マンガ
BLEACH 1〜17巻
久保 帯人
傑作(30点)
2005年6月14日
霊感の強い主人公の高校生・黒崎一護が、ホロウ(邪悪な霊)というものを退治する「死神」の少女・朽木ルキアと出会い、ふとしたことで彼女の死神としての力を吸い取ってしまう。そこから一護はルキアの代わりにホロウ退治をすることになる。
以上が第一部?で、現在は第二部?で、死神の力を与えてしまったルキアが、ソウルソサエティと呼ばれる彼女のもともと住む異世界に連れ戻され、裁判で死刑判決を受けてしまう。一護と仲間たちは、ルキアを助けるためにソウルソサエティに乗り込んでいく。
ヒロインのルキアは魅力的なキャラクターだ。古風なところが新鮮でいい。「たわけ!」「莫迦者!」と、古風な言葉遣いで一護を叱責する。髪型とか表情も一歩間違えばダサくなるところを、絶妙なバランスで読者をひきつけている。さらに現代社会を知らないという設定なので無邪気だし。うまいなぁ。実にうまい。
それに比べると主人公の黒崎一護はそれほど特別なキャラを持っているわけではないけど、押さえるとこを押さえてあって熱血キャラで悪くない。絵がいいし。
絵について言うと、どこかで見た覚えのあるタッチの絵だ。誰かのアシスタントを長いことやっていた人なのかどうか、私はあんまり興味がないので調べないけど、既視感があるのは確か。でもとても完成度の高い絵だ。
その完成度の高い絵で、脇役もキッチリとデザインしている。それにネーミングセンスが抜群。井上織姫という、天然ボケで胸がやたらでかい少女とか、男勝りの空手少女たつき、メキシコ系の心優しい巨漢の茶渡(サドと読むがチャドと呼ばれる)、謎の商店主・浦原喜助、それに第二部で大量に出てくる敵の登場人物たち。
とキャラの造形には天才的なものを見せる作者だが、ストーリーの組み立ては平均以上のものは持っていない。まあ平均ならいいかって感じ。敵のホロウは悪霊なので、人情モノの話がいくつかあったが、どれもいまいちな感じ。死が絡むので、普通に組み立てるだけでそれなりの話が出来てごまかせるはずなのだが…。
そんなストーリー下手な作者が方針転換をするために、第二部に話を転換したのかもしれない。だってこのまま続けていたら、延々感動話を量産しなければならなくなるわけだし。第二部は、せっかく作ったルキアというヒロインをほぼ捨てて、護廷十三隊という敵の組織の幹部を大量にキャラデザインする。作者の能力を最大限に生かした新展開だと思う。ルキアがもったいないけど…。
17巻の時点で、ルキアが死刑にされる陰謀はまだ明かされないが、徐々に核心に近づいていっている。その流れを見ると早くも作者のことを心配してしまう。この結末をちゃんとつけることが出来るのだろうか。作者にとっては、さっさと片付けて第三部に行ってまた新しいキャラをデザインしたいんだろうなぁと思う。
作者をコケにしたいわけじゃないけど、分かりやすい性格をしているなと思う。この作品を読んでいて分かるのは、この作者はカッコイイモノが好きなんだなぁと思う。それは作品名とその題字、各話の横文字のタイトル、キャラ一人一人にテーマミュージックを設定するところから伺える。普通の人がここまでそうだとちょっと呆れるかもしれないが、作家が読者とくに子供たちに夢を見せていると思う。第二部の護廷十三隊は、明確なヒエラルキーがあって、隊長、副隊長、第三席、以下席次が続いていて、強さの序列がある。隊によって性格があったりと、設定も細かい。こういうものがカッコイイと思っていて、作者自身大好きなんだろうな、ということが伝わってくる。私もこういうのが好きだ。
ただ私が危惧するのは、オタク志向をこれ以上強めないで欲しいことだ。特に十一番隊の副隊長のあのガキはなんだろう。それにストーリーとあんまり関係しない敵脇役に肩入れしすぎたりしている。このあたりは軌道修正しないと荻原一至になってしまいそうだ。
ドラゴンボール化という語りつくされた現象の兆候もあるが、それ以前にこの作品はバトルと成長の描かれ方につたなさを感じる。主人公が強敵と当たり、最初は負けて絶望的な状況になるが、最終的に撥ね返す。そんなありきたりな、言葉にすると味気ない筋でも、描き方によって読者は引き込まれるものだ。しかし明らかに他の作品と比べてつたない。なぜだろう。うーん。理由を書かないと言いがかりをつけているみたいだが、いま時間を掛けて分析してみる気も起きないので追々考察することにする。
まとめ。キャラ造形が魅力的、絵もうまくて私好み、十分楽しませてもらった。でも、話がなぁ…。物語を楽しみたい人には勧められない。キャラ萌えしたい人には絶対お勧め。
カッコイイモノ好きの作者が、カッコイイストーリーをよそからうわべや形だけ模倣してモザイクで組み立てるようになると、作家として先が見えてしまう。一皮むけてほしい。
以上が第一部?で、現在は第二部?で、死神の力を与えてしまったルキアが、ソウルソサエティと呼ばれる彼女のもともと住む異世界に連れ戻され、裁判で死刑判決を受けてしまう。一護と仲間たちは、ルキアを助けるためにソウルソサエティに乗り込んでいく。
ヒロインのルキアは魅力的なキャラクターだ。古風なところが新鮮でいい。「たわけ!」「莫迦者!」と、古風な言葉遣いで一護を叱責する。髪型とか表情も一歩間違えばダサくなるところを、絶妙なバランスで読者をひきつけている。さらに現代社会を知らないという設定なので無邪気だし。うまいなぁ。実にうまい。
それに比べると主人公の黒崎一護はそれほど特別なキャラを持っているわけではないけど、押さえるとこを押さえてあって熱血キャラで悪くない。絵がいいし。
絵について言うと、どこかで見た覚えのあるタッチの絵だ。誰かのアシスタントを長いことやっていた人なのかどうか、私はあんまり興味がないので調べないけど、既視感があるのは確か。でもとても完成度の高い絵だ。
その完成度の高い絵で、脇役もキッチリとデザインしている。それにネーミングセンスが抜群。井上織姫という、天然ボケで胸がやたらでかい少女とか、男勝りの空手少女たつき、メキシコ系の心優しい巨漢の茶渡(サドと読むがチャドと呼ばれる)、謎の商店主・浦原喜助、それに第二部で大量に出てくる敵の登場人物たち。
とキャラの造形には天才的なものを見せる作者だが、ストーリーの組み立ては平均以上のものは持っていない。まあ平均ならいいかって感じ。敵のホロウは悪霊なので、人情モノの話がいくつかあったが、どれもいまいちな感じ。死が絡むので、普通に組み立てるだけでそれなりの話が出来てごまかせるはずなのだが…。
そんなストーリー下手な作者が方針転換をするために、第二部に話を転換したのかもしれない。だってこのまま続けていたら、延々感動話を量産しなければならなくなるわけだし。第二部は、せっかく作ったルキアというヒロインをほぼ捨てて、護廷十三隊という敵の組織の幹部を大量にキャラデザインする。作者の能力を最大限に生かした新展開だと思う。ルキアがもったいないけど…。
17巻の時点で、ルキアが死刑にされる陰謀はまだ明かされないが、徐々に核心に近づいていっている。その流れを見ると早くも作者のことを心配してしまう。この結末をちゃんとつけることが出来るのだろうか。作者にとっては、さっさと片付けて第三部に行ってまた新しいキャラをデザインしたいんだろうなぁと思う。
作者をコケにしたいわけじゃないけど、分かりやすい性格をしているなと思う。この作品を読んでいて分かるのは、この作者はカッコイイモノが好きなんだなぁと思う。それは作品名とその題字、各話の横文字のタイトル、キャラ一人一人にテーマミュージックを設定するところから伺える。普通の人がここまでそうだとちょっと呆れるかもしれないが、作家が読者とくに子供たちに夢を見せていると思う。第二部の護廷十三隊は、明確なヒエラルキーがあって、隊長、副隊長、第三席、以下席次が続いていて、強さの序列がある。隊によって性格があったりと、設定も細かい。こういうものがカッコイイと思っていて、作者自身大好きなんだろうな、ということが伝わってくる。私もこういうのが好きだ。
ただ私が危惧するのは、オタク志向をこれ以上強めないで欲しいことだ。特に十一番隊の副隊長のあのガキはなんだろう。それにストーリーとあんまり関係しない敵脇役に肩入れしすぎたりしている。このあたりは軌道修正しないと荻原一至になってしまいそうだ。
ドラゴンボール化という語りつくされた現象の兆候もあるが、それ以前にこの作品はバトルと成長の描かれ方につたなさを感じる。主人公が強敵と当たり、最初は負けて絶望的な状況になるが、最終的に撥ね返す。そんなありきたりな、言葉にすると味気ない筋でも、描き方によって読者は引き込まれるものだ。しかし明らかに他の作品と比べてつたない。なぜだろう。うーん。理由を書かないと言いがかりをつけているみたいだが、いま時間を掛けて分析してみる気も起きないので追々考察することにする。
まとめ。キャラ造形が魅力的、絵もうまくて私好み、十分楽しませてもらった。でも、話がなぁ…。物語を楽しみたい人には勧められない。キャラ萌えしたい人には絶対お勧め。
カッコイイモノ好きの作者が、カッコイイストーリーをよそからうわべや形だけ模倣してモザイクで組み立てるようになると、作家として先が見えてしまう。一皮むけてほしい。
(最終更新日: 2010年8月17日 by ひっちぃ)