ノンフィクション
経済・産業
リストラと能力主義
森永 卓郎 (講談社現代新書)
傑作(30点)
2005年2月20日
日本で広く行われているいわゆるリストラは企業本位の身勝手なやりかただと批判しつつ、これからのサラリーマンは自らの手でキャリアを形成してリストラに備えなければならないと説いた本。
明解な説明が気持ちいい。論理がしっかりしていて、納得させられる。
なぜ今の企業がやっているリストラが身勝手なのかというと、昔は人を雇うときは何の仕事をさせるかをすべて企業が決めていたからだ。企業は雇用を保障する代わりに、社員のキャリアを自由にできた。社員は、雇用が保障されていると思っていたからこそ、会社のためにあまり一般的ではない職能でも会社のために磨き、会社に奉仕してきた。そういう暗黙の雇用契約が成立していたのに、今の日本では企業が社員を裏切り、社員を放り出してしまっている。とまあこういうことらしい。本当にそのとおりだと思う。
読んでいて非常に考えさせられた。私は、会社の役に立つ技能を覚えて会社のために働きたいと思っていたが、今の時代こんなことを考えたら負け組になってしまうのだ。会社が儲かるかどうかなんて関係なく、自分の将来のためのキャリアを形成しなければならないのだろう。会社の収益の柱となっている枯れた技術を覚えるよりも、会社が赤字を覚悟で取り入れようとしている最新技術を覚えられる仕事を選ぶほうがいいのだ。もし自分の望んだ仕事が得られずキャリアが形成できないと思ったら、会社を移ることを考えなければならない。会社は社員のキャリアや将来を考えてくれないのだから、いつ無駄になるか分からないような技術を使った仕事を社員に押し付けようとするのだろうか。
この本で主に述べられていることは他にもある。人事部が自らの存在を肯定するために悪あがきをしているからゆがんだ構造になっているだとか、中間管理職なんていらないからフラットな構造にすべきだし事実その動きが強まっているだとか、どれもうーむと唸らせられる。
社員の給料は市場価値ですべて決めるほうが良いのだとも主張しており、どうにも納得しがたい自分がいるのだが、なぜ納得できないのかをはっきりさせられないので、作者の言うとおりなのではないかと納得させられそうになる。確かに世の中市場で成り立っているのでそれも仕方ないというか、それが一番公平なのかもしれない。じゃあ自分にはどんな市場価値があるのかと考えると、うーん、考え込んでしまう。まあ確かに、人を判断するのは難しいので、一つの企業の一人の上司から評価されるよう努力しても実を結ばなかったのであれば、高く買ってくれるところを求めてさまようのが一番なのだろう。というかそれ以前に現在の状況はサラリーマンにとっては雇用主側が不当なカルテルを結んでいるようなものなので、法律や外部からの作用が必要であろう。
あとは、サラリーマンはみんな個人事業主になるべきだとか、副業をどんどんやるべきだとか、いつもの森永節も最後のほうに出てくる。
もう一つぐらい気になったことを取り上げると、多くの企業で採用しているという目標管理型の査定の問題点なんかの説明も興味深かった。
でもやっぱり過激すぎてついていけないところもあるなぁ。部長の役割を入札で決めたら新人が年間200万で落札したとか、架空の大手企業系シンクタンクを舞台に作者の理想論が語られる。作者自身これは特殊な状況だと言ってはいるが、実際のところ一部でも当てはまるような会社はどのくらいあるのだろうか。
とまあそんな感じで、前半はこれからのサラリーマンの持つべき視野という現実論が語られ大いに納得し溜飲を下げ自分のために役立て、後半は世の中こう進むべきという理想論が語られて膝を打つという、現実と理想の両方が語られており、よくできた本だ。サラリーマンが自分の置かれている状況を再確認するには良い話が聞けた。
明解な説明が気持ちいい。論理がしっかりしていて、納得させられる。
なぜ今の企業がやっているリストラが身勝手なのかというと、昔は人を雇うときは何の仕事をさせるかをすべて企業が決めていたからだ。企業は雇用を保障する代わりに、社員のキャリアを自由にできた。社員は、雇用が保障されていると思っていたからこそ、会社のためにあまり一般的ではない職能でも会社のために磨き、会社に奉仕してきた。そういう暗黙の雇用契約が成立していたのに、今の日本では企業が社員を裏切り、社員を放り出してしまっている。とまあこういうことらしい。本当にそのとおりだと思う。
読んでいて非常に考えさせられた。私は、会社の役に立つ技能を覚えて会社のために働きたいと思っていたが、今の時代こんなことを考えたら負け組になってしまうのだ。会社が儲かるかどうかなんて関係なく、自分の将来のためのキャリアを形成しなければならないのだろう。会社の収益の柱となっている枯れた技術を覚えるよりも、会社が赤字を覚悟で取り入れようとしている最新技術を覚えられる仕事を選ぶほうがいいのだ。もし自分の望んだ仕事が得られずキャリアが形成できないと思ったら、会社を移ることを考えなければならない。会社は社員のキャリアや将来を考えてくれないのだから、いつ無駄になるか分からないような技術を使った仕事を社員に押し付けようとするのだろうか。
この本で主に述べられていることは他にもある。人事部が自らの存在を肯定するために悪あがきをしているからゆがんだ構造になっているだとか、中間管理職なんていらないからフラットな構造にすべきだし事実その動きが強まっているだとか、どれもうーむと唸らせられる。
社員の給料は市場価値ですべて決めるほうが良いのだとも主張しており、どうにも納得しがたい自分がいるのだが、なぜ納得できないのかをはっきりさせられないので、作者の言うとおりなのではないかと納得させられそうになる。確かに世の中市場で成り立っているのでそれも仕方ないというか、それが一番公平なのかもしれない。じゃあ自分にはどんな市場価値があるのかと考えると、うーん、考え込んでしまう。まあ確かに、人を判断するのは難しいので、一つの企業の一人の上司から評価されるよう努力しても実を結ばなかったのであれば、高く買ってくれるところを求めてさまようのが一番なのだろう。というかそれ以前に現在の状況はサラリーマンにとっては雇用主側が不当なカルテルを結んでいるようなものなので、法律や外部からの作用が必要であろう。
あとは、サラリーマンはみんな個人事業主になるべきだとか、副業をどんどんやるべきだとか、いつもの森永節も最後のほうに出てくる。
もう一つぐらい気になったことを取り上げると、多くの企業で採用しているという目標管理型の査定の問題点なんかの説明も興味深かった。
でもやっぱり過激すぎてついていけないところもあるなぁ。部長の役割を入札で決めたら新人が年間200万で落札したとか、架空の大手企業系シンクタンクを舞台に作者の理想論が語られる。作者自身これは特殊な状況だと言ってはいるが、実際のところ一部でも当てはまるような会社はどのくらいあるのだろうか。
とまあそんな感じで、前半はこれからのサラリーマンの持つべき視野という現実論が語られ大いに納得し溜飲を下げ自分のために役立て、後半は世の中こう進むべきという理想論が語られて膝を打つという、現実と理想の両方が語られており、よくできた本だ。サラリーマンが自分の置かれている状況を再確認するには良い話が聞けた。