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ドラゴン桜 1巻

三田紀房

まあまあ(10点)
2005年6月5日
ひっちぃ

生徒数不足で破産寸前のおちこぼれ高校が、再生のための弁護士としてやってきた主人公の野心により、東大合格の実績を作り進学校として再建しようとする話とともに、受験の今とテクニックを語る作品。

ライブドアの堀江社長が自身のブログで絶賛したことで有名になった作品。もともと週刊モーニングというメジャーな漫画雑誌に連載されている作品なのだが、時の人が勧める影響力は大きい。

作品の性質上、あまりネタバレをするとよくないので、どうやって説明しようか。一つだけ言うと、東大の理一を狙おう、という切り込みには感心した。倍率低いし科目の関係上一番入りやすいのだそうだ。それって工学部じゃん、と言う生徒たちに対して、そんなのどうだっていいと言ってしまう主人公に感動した。そうだよなぁ。まず東大だし、学部なんて就職にそれほど関係ないもんなぁ。推薦があるから理系のほうが幅が広いくらいだし。いやそれはどうでもいいか。

私が読んだ1巻までには、それほど受験のテクニックは出てこないし、あってもそんなに驚くようなことは書いてない。ところが迫力があって説得力にあふれ、ありきたりなことが書いてあっても、やっぱりそうか!と感心してしまうほど作者を既に信頼しきって読んでいる自分がいる。

題名のセンスが悪い。由来は1巻で既に出てきている。これってノリでつけたとしか思えない。最終巻を読んでから判断しよう。まだ終わってないけど。

絵にクセがある。週刊モーニングといえば、独特のヘタ絵で有名なナニワ金融道が連載されていた雑誌である。絵のうまい下手より話の良い作品を載せるという方針の裏返しなので、むしろ逆に評価したいぐらい。

話の伝え方でも、細かいところを見るといまいちなところがいくらでも見つけられる。残念ながら、受験の仕組みやテクニックの解説以外の、ドラマを組み立てるところに関しては、最初から切り捨てたほうがいいんじゃないかと思う。まったくありきたりだし。ありきたりでも最後までいけば普通に感動できそうだからどうでもいいか。

これを読むとまた別の方向に話がいきそうだ。人間は個性なんてロクにないんだし、勉強するだけ勉強して効率よく生きろ、ということなのだそうだ。そうやって生きている人もいる。その代表がホリエモンだろう。でも世の中の大半の人はそんな生き方をしていない。ダラダラと心赴くままに生きている。

私も好きなゲームやって本やマンガを読んで怠惰に日々を送っている。多分損な人生も送っている。どうでもいいじゃん。私は多分平均的な日本人から見ると勉強した方の人間だし、学生の頃は勉強になりそうな本を頭に無理やり詰め込んだりコンピュータを一生懸命やってきて、努力を尊ぶ考え方を持っていた。それは現在の資産となっているので後悔はしていないが、そこまでやらなくても良かったと思うし、そのほうが楽しい人生を送れたかもしれないとさえ思っている。だって話題のあう人がなかなか見つからないし、逆に誰にも通じる世間話をするのがヘタになってしまっているのだから。バカ話から突然リー・クアン・ユーの話になって知的興奮を覚える時間も楽しかったけど、その場のノリでたわいもない話で協力会社の女性とかと時間を過ごす中で、時折かみ合わなくて歯がゆい思いをするのと引き換えになっているのだ。

この本の作者は、世の中のルールは頭の良い人間が自分の都合の良いように作っていると言っている。だけど私に言わせれば、頭が良いというだけで敗者確定。なぜなら、そういう人たちは頭で勝負するしかなかったから頭をよくした人だからだ。大人になってから色んなところで負けたとしても、そんなに大きな問題ではないと思う。いずれにせよ私のような中途半端な人間が一番の負け組なのではないかとの嫌な妄想が始まって憂鬱になる。

そんなこんなで、期待を裏切らない本かな。

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