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冒険家になろう! ~スキルボードでダンジョン攻略~ コミカライズ版 5巻まで
全国各地にダンジョンが出現した架空の現代日本で、北海道のド田舎に住み冒険者をやるようになった青年・空星晴輝は、自らの存在感のなさに悩みながらコツコツとブログを書いて有名になりたいと願っていたある日、自分の家の倉庫にダンジョンが出現したと思ったらスキルボードを開ける能力に目覚めるのだった。異世界ファンタジー小説が原作のコミカライズ版。

また異世界お気楽ファンタジーを読みたいと思い、手近にあったこの作品を読んでみた。設定がわかりにくい上にキャラにも愛着を持てなかった。

現代にダンジョンが出現するタイプの作品を最近地味によく見かける。なんでだろう。やっぱりファンタジー世界の住人は現代人とは感覚が違うので、現代にしたほうが感情移入しやすいからだろうか。この作品の特徴として、主人公の青年がブログを書いていて、ネットで有名になるだとか噂が広まるだとかの要素があり、そういうコミュニケーションって現代人の私たちからすると日常的で身近に感じられるんだと思う。

題にもあるようにこの作品の一番の特徴はスキルボードなるものを主人公の青年だけが開けること。他の作品で時々出てくる冒険者カードとかステータス画面との違いは、スキルが羅列されていてポイントを振ることで強くなれることだろうか。

すごいスキルを身に着けられるのかと思いきや、既に身に着けているスキルだけしか表示されず、ポイントもごくわずかしかないので慎重に割り当てていっている。このスキルを上げていくと次のスキルが出てくるとかそういう中長期的な期待感もなかった。スキルはポイントを振らなくても自然に上がることもあるので、じゃあ別にいま振らなくてもいいかみたいなことにもなっていた。

次に主人公の存在感がないこと。これってたまに見かける設定だけど、そんなことあるかって思う。他作品だけど藤巻忠俊「黒子のバスケ」なんてコートにいる選手なのに相手チームに勘づかれにくいなんていまいち納得できずにモヤモヤしたまま見続けなければならなかった。現実世界で存在感のない主人公が活躍することになにか読者が快感を感じるからだろうか。

自宅の倉庫にダンジョン出現というのは、最初に札幌の大通公園にあるという混み混みのダンジョンで窮屈な探索が描かれた上で、ほぼ自分だけが独占できるダンジョンを見つけてゆったり探索できてうれしいということらしい。といってもダンジョン自体は公共物という扱いなので、発見して通報したら自衛隊っぽい組織の人たちがやってきて有資格者しか入れないよう駅の自動改札みたいなゲートを設置して入退場を管理していた。なんかそれっぽくて笑った。

主人公の青年の目的はブログで有名になってインフルエンサーになることみたいなので、そのためにも強くなることを目指すし、お金も稼ごうとする。その過程でさまざまな人と出会い、有名冒険者たちと一緒に行動したり時には因縁つけてくるグループと戦わざるをえなくなったりする。青年はどんどん強くなっていくのだけど、その割には謙虚というか卑屈な感じがして、作者はそういうギャップを楽しんでほしいんだと思うけど、自分にはいまいち楽しめなかった。

冒険は最初一人でやっていたのだけど、途中で少女を助けたことからなつかれ、一緒にダンジョンに入るようになる。そいつは地味なこん棒使いかと思ったら実はレアな魔法使いだった。ただしダンジョン内の魔力を集めて放出することで発動するのでダンジョンの外では威力がとても弱いらしい。そこまで万能な能力ではなくて、ダンジョンの中でもそこまで強くはない。

主人公の青年とヒロインとでは年が少し離れているせいか青年は保護者みたいな立ち位置になるので恋愛には発展しないのだった。他に青年の家のダンジョン近くに支店を開いた女店主なんかも出てくるけれど、完全にネタキャラとして扱われていた。表面では営業スマイルをしながら裏では青筋を立ててピキピキしているなどのギャグが繰り広げられるのだけど、なんかこのプロレスには互いの立場とか状況の説明が足りていないのか楽しめなかった。

あこがれのヒーローというか先輩冒険者も出てくる。現代日本が舞台なので日本人の名前だらけで、普通の日本人の名前をカタカナ表記にしているのでいまいちかっこわるかった。こういうノリで世界を作りたかったんだろうけど、やっぱりちょっとかっこいい漢字の名前にしてほしかった。こいつはいいやつなんだけど、主人公の青年がへいこらしている気持ちにちょっとついていけなかった。

主人公の武器が短剣なのは珍しいと思う。別にシーフとか魔法使いでもないのに。そういえば現代の軍隊では剣とか槍とかは使わないでナイフ一択なんだけど、それはあくまで銃の補助だからだと思う。扱いやすそうだし素材が少なくて済むのはいいかもしれないけど。短剣でなにか特別な技を使うわけでもなかった。

とにかくいろんな点で中途半端で、この作品を大して楽しめていない自分がいた。2巻ぐらいから退屈だった。でもそこまで萎える要素はなかったので読み進めてしまった。適当なところで切り上げればよかったと少し後悔した。

主人公がバカみたいに無双するような作品はイヤだとか、すぐにヒロインとの恋愛に発展するのは安易すぎるとか、あくまで一介の冒険者が等身大の活躍をする作品が読みたいという人にはそれなりに楽しめるんじゃないかと思う。
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