俺んちに来た女騎士と田舎暮らしすることになった件 コミカライズ版 13巻まで |
脱サラして地元で一人農業をしている32歳独身男の佐伯莞爾のもとに女騎士クリスが現れる。元の世界に帰れなくなった彼女に莞爾は農業を手伝わせながら日本の農村での生活になじませていく。小説投稿サイトに書かれた小説が原作のコミカライズ版。
だいぶ前に気になって読んで以来しばらく放置していたのだけど、いつのまにか結構続刊が出ていたので読んでみたら、二人の関係に区切りがついたり新たな展開が始まっていたりして楽しめた。
異世界ものではあるのだけど、異世界の人間が現代の日本にやってくるという逆転移ものなのが特徴。ヒロインであるクリスはそれなりの剣の腕と簡単な魔法を扱える程度なので無双することはない。
この作品、結構リアルだと思う。佐伯莞爾とクリスが初めて会ったときの反応と、とりあえず家に上げて世話をする流れ、双方の認識の違いによるすれ違い。彼女を定住させるために莞爾は役所勤めの旧友に相談し、それが大ごとになっていく展開は少なくとも自分にはとても説得力あるものに感じた。
といっても女騎士という存在そのものが限りなくフィクションらしい。念のためちょろっとネットで調べてみたら、女性が鎧を着て戦ったりすることはあっても騎士としてではないらしい。逆に現代のイギリスでは女性がナイト位を叙勲することも少なくなく、こっちは厳密な意味でのナイトではあるのだけど、当然のことながら甲冑を着て任務につくことはない。
この作品のどのあたりが魅力かというと、クリスがまだ18歳の女の子である点だろうか。騎士であることのプライドは持っているのだけど、敵との戦いで落ちのびて自分だけ生き残ってしまったという負い目を感じつつも、まだ幼さが残っていて自分を世話してくれている莞爾に甘えていいか葛藤している感じ?
一方の莞爾も、クリスに対していとおしく思う気持ちはあるものの自分は32歳のおっさんなので、彼女の心細く思う気持ちに付け込んで一線を越えるのはよくないと思っている。それをこれだけ好き合っているのだからと周囲の人々が後押しする。
莞爾は八尾さんという仲買人の勧めで利幅の大きい外国料理店用の野菜を細々と作って生計を立てている。近所には農業一筋の親戚の老夫婦が住んでいる。戦後の土地問題のいざこざで仲の悪かった家とも莞爾の世代では仲良くしている。彼らには子供や孫もいて時々遊びに来る。
この作品は基本的に農業もの(?)なので、獣害とか天候不良なんかに対処する話だとか、ちょっとしたアクシデントにより責任を感じたクリスが回復魔法を作物に掛けて異常が起きたり、クリスに農業を体験させるためにプランターで二十日大根を育てさせたりとか、不安定な農業を安定して行えるようみんなで農業法人を設立する話なんかがある。
こうして振り返ってみると地味だなこの作品w 現代日本の農村に急に金髪美女が現れたことによって生じた人間関係の波紋を楽しむ感じだろうか。
一方、異世界側では失踪したクリスの行方を追って、彼女の兄である英雄バルトロメウスと、クリスの親友で大魔術師ルイーゼの二人が様々な試みを行う描写がある。なかなか実を結ばなかったのだけど、11巻から彼らも莞爾たちのもとに現れ、騒動を巻き起こす。クリスを連れて帰ろうとするが、クリスの心はいかに?
異世界人の力を解明し利用しようと、日本政府やアメリカが様々なことをさせようとする。魔法の原理を解き明かそうとしたり、軍事利用の可能性を調べたり、翻訳魔法の効果を実験するために、クリスたちに協力を求めてくる。
ちょっと批判もすると、人間ドラマとか恋愛ドラマ的な描写が割と陳腐に感じられる点が少なくなかった。型にハマりすぎているというか古臭いというか。ギャグの描写もそうかも。
32歳のおっさんが18歳の女の子と恋仲になるという筋書がそもそも受け付けない人も多そう。自分も多少引っかかりを覚える。そこまで気にはしないけど。
女騎士という存在にロマンを感じられる人、そしてその女騎士が現代日本にやってくるというシチュエーションを楽しめそうな人なら読んでみるといいと思う。
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