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ジパング 7巻
現代の自衛隊のイージス艦が、ミッドウェイ後の第二次世界大戦真っ只中にタイムスリップして、過去と現代の人々が歴史を変えていく話。

この作者かわぐちかいじの作品は、ほかには代表作「沈黙の艦隊」がある。物語の共通点は、作者が大胆にシミュレーションしている点にある。大胆なのはいいが、大胆が過ぎて、本当にそうなるのだろうかと思えてくる。いまいち現実感がない。

私は最初は期待して読んでいた。しかしこの七巻まできて、どうも期待はずれな予感がしてきた。有名人物がたくさん出てくるが、総じて好意的に描かれている。しかし、日本全体はあまり好意的に描かれていない。作者はまるでこういいたいようだ。
「日本には優れた人が何人もいたが、全体に押し流されて悪い方向へ進んでいった」
物語をつむぐ上では便利だし、読者も納得しやすいのかもしれないが、安易な上に夢物語である。

ちなみに、悪名高い辻政信を好意的に描こうとしている点はそれなりに興味深いのだが、まだあまり描かれていないのでこれからを見守ることにする。

それから相変わらずなのが画力である。機械や建物や小道具といったものはとても良い。しかし、人物がヘタクソで、描き分けが微妙になっている。メガネやヒゲや顔の輪郭や目の形などで描き分けようとしているのは良いのだが、たまにそれを通り越して感覚的な判別ができなくなることがあって困る。

もちろん良い面もいろいろある。まず、現代の我々のどっぷり平和につかった意識をすっきり目覚めさせてくれるテイストにあふれている。実際に戦死者が出て、葬送のシーンまである。

単純な人道主義に逃げるのではなく、現実的な解決するところもよい。イージス艦の圧倒的な戦闘力で強引に解決していない。

昔の日本の兵隊の描き方も、現代の日本人とは全然違うのだという点をかなり強調して描いていて、こうして改めてマンガとして描かれていると感覚的に納得できる。ただし一方で、アメリカ人の将校が当時のプロパガンダを無視して「日本人も同じ人間だ」と言うところは、無理にバランスをとろうとして陳腐になっている気がする。

未来を知った、戦中当時の若き海軍将校が、主人公たちの考えを越えたところで未来を変えようと動き出すところはとてもよい。まるで、現代に生きる私たちが戦中についてとやかく言うのに待ったを掛けようとしているようである。物語がどういう結末を迎えるのか分からないが、このあたりをうまく描ききれるかどうかが、この作品の質を大きく左右するだろう。

最後に、この「ジパング」という題名はどうだろう。本当の日本、という意味のようである。それなら「やまと」の方が良いように思うが、代表作「沈黙の艦隊」で主人公たちの潜水艦の名前に使ってしまったので避けたのか。どんな理由があるのか知らないが、私が思いつく可能性はすべて否定的なものだ。そもそもこの「ジパング」という言葉そのものがどこか安っぽさを持つように思える。
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