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異世界に飛ばされたおっさんは何処へ行く? 8巻まで
35歳独身のおっさんがファンタジー風の異世界に飛ばされ、身についた強力な力を使って行く先々で衝動的に人助けをするが、現地の住民にとってはありがたい一方でその気まぐれさに恐れられてしまうので、自らを省みて行動を改めていく。異世界ファンタジー小説が原作のマンガ。

題と表紙が印象的で、年くったおっさんが大人の余裕で無双していく話を想像して読んでみたら、このおっさんが外見に似合わず子供じみていることになっていて戸惑った。一応おもしろかったけれど色々と引っかかった。

わるいやつらから人々を守って人助けしたつもりが、それがまわりまわって良くない方向へと転がっていく展開が続き、そんなおっさんを諭してくる存在が出てくる。いろんな面で違和感しかなかった。35歳ってことは社会に出てそれなりにたつのでさすがに分別はあるはず。それにこんなに強力な力を持った何をするか分からない存在に対して子供扱いしたような姿勢でマウントを取ってくる人間なんているだろうか。おっさんはそんな彼らに諭されて従うようになる。

おっさんじゃなくて血気盛んな若者だったらよかったのにと思う。それだったらいくら強い力を持っていても見た目が明らかに幼いので諭したくなるのも分かる。人は年を取れば取るほど自分が確立されていくので、おっさんともなれば何か言われたぐらいで反省したりはしなくなるものだ。なぜ主人公をおっさんにしたんだろうか。題にも書いているぐらいおっさんを強調しているので非常に戸惑う。おっさんが青春してる。

このおっさん、異世界に飛ばされる前は運送業でバイク便をやっていた設定になっている。部下もいて上司への不満も言っているから中間管理職っぽい。だからなおさらこの性格づけが分からない。

一方でこのおっさん、ヒロインにはまったくなびかない。35歳独身だったら若くてきれいな女性になびかないはずはないのだけど(?)、まったくその気を見せない。言い換えると、ヘンなとこだけ大人。

すごく強力な悪役が出てきて激闘を繰り広げることになるのだけど、この悪役のメンタリティもどこか幼い。主人公のことを見守る弱い人間たちだけが成熟している。

異世界に飛ばされる前に、寂れた神社に毎年お供えをしていたことから、その神社に祀られていた狼の神がその化身を遣わしてくれるのだけど、その設定もなんだか中途半端でもやもやした。こういうのって主人公の性格づけになると思うんだけど、単に信心深いだけというか、人の好さを特徴づけているだけで特に意味はないのだった。

と散々けなしたけれど、不思議と読み進めてしまう。なぜだろう。正直そこまで面白く読んだわけではないんだけど、先が気になったのは確かだった。なんだかんだでおっさんの成長を追いたくなったのかもしれない。

私掠船の船長を名乗るヒロインのデルフィがちょっとかわいかった。最初ちょっと現実が見えていない感じなんだけど、色々とあって自分のできることをやっていくようになる降り幅が良かった。

というわけで、成熟したおっさんの話を期待すると大いに裏切られるけれど、どこか子供っぽいかわいげのある(?)おっさんの話が楽しめそうなら一応読んでみるのもいいと思う。
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