちり壊すことができる。
マグネキャッチは金属製のものを自在に操ることが出来る。どういうわけか操れる石もあるがおそらく鉄を多く含んでいるからだろう。今回、フィールドのグラフィックスがとても自然なので思わぬものも操ることができて驚かされる。金属板を持ち上げたら下から何か出てきたり、板を使って足場を作ったりできる。
いままでのシリーズだと便利な道具ほどゲームを進めないと手に入らないので、道具を手に入れたらこれまで行ったことのあるエリアをもう一度歩き回って新たに行ける場所を探したのだけど、今回は序盤にほぼすべての道具が手に入ってしまうので戻る必要がなくていいものの、ものを持ち上げられるという感覚に慣れるまでは頭が追い付かなかった。クリアしたいまはようやく持ち上げられるものはどれだという感覚がなじんできたけれど、それでも敵の野営地にある金属の箱なんかを攻撃に利用するという発想まではなかなか思いつかず、ついつい正攻法で行ってしまう。年をとって頭が固くなってしまったのもあるんだろうなと思う。
ピタロックはさらに難解で、主にダンジョンの中の仕掛けを一定時間止めるための道具なのだけど、こいつで物体を静止させている間に衝撃を加えておくと、時間が動き出したときに一気にその衝撃が加わってものすごい速度で物体を飛ばすことが出来る。この使い方が必要なときになかなか思い至らなくて何度もつまずいた。
アイスメーカーは水場に氷の足場を作ることが出来る道具で、これさえあれば水場をずっと歩いていける。ただし同時に三つまでしか維持できないので古いものから消えていく。という使い道だけに留まらないのがこのゲームのすごいところで、水場に氷の柱を作れるので水場にいる敵をひっくり返すことが出来たり、ものを持ち上げたりすることが出来たりする。この発想が普段は出来なくてよくスルーしてしまい、攻略サイトを読むようになってからはなるほどなと合点した。
まあ仮に詰まっても大したことはなくて、ほこら(ミニダンジョン)はどうしても解けなければ放置してもまったく問題はないし、四つあるちょっと大きめのダンジョンでさえ別にクリアしなくてもゲームをクリアすることはできる。
ウツシエは要はカメラで、撮ったものを人に見せたり(精度の高い絵だと思われる)、動植物の図鑑を作ったり、その中から一つ選んでセンサーに連携してフィールド上で探す補助をしてくれたりできる。
あとパラセールといって携帯用のグライダーがあって高いところから滑空することが出来る。これを入手することで「始まりの大地」から降りることが出来るようになりチュートリアル終了となる。結構気持ちいい。
そこからの展開がなんというか圧倒された。地図のない世界に放り出される。とにかく東に行けと言われるので東に行くのだけど、世界が広すぎて先が見えない。道なりに進んでいくとなにやら廃墟があって敵が所々で野営をしている。ここで見つかって袋叩きにあって一度死ぬ(笑)。敵に見つからないよう避けていかないといけない。がんばれば倒せないこともないんだけど。
今回敵に囲まれるとやけにあっさりと死んでしまうのでちょっと理不尽な感じさえしたのだけど、これにはちゃんと理由のあることが随分あとになって分かった。体格の大きい敵がでかい得物(武器)を振りかぶってしばらく静止し、一気に振り下ろしてくる攻撃をしてくる。こいつ一体だけを相手にしていると、こんな鈍重な攻撃なんて簡単に避けられるのだけど、集団で袋叩きにあっているときは小さい敵から潰していこうと集中しているので視界の外からこの威力の高い攻撃を食らってしまう。そうするとハート(生命力)を一気に削られて死んでしまう。要は複数の敵とは同時に戦ってはいけないという当たり前の現実がある。
いきなり攻略サイトを見るのは興が削がれるので最初はまったく見ずにプレイしていたのだけど、東へ東へと行ってもなかなか目的地にはたどり着かないので非常に心細い旅となった。ようやく人の姿があったと思ったら馬宿という休憩所みたいな場所だった。村への道しるべが示され、村に近付いていっていることが分かって安心する。
もちろん村へ向かわなくてもいい。まあ最初の村ぐらいは早く行っておいた方が話の都合上いいと思う。自分は全体マップの一番南側にあるエリアを後回しにしたため、あとになって行って見たら敵が弱くて拍子抜けした。そういえばゼルダの伝説シリーズって南のほうはそんなに敵が強くないんだった。ヘンなところでシリーズの決まり事(?)が踏襲されていて懐かしくなった。他に行く場所がなくなってきたら南側から回っておいた方がいいと思う。あと「デスマウンテン」は名前や風景によらず終盤の場所ではないので足を踏み入れたらそのまま攻略して問題ない。
ダンジョンは祠(ほこら)という名前で各地に点在していて、そんなに広くなくて敵がいないことが多く、ギミックを利用した謎解きがメインとなっている。ごくたまにものすごい広い祠もあるけれど、クリアするのにそれほど時間は掛からない。でも謎が難しくて解けずにいったん出て放置したものもあった。あと中で敵の中ボスと戦うだけの祠もあるし、祠を見つけるまでが試練という扱いで入ったらすぐ祝福となってクリアになる祠も少なくない。ギミックは先に述べた小道具なんかを使って操作する。大きいダンジョンをクリアしなくちゃいけないとなるとだんだん面倒くさくなってくるのでこの趣向は現代的でとてもいいと思う(ラストダンジョンのハイラル城はかなり大きいけど)。
物体のモーメント(角運動量)まで計算されているのが素晴らしい。たとえば金属の箱を操作しているときに箱の角っこが壁か何かにぶつかると、マグネキャッチの支点に対してぶつかった個所からモーメントが働いて箱が回転しようとする。と同時にそれを抑えようとする力もマグネキャッチから働くため、振り子のように揺れてやがて収まる。大きいものを急激に動かそうとすると支点と重心がずれているせいかゆらゆらと揺れる。金属板を持ち上げて地面から斜めの状態で操作を解くと、落下して地面からの反発力によってリアルに板がバウンドする。
武器や盾が使っているとすぐ壊れるけど、その分どんどん色んな場所で手に入るようになっている。ネットの声を拾うとこの点がどちらかというと不評のようだけど、自分はどちらかというと良かったと思う。武器を手に入れられる場所というのが大体決まっていて、一度手に入れてもしばらくたったら復活するので、武器がこころもとなくなったら拾いに行く。敵の拠点を潰すと武器や矢弾がいくつも手に入るので、攻略しやすくていい武器が手に入る場所を自分なりに覚えておいて定期的に調達する楽しみがある。そこまでしなくても最悪、敵の持っているこん棒みたいな粗悪な武器もある程度実用にはなる。
敵から受けたダメージを回復させるには料理を食べるのが一番の方法となっていて、材料の肉とか魚とかキノコなんかを自分で調達する。野原を鹿なんかの動物が駆け回っているので矢で射って倒す。慣れると近接武器でも倒せるようになる。材料が手に入ったら、色んな場所にあるかまどに材料を放り込んで調理する。レシピがあって、多少外れてもそれなりのものが出来上がるけれど、あまりにヘンな組み合わせで材料を入れるとモザイクのかかったゲテモノ料理が完成することもある。
おっと気づいたらだいぶ色々と説明してしまった。書くのにもちょっと飽きてきたし、このゲームの本質的なところは十分説明できたと思うので、そろそろ不満についても書きたい。
このゲームの一番ダメなところは、操作性が悪いことだと思う。たとえば左スティックが移動になっているのだけど、左スティックを押し込むとしゃがむモードになる。しゃがんで歩くと周りに気づかれにくくなるので、敵を避けたり気づかれずに接近したりするのに必要なのだけど、戦闘に必死になっているうちについ左スティックを押し込んでしまうことが当初頻発した。しゃがむと移動速度が遅くなるので敵の攻撃を避けることが出来ずにボコボコにされてしまう。慌てていると何が起きているのか分からなくなる。ついでに言うと右スティックを押し込むと望遠鏡モードになり、近くの敵が一切見えなくなる。戦闘中にこうなると最悪だった。そのせいで自分は戦闘を楽しむことが出来ず、ゾーラの里で敵の中ボスと戦う前のところでやる気が萎えてしまいプレイを長いこと中断してしまった。
プロコン(Proコントローラー)はあったほうが絶対にいい。純正は一個八千円ぐらいするので自分は最初買わなかったのだけど、あってみると大違いだった。プロコンでなくともせめてJoy-Conグリップを使って普通のコントローラースタイルで遊ぶほうがいい。慣れの問題なのかもしれないけれど自分は携帯モードだと全然ダメだった。SwitchのJoy-Conはチープで耐久性にも問題があって海外では訴訟問題にもなっているけれど、そもそも普通に扱いにくい。
方向転換に時間が掛かる。左スティックを倒し続けていないと向きが変わらない。走ったりしているときならともかく、静止状態からの方向転換すらもっさりしている。これがリアルってことなのかもしれないけれど、せめて攻撃方向ぐらいは左スティックを倒している方向にすぐ向いて欲しい。ガーディアンやヒノックスの足なんていうそんなに素早くない目標すらスカるのでイライラする。
盾が使いづらい。武器を振っている最中だと盾を構えるボタンを押しても構えてくれないので、あらかじめ敵の攻撃が来るぞというタイミングでただ盾を構えて待ち受けないといけない。敵のモーションが唐突なのでアクション性があんまりない。せめて盾ボタンを押したら攻撃がキャンセルされるか、敵の予備動作を分かりやすくしてほしかった。盾を構えているときに敵の攻撃に合わせてタイミングよくXボタンを押して左スティックを倒すとラッシュモードになってスローモーションになっている間に連続攻撃を決められる。しかしこんな面倒なことをしなくても、大抵の場合普通に連続して武器を振っていれば敵が攻撃に入る間もなく倒せる。戦闘は基本これで十分なので、先手を取れば単調になりがち。
ボスの弱点や有効な攻撃方法が分かりにくい。さすがにダラダラと戦っているとアドバイスをくれるのだけど、そんなの分かるか!というものがいくつかあった。一番理不尽に思ったのは、敵に爆弾を吸い込ませなくちゃいけないというもの。爆弾が上昇気流によって宙を飛ぶことは道中で分かるのだけど、まさか敵に向かって投げたらそのまま吸い込んでくれるとは思わなかった。マグネキャッチやピタロックで敵の武器を利用するとか、アイスメーカーで水面スレスレの攻撃を迎撃するといった知恵を絞る必要がある。任天堂はテストプレイなんかを入念にやっているみたいだからこのぐらいの説明やバランスでいいというデータが十分とれた上で判断したのかもしれないけれど、おっさんには厳しかった。ラスボスの真っ赤になった状態を打破する方法なんて結局ノーヒントだったけど、あれで詰まる人はいないんだろうか(自分は最終的に攻略サイトを見てなんとかした)。
ちょっとストーリーが暗いのは好みによると思う。自分は暗い話のほうが好きなので、百年前のゼルダ姫や英傑たちの失敗の苦味は心に迫ってきて良かったのだけど、メジャー作にしてはちょっと暗すぎるんじゃないかと心配になった。ウツシエの記憶のクエストはやらなくてもクリアには何の影響もないし、全部集めたときの「真のエンディング」とやらもちょっとした付け足し程度なので無視しても大したことはないのだけど、ただでさえ淡泊なストーリーを楽しみたいのならぜひやったほうがいい。
一番良かったところは、果てしなく広がっているかに見えるフィールドを自由に冒険できるところだけど、それを支えているリアルなグラフィックスに触れずにはいられない。しとしとと雨が降り、地面が濡れたり岩がてかったりする。激しい雷雨のときは雷鳴が響いて画面を揺らす。猛吹雪で視界が遮られたり、溶岩の熱で火の粉が舞い上がったり、風で草が揺れたり灯りが夜を美しく照らしたりする。鳥や小動物や昆虫まで生息している。海鳥の集団の動きまで本物っぽい。今作のサブタイトルがブレスオブザワイルド(野生の息吹)というのはまさにこれ以上ないほどふさわしい命名だと思う。Switchのそんなに高くないグラフィックス性能でよくここまでやったと思う。キャラクターデザインもディズニーと張り合えるというか萌え要素も感じさせる魅力的な絵で自分は勝っていると思う。ゾーラ族の英傑ミファーがとてもかわいいし、逆にゲルド族の英傑ウルボザは男勝りでかっこいい。エピソードがとってつけた感あるのは少し残念だったけど。マッチョなゴロン族の英傑とキザ男なリト族の英傑が特に。
敵のAIが面白い。見張り役の敵がいて、そいつに見つかるとホラ貝(?)を吹かれ、敵全員がこっちに気づいて一斉に襲ってくる。でも見張り役にはすぐに見つかるわけではなくて、ちょっと距離があるところで歩いていると「?マーク」が敵の頭上について、それが下の方から赤く色づいていく。そこで身を隠すと逆に赤い色が引いていって警戒が解ける。あと敵が寝静まっているところを襲うと、まず武器を捜してうろつきだす。
音楽はピアノ中心で本シリーズのちょっとすっとぼけた愉快な感じの世界観とよく合っていた。最近の大作ゲームは安易にフルオーケストラを使って逆にボケて安っぽくなっているように思う。この作品では要所要所で管楽器を使うのでいいアクセントになっていた。ガーディアンにレーザーの照準をつけられたときのピアノがすっごい緊迫感あって良かった。エレクトリックピアノ(?)も効果音が心地よかった。カッサーノのアコーディオンも。
海外のメディアも大絶賛ばかりで、一部のゲーム通からは過剰評価との声もある。どっちの気持ちも分かる気がする。3DのアクションゲームといえばDOOMが元祖なのかもしれないけれど、アナログジョイスティックを使って自由にキャラクターを動かせる3Dアクションロールプレイングゲームとしては本シリーズの「時のオカリナ」が元祖(たぶん)だし、欧米人の好みを押さえた世界観も彼らを虜にしたのだと思う。
色々と気になるところはあるけれど、完成度高くまとまったゲーム体験は素晴らしく、最高峰のゲームの一つと言えると思う。濃厚なストーリーを楽しみたいという人には勧められないけれど、本当の意味での冒険を楽しめるのでぜひやってみてほしい。
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