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宇宙カジノ略奪作戦 高飛びレイク・シリーズ1
連邦首府と取引して資源惑星の一衛星を99年租借してカジノを経営し巨万の富を築いたミルザ公国は、一万人の私設軍隊と要塞のような防衛システムを備えていて侵入者を阻んでいた。その中に蓄えられた財宝を狙って、腕利きの大泥棒たちが集まって略奪を試みる話。限定的な瞬間移動能力者《高飛び》レイクの活躍を描いたSF冒険小説の一作目。

作者は80〜90年代に遅筆で知られた大人気ライトノベル作家の火浦功。

さすがに25年以上も前の作品だけあって古い古い。明大前の古本屋でなぜか千円の値札がついていて、そのあと地元のブックオフに行ったら105円で売られていたので、いまでも案外読めるかと思って買って読んでみたらやっぱり厳しかった。

なんだかルパン三世をSFで焼きなおしたような作品だなあと思った。ヒロインのジェーンは、主人公レイクとかつて一緒に仕事をし婚姻関係にもあったが、二週間で大金とともに主人公の元から消えた過去を持っている。これってルパン三世の峰不二子だよねえ。アンティークな銃を愛用するという設定があったり、まだ主人公との愛情関係が残っている風だったりする。

メンバーはほかに、変装の名人で超美形壮年ブラム、凄腕ドライバーでメカニックのボビー、天才的な電子工学者ジム、組織に属していた戦闘マシーンのマイケルとミゲル、そして伝説的な大泥棒の通称「大佐」。

こうして改めて設定を挙げていくとそれだけでうんざりしてくる。ぬるいコンゲームの筋を思い浮かべてしまう。いくら今でも根強い人気(いろんな意味で)を誇る作家といえども、処女刊行作品(?)なのだからしょうがないのだろうか。無理せず書きやすそうな話を書いたというのなら責められないとも思う。

舞台設定とかキャラ造型なんかは割とよく出来ていて素直に世界に入り込めた。最初に紹介したミルザ公国の成り立ちの設定は結構リアルだと思う。あと特に、レイクの瞬間移動能力が、「自分が強くイメージできる場所」に「一日の最大で一回か二回」までしか使えない、という設定がクライマックスを盛り上げてくれるところとか、ちょっと安易だけど最後の展開なんかは良かった。

ヒロインのジェーンはルパン三世の峰不二子の焼き直しだと言ったが、峰不二子みたいな極端に女臭いキャラではなく、今日よく見るアニメ的なツンデレで直情的な美女というところは、今でもまだ魅力を保っていると思う。さすがに台詞に「あーん」とか使われてる点では既に腐っているのだが…。ところでいまのライトノベルの台詞回しも多分十年後はともかく二十年後には軒並み腐臭を放っているんだろうなと思うと怖い。

アクションシーンがさっぱりダメ。敵のボスとの対決や最後の逃亡の部分が特にマズい。文章のテンションに置いていかれる。でもアニメの脚本だったら良かったんだろうなとなぜか読んでいて冷静に思った。そういう意味では、黎明期のライトノベルを代表する作家の一人なのだろうな。

巻末の解説で有名な漫画原作者の小池一夫が駄文を書いている。自分の私塾門下から輩出した新人作家を、言い訳臭く自分の功績のようにひねくれて語っている。人間らしいっちゃ人間らしいし、最後は同業者としてのエールで終わってはいるのだけど。
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