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ホムンクルス 7巻まで
怪しいボンボンの医学生の申し出によりトレパネーションという第六感を開眼させる外科手術を受けた浮浪者ごっこ中(?)の主人公が、術後に精神世界を映し出す幻覚を見るようになる物語。

連載中に作者の山本英夫が覚せい剤かなにかで捕まったことで、薬やってないと描けるはずないと評判が立った。まあ実際に見てみるとそこまでヤバい世界ではなかった。

知り合いが強く勧めるのでずっと気になっていたら、ブックオフの在庫だぶつきにより一冊100円で4巻まで手に入ったので読み始めた。

題のホムンクルスとは、錬金術の用語としての人造人間ではなく、脳科学で人間の感覚器が脳のどこに割り当てられているかを分かりやすくモデルにした人間の図のこと。

この作者は「殺し屋1」「のぞき屋」でもそうだったように、本作でも人間の深い内面を描こうとしている。本作では、深層心理の闇を幻覚として分かりやすく図示していることが特徴で、カウンセラーが分析するという難解で面倒なプロセスを排除し、ビジュアルから読者に推理させるという楽しみまで提供している。本当にとてもよく出来ている。

導入部から引き込まれる。浮浪者として過ごす主人公の描写から始まり、彼の元に謎の医学生が現れ、トレパネーションという外科手術について説明する。半信半疑なのは主人公も読者も同じだ。実際に施術するシーン、術後の変化を恐る恐る確かめる主人公。あまりに見事なストーリーテリングに期待はものすごく高まった。

その後はちょっとボルテージが落ちるが、何故かロボットの手を持つやくざの親分が目に留まり、親分の精神世界に引き込まれていく。現実世界と精神世界が交互に展開し、緊張感のやりとりの末に解決に導かれる。

その次が風俗の少女。ここからがエロさの点でこの人の本領発揮だ。なまめかしい性欲のはけ口としてだけの少女のはずが、そこに妖しい幻覚が重なり、彼女の精神世界を探ろうとするうちに、逆に自分の精神世界に取り込まれそうになる。娯楽性バッチリ。

主人公が見る幻覚は、他人に投影されている自分の精神世界だということに主人公が気づく。つまり、様々な登場人物の分析をしていくうちに自分の正体に気づいていくというこの作品の構造が見えてくる。文学性も言うことなし。

ここまで完璧な作品は無いと思う。

あとは、どう結末をつけるのか、それだけが気がかりだ。「のぞき屋」の最後のようなぼやけた結末になりそうな予感がしなくもないのだけど、もっと衝撃的な結末を期待するのは無理ないことだ。

一冊読めば間違いなくハマる。
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