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かぐや様は告らせたい 〜天才たちの恋愛頭脳戦〜 16巻まで
名門校に通う超お嬢様の四宮かぐやは生徒会副会長をやっていて勉強がとてもできたが、努力家で生徒会長の白銀御行にいつも負けており悔しい思いをしていた。彼はきっと自分のことが好きだろうと確信を持っていた彼女は、恋愛においては告白させたほうが勝ちなのだと思い、あの手この手で彼に告白させようとする。そんな一方で彼のほうもまた同じことを考えていたのだった。少年マンガ。

2019年の頭にアニメ化され、なんかイヤなタイトルだなあと思って見てみたら、R&B歌手の鈴木雅之がこれまたイヤな感じで歌い上げていたのでだいぶ萎えたのだけど、話のほうは登場人物がみんなせせこましく悩んだり暴走したりしていて愉快だった。たぶんサブタイトルの「恋愛頭脳戦」っていうのが振りで、中身で落としているから落差があって面白いだろうってことなんだろうけど、そこまでたどり着けない人が一定数いると思う。自分はこんな面白い作品をあやうく見落としかけた。

題に「かぐや様」とあるけれど、作中で作者が書いているようにこの作品はダブル主役で、かぐやだけでなく白銀御行の側からも描かれる。

かぐや様こと四宮かぐやは世界的な大財閥のお嬢様で、ちょっと背が低い和風の美人。性格も以前は険があったがいまは校内でも人気者らしい。でも実は裏では色々とえげつない計算や策略を弄している。ちょっとした言葉の掛け方により彼のなにげなく発しようとする言葉を状況的に自らへの好意から出たものだとすり替えようとする。

一方の白銀御行は、エリートの子女が集まる名門の一貫校で外部受験により特待生として入ってきた秀才。家が貧乏なのでバイトしながら勉強一筋でがんばっている。外部生ということで内部生から嫌われているのを、吊り上がった目に宿る強い意志で跳ねのけ、生徒会長として辣腕をふるっている。普段はデキる生徒会長を装って非常にクールで落ち着いているが、内心ではかぐやのことが好きでたまらない。でもその気持ちを押さえつけ、かぐやのほうから告白してくるよう小賢しい企みを仕掛けていく。

序盤はこの二人の計算高くてしょうもない告らせ合戦が続く。各話で毎回ナレーションによる勝敗の判定があるのだけど、両者なかなかうまくいかず一進一退が続く。この二人、好き合っているのになに馬鹿な事やってるんだろう、っていう感じの笑いなんだけど、プライドが高いせいか相手から馬鹿にされることを恐れていて、想像上の相手から「おかわいいこと」とニヤリとされるところを想像して勝手に悔しくなるシーンがしつこいぐらいに繰り返されるのが毎度笑ってしまう。

というこの作品の軸は正直自分にはそこまで面白いとは思えなかったし、むしろ少し嫌な感じさえするのだけど、この作品が面白いのは様々な脇役が絡んでいくところだと思う。

生徒会書記の女の子・藤原千花は天然の女の子で、二人がバチバチやっているところへ無防備にやってきて巻き込まれたり、あるいは逆に無頓着に破壊したりする(それでめっちゃかぐやから恨まれるのが草)。すごいすき。基本的には頭がゆるいのだけど、一方で非常に面倒見がよく、白銀御行がひどい運動音痴だったりするのでなんだかんだでコーチを引き受ける(そして毎回後悔する)。ピアノの腕は天才的なのにそっちの方向に進む気はなく、テーブルゲーム部というボードゲームなんかをやる謎の部活で謎のオタク少女たちとつるんでいる。

生徒会会計の男の子・石上優は根暗で不登校だったが親の経営する零細玩具メーカーの経理をやるほど数字に強い。この作品で一番の常識人なので色々なことに気づいてしまうが、それを知られまいとするかぐやから強い圧力を受けてビクビクしている。というしばらく地味な脇役が続くが、男勝りで人気者の先輩子安つばめのことが好きになり、彼女への片思いから少しずつ行動に移していこうとする話がすごくよかった。

かぐやには同い年で白人の血が少し混ざったメイド少女の早坂愛が仕えていて同じ学園にも在籍しているけれど、もっぱらプライベートで彼女のことを支えており、普段の特に生徒会役員の活動にはほとんど関わってこない。かぐやがスマートホンすらろくに知らなかったひどい箱入り娘なのに自信満々で勘違いするのでフォローするのにいつも苦労している。一方でこいつ自身もぶっ飛んだキャラで、割と投げやりに対応しているほか、白銀御行には正体を隠してハーサカというギャルとして接触している。

だいたいこのあたりがレギュラーメンバーとなって話が進んでいくのだけど、途中でとても生真面目な女の子の伊井野ミコが登場し、彼女視点のストーリーも進行する。裁判官の父を持ちまっすぐすぎて人から嫌われる不器用な彼女の話がちょっと痛々しいけれど自分を貫こうとする強い意志と時に弱気にもなる健気さがかわいい。

白銀御行には圭というクールな妹がいて、普段は兄のことを嫌っているように見えるが実は自慢に思っている。かぐやは当然こいつにさりげなく取り入ろうとするが、妹ちゃんのほうはもともとかぐやのことが好きらしい。でも妹ちゃんは藤原千花の妹と仲良しで千花のほうとも昔から仲良くしているのだった(ここでもかぐやに恨まれる千花)。

ギャグとシリアスが両方素晴らしい。ギャグは真剣な「恋愛頭脳戦」がこっけいなところのほかに、藤原千花の時々アナーキーすぎる振る舞い(「ドーンだYO」とか)や、黒いかぐや様の妄想が暴走したり、白銀御行のせこいところがメインだろうか。シリアスは主役級から脇役まで真剣なところが良かった。正直、かぐやのお嬢様としての悲哀とか、病気になると子供っぽくなったり衝撃を受けて一時感情を失ったりするところなんかはストーリーとしてはいまいちだと思ったけれど、キャラを好きになれていたのでなんだかんだで感情移入できた。

「恋愛頭脳戦」に決着がついたのも地味にすごいと思う。細かいところを気にするとヘンに感じた点もあったけれど、自分はとても納得できたし非常に楽しめた。そしてそこからも話が続いていくのは最高だった。

ここまでギャグが爆発的に面白いラブコメはなかなかないと思う。そのうえでロマンス(恋愛要素)もそこそこいいしシリアスな展開も入っていけた。シリアスが一区切りつくとものすごい振り幅でギャグに走るところはめっちゃ笑った。一方で、恋愛要素をメインで楽しみたい人には色々とぶちこわしな要素があって素直に楽しめないんじゃないかと思う。キャラ崩壊してるし(そこがいいんだけど)。

というわけで、よっぽど生真面目なロマンス好きでない限りぜひ読んで欲しい楽しい作品。
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