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MO’SOME STING(モー・サム・スティング)
殺されることを望む無頼な三十過ぎの法律屋でホモの田貫は、裏世界に関わって怪しい仕事をしているホモの浅黄から一方的な愛と仕事を受けていた。田貫は浅黄からトランクに入れられて保護された少女の護衛の仕事を請ける。少女は実の父親から命を狙われていた。事態はエスカレートし、大陸系ヤクザが乗り出してくる。

宝島社「このマンガがすごい!2011」オンナ編で一位を獲得したというヤマシタトモコの「HER」を読んでとても面白かったので、次は同じ作者で二位を獲得した作品を買おうと思ったら、オビにミスリードされてこの作品を買ってしまった。しかも軽い百合もの(女の同性愛)を扱った「マリア様がみてる」の新刊と同時に買っちゃってるし。

まさか私がBLもの(ボーイズラブ平たく言えば男の同性愛もの)をレビューすることになるとは思わなかった。最近なにかとBLものが好きな「腐女子」が市民権を得てきたのかいくつかの作品で見かけるようになり、彼女たちのキャラがなかなか良かったのでBLについてもそんなに悪い印象はなかったのですっかり油断していた。というか別に私は面白半分にBLに手を出したのではなく、書店と出版社の悪質なミスリードに騙されて買って読む羽目になったので、私は被害者である。ついでに言うと、こんなふうに意図せずにBLものに接してしまう人が出てきてしまうことでBLに対する風当たりが強くなったら腐女子もまた被害者になってしまうのではないだろうか。

まあそういうことで気を取り直して作品の紹介に移ることにする。

というか作品自体を紹介する必要もそんなにないと思う。あとがきで作者が書いているように、この作品は暴力とキャラ萌えのために描かれた作品だろう。冒頭で少女がトランクに入れられた状態から話が始まるのだけど、トランクは少女の命を狙う彼女の父親から逃れるカムフラージュのための小道具という説明付けはできるものの、刺激的なオープニングのための過剰な演出としか思えなかった。

浅黄は彼女の保護を田貫に依頼したあとで、報酬に五万足すからキスをしろと言って男同士の口付けがあり、そのキスが気に入らず浅黄は田貫を引っぱたく。とまあこんな同性愛と暴力の描写がメインとなる。そんな浅黄もまたヤクザから暴力的な性行為を強いられている。三十代のおっさんが犯されて顔をゆがめている絵があったり。

うーん。すごいね…。

かなり引いちゃったけど、でももしこれの男が女に置き換わったとしたら、私なんかは結構喜んで読んじゃうかも。暴力描写って結構セクシーで魅力的だ。さすがにボコボコに殴られて傷が出来ているような描写となると好き嫌いが分かれると思うけれど、苦痛に顔をゆがめるぐらいだったら多くの人は魅力を感じるんじゃないだろうか。だからきっとこの作品もそんな需要のもとに生まれたんじゃないかと理解することが出来る。

でもストーリーがつまらないんだよねえ。浅黄がなぜ少女を守ろうとするのか、という謎を軸にしているみたいなんだけど、強引すぎる設定じゃない?キャラクターに比重を置いているのは分かるのだけど、もうちょっとストーリーの裏打ちがないと、登場人物たちの一生懸命さの魅力が空回りしているように思えてしょうがない。でなければ登場人物のバックグラウンドをもっと教えて欲しい。なぜ田貫が死にたがりなのか?浅黄はホモなのになぜ○○を○ったのか?とか。保険屋の物語は一見いい感じには見えるかもしれないけど、まっとうな人生を送っている人間ならともかく、裏世界に関わっている人間が本気を出していないなんて言われて説得力あるの?しめくくりに大層な結論を持ってきているけれど、浅黄と少女の関係はほったらかし?

ひょっとしたら私のレビューでこの作品を読んでみたくなってしまう人がいるかもしれないけれど、かなり高い確率で後悔すると思うので、BLに興味があるなら他の作品をあたったほうがいい。っていうか登場人物ほぼ三十代ばっかだからこれBLじゃあないのかな。
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