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魔導具師ダリヤはうつむかない ~Dahliya Wilts No More~ 4巻まで
メーカーに勤めていた技術者の女性が過労で死に、ファンタジー風の異世界に転生した。その世界での父親の影響により再び技術者となった彼女は、転生前の知識を活かして革新的な道具を生み出していくが、近親者の不幸や裏切りにあってふさぎこんでしまう。それでも彼女は周りの助けも借りつつ前を向いて生きていく。小説投稿サイトが原作の異世界転生ファンタジーマンガ。

コマーシャルでやっていて生産系に特化した異世界転生モノみたいでおもしろそうだったから読んでみた。おもしろかった。

この世界で彼女がなった魔導具師というのは、魔石の力を利用して生活を豊かにする道具を作る、いまでいうところの家電製品みたいな道具を作り出す人々のことで、強力な魔法を使う魔導師のような華々しさこそないけれど、社会を陰で支える重要な役目を持っているのだった。

いわゆる理系女子の物語なんだと思うけど、そう考えると違和感があった。技術者というと地味な蓄積が必要なのだけど、こいつのやっていることは商品の企画みたいだった。技術的なバックボーンがないとできないようなそれっぽいことを言っているけれど、うわべだけのようで前世が技術者だという設定にあまり説得力がなかった。マンガだから描写を省いているんだろうか。研究に没頭するあまり危険なブラックスライムを素手でこねてしまうエピソードが語られるのだけど、危険物に対する無頓着さという点でも違和感があった。意地の悪い言い方をすると「こいつはやはり女だ」と言いたくなる。

その点を除けば、不幸な目にあった女性が自らのアイデアと父親の残してくれた人脈により…そうだこいつ自身の努力というより父親が色んなコネを作ってくれていたのが大きいんだった。周りの人がよくしてくれるたびに、父親のいい話エピソードが挟まれるので少しうんざりする。

唯一、騎士団とのつながりは彼女が素材採取中にたまたま傷ついた騎士を助けたことにより得られるのだけど、人助けできるのも高価なポーション(薬)を惜しげもなく使うことのできる程度の財力が…ってここまでケチをつけることもないか。

それでも読んでいて彼女に思い入れることができるのは、序盤に襲い掛かる不幸がほんとうにかわいそうなので応援したくなってしまうからだと思う。

この世界には特許みたいな仕組みがあって、新しく生み出された道具のアイデアは7年間保証され、その道具を自分じゃない他の誰かが作って売れても一定の割合の収入が得られるようになっている。その仕組みを管理するのが商業ギルドで、商会同士の取り決めだとか公証人を同席させたやりとりだとかも仲介する。香月美夜「本好きの下剋上」の商人ベンノさんがらみの商売の話を抜き出したような感じ。

大きく違うのは、「本好きの下剋上」のマインが作り出すのは現実世界の技術をそのまま再現したものだけど、この作品のダリヤが作り出すのは魔石を利用した空想技術の産物であるということ。マインの挑戦は科学技術の遅れた世界で地球の技術を再現する試みなのでスリリングだったけど、この作品では魔石という色んな可能性のあるものを使っていながら、作るのは現代の科学技術の産物のようなものばかりというのはちょっと夢がないというか物足りなかった。それでいて魔石なんだからなんでもアリみたいな感じがあるのであまりドキドキしなかった。渡辺恒彦「理想のヒモ生活」だと、魔法ならではの夢のある魔道具が色々出てきたし、逆に現代の技術により魔道具の材料を大量生産できるかも、みたいな挑戦もあってワクワクした。

前述の助けた騎士とのラブロマンス(?)があるのだけどなかなか進まない。こいつは有名な伯爵家の四男で、例によって長身で美男なのだけど、自分は家を継げないのでいずれ貴族でなくなるしお金もそれほど持っていない。ダリヤのことを恩人だと思っていて、好意も持っているっぽいのだけど、色々考えてダリヤとは少し距離を置いて友人として付き合っている。ダリヤも彼のことは悪からず思っているのだけど、身分が違うし自分に自信をなくしているからなのか最初から恋愛を考えていない。

たぶんこのあとは彼女のビジネスがなんだかんだで成功していくサクセスストーリーが描かれるのだろうし、その中で騎士様との愛をはぐくんでゴールインするんだろうから、これから楽しみに読んでいけると思う。

自分が今回ケチをつけた諸々の点が気にならなさそうなら読んでみるといいと思う。
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