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micro iDSD Diablo
イギリスのオーディオメーカーifi audioが出したポータブルヘッドホンアンプの現行最上位機種。同社のこのラインの製品では初めてフルバランス回路を搭載し、大型のヘッドホンを楽々駆動できるほど超高出力である一方で、低音増強機能やイヤホンのための出力減退機能などが省かれた。


以前買ったヘッドホンHifiman HE6seが出力2W以上のアンプを推奨している中で、本製品は最大5Wもの超高出力が可能だということで以前から気になっていた。しかしポータブルなのに十万以上で売り出された上に、さらにコロナでの値上げで15万近くするようになった。いままで買ったことのないメーカーだしもう手を出すのは難しいかなと思った中で、あまりに売れなかったのかヨドバシドットコムで急に十万以下で投げ売られ始めたので、バーゲンハンターとしての血が騒いで買ってみることにした。よかった。

こいつが発売されるちょっと前にmicro iDSD Signatureという製品が出ている。Diabloはただ単純にSignatureの完全上位機種というわけではなくて、冒頭で説明したようにフルバランス回路や出力では明確に上回る一方で、機能では一長一短である上に、音の傾向まで異なっているとのこと。

ポータブルオーディオ界隈で比較的有名なブロガーSandal氏なんかは、Signatureを買ったあとですぐにDiabloが発売されて戸惑ったものの、両者を聞き比べて結局Signatureから買い替える必要なしと判断している。実際両者は併売されている。

まずは一番の目的であるHifiman HE6seで聴いてみた。すごく開放感のある音でびっくりした。間違ってヘッドホンだけじゃなくてスピーカーからも音を出してしまったんじゃないかと勘違いするぐらい広がりのある音がした。何度かヘッドホンを外して確認してしまったほどだった(笑)。その一方で、すっきり系と言われているRME Fireface UCのほうが音が濃く感じられた。micro iDSDシリーズはバーブラウン製のDACにしっかりしたアナログ回路を搭載しているとのことだったので暖かい音を想像していたのだけどちょっと印象が違った。

次にbeyerdynamic T1(初代)で聴いてみた。シングルエンドなのでバランス回路の利点が消えるのだけど、やはりこれも開放感のある音ですごくよかった。音もなんというかすごくしっくりきた。HE6seのほうがトータルで言えばいい音が出ていると思うけれど、音のまとまりで言えばこのT1のほうが良いように思った。T1はRME Fireface UCだと本当にすっきりしたそっけない音を出すので、HE6seとは逆の結果となった。ダイナミック型のほうが高出力の恩恵が大きいのかもしれない。

同じTeslaドライバでもオンイヤー型でバランス駆動可能なbeyerdynamic Aventho Wiredで聴いてみたら、いままでデジタルオーディオプレイヤーで聴いてきたのと比べて非常にエネルギッシュな音が出た。繊細さではAstell & Kern SE100に、音の濃さではCOWON Plenue Sに負けていると思うけれど、Diabloだと排気量が違う感じがして全体的には勝っているように思った。

ただし音量が取りづらくてちょっと困った。Diabloはゲインが三段階あり、ここまではNormalだったが一番下のEcoにする必要があった。それでもまだ音がちょっと大きくて、音を小さくしすぎるとギャングエラーつまり左右の音のバランスが崩れてしまうので調整に気を使った。なぜこんなにゲインが高いのかというと、おそらくダイナミックレンジの広いDSDで交響曲なんかを聴く人を想定しているからじゃないかと思う。ゲインの最大はTurboなのだけど多分自分は今後一切使わないと思う。

もうこの時点で手持ちのイヤホンは絶望的だった。かろうじて能率の低いfinal MAKE3ならいけるかもと思ったけれど怖くて試していない。仮にイケても元々あまりスペックの高くない機種なので真価を発揮したところで知れているように思う。

ここで兄弟機種であるSignatureならIEMatchという出力減衰機能を使えば聴けたと思うけれど、Diabloにはこの機能がない。解決策として、別売りのアッテネーターIEMatch4.4を買うというのもあるのだけど、単体で一万千円もする。思い切って買ってしまおうかと思ったけれど、ネットでの評判によると音がちょっと変わるみたいなので、Diabloはヘッドホン専用機として使っていくことにした。

というかシングルエンドのT1がこれだけいい音で鳴るのだから、DiabloじゃなくてSignatureでいいと思う。Signatureが確かセールで七万を切っていた時があったのでそのときに思い切って買ってしまえばよかったと思った。特に自分みたいな初めてifi audioの製品を買う人間にとっては、より定番のSignatureか、その前の製品であるBL (Black Label)の中古あたりとかで試してみたほうがよかったのかも。

しかしこうなると逆にT1 2ndあたりでバランス駆動してみたくなる。T1 3rdなら投げ売りされているので心惹かれるけれど、中低音が厚くなって全然違うモデルになってしまったらしいので怖くて手を出せない。うーん。

開放感のある音なので開放型の特にダイナミック型のヘッドホンと相性がいいんじゃないかと思う。密閉型のAventhoでも十分開放感のある音が出たけれど、やはりちょっと詰まった感じがした。

hifiman HE6seを買ったときは、今後高出力なヘッドホンアンプを買うときが楽しみだと書いたのだけど、今回このDiabloを買ったことで今後いい開放型ヘッドホンを買うときが楽しみになった(完全に沼)。次に買うとしたらAKG K812やGradoあたりになるんだろうか。いま思えばsennheiser hd800sが15万以下で投げ売りされていたときに買っておけば良かったかも。視聴した限りでは自分のよく聴くJPOPやEDMやメタルとは相性が悪そうだったのでスルーしたのだけど。

入力はUSBと同軸または光によるデジタル入力を備えている。あまり聴き比べていないけれど、音質には差がないように思った。chord mojoだとUSBよりも明らかに光入力の方が音が良かったこともあったので一応気にしてみた。

4.4mmライン出力も備えている。使っていない。動作確認ぐらいはしておいたほうがいいとは思うのだけど、面倒なので試していない。ちなみにXLR 3pin × 2に出せるライン出力用ケーブルもついてくる。こいつのヘッドホン出力を使わずにDACからのアナログ出力を外に出したい人がどの程度いるのか疑問なんだけど。初期ロットにはiPurifierというUSBのノイズを除去するアクセサリーがついてきたみたいなのだけど、残念ならが自分が買った中には入っていなかった。

バッテリー式なので持ち運んで聴くことができる。USB Type-Cの短いOTGケーブルを買ってみた。スマートフォンをつなぐと線がわずらわしいので、shanling m0をつないでLDACで受信してみたら十分音が良かった。自分が買ったshanling m0の色はたまたまDiabloと同じ赤なのでよく似合った。無理やり通勤時に持ち歩いてみたところ、胸ポケットにはさすがに無理だったけれど、上着の内ポケットになら十分入れることができた。ただしOTGケーブルが本体下部にきてしまい、ケーブルから基板へと力が加わって危なそうだったので一回しか試していない。ケースとか工夫すればイケるかも。同社のbluetoothレシーバーgryphonで妥協したくない人は試してみるといいと思う。


というわけで、ヘッドホンでスピーカーのように開放的に音楽を聴きたい人、なかでもバランス接続したい人ならこのDiabloを候補に入れてもいいと思う。
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