映画、テレビ番組、舞台芸術
アニメ
GUNDAM SEED DESTINY
サンライズ、毎日放送
最高(50点)
2005年10月14日
遺伝子操作によりコーディネーターと呼ばれる先天的に優れた人間を作ることが出来るようになった未来。普通の人間である「ナチュラル」の中にコーディネーターをよく思わない勢力が生まれ、宇宙に地球に戦争を繰り広げたあとで訪れた平和から二年がたち、一つのテロから起きた火種は再び宇宙に戦いを起こしてしまう。政治も描くロボット宇宙戦争の人気アニメシリーズの新作の続編。
前作のテーマは「非戦」なのだそうだけど、本作ではそれを否定する造りになっている。コーディネーターの国家であるザフトの議長ギルバート・デュランダルという人物が、相互の陣営の憎しみを超えて平和を求めようとしているように描かれており、本作の主人公であるシン・アスカや彼の乗艦である新造戦艦ミネルバのクルーたちもそんな議長についていくのだけど、そこへ前作で生き残った大量の登場人物が徐々に関わってきて議長のやりかたに反対する。
本作はテーマが非常に分かりにくいと思う。こんなに分かりにくくて一般ウケするのだろうかと心配になった。議長の本当の狙いが語られるのは終盤も終盤、確か全50話中48話だか49話だった。本作の題が冠する destiny つまり運命だとか宿命とかの本当の意味がそこで初めて分かるようになる。目的のために手段を正当化してはならない、結果に優劣はない、それが生き物というものだ、とまあそんなことを言いたいのだと思う。
自分は本作でこの種明かしがされたとき、真・女神転生3の「ヨスガ」の考えを思い出した。そのゲームでは世界に大きく三つの思想が存在し、力こそ全ての思想(シジマ)、孤独こそ全ての思想(ムスビ)、そして秩序こそ全ての思想(ヨスガ)、の三つがあった。ヨスガの思想とは、まず完璧に秩序だった世界があり、そこに歯車として人間がはまるべきであるという考え方だった。
とまあだいぶ本作の核心に迫ることを言ってしまったけど、本作にとってこの核心はそんなに比重が高くはない。たぶんむしろどうでもいい部類だと思う。
では本作にとって何が一番重要なのかというと、考え方を異にする人々が対立しあってしまうということをなるべく公平にそして衝撃的に浮き彫りにしている点だと思う。前作でもアスラン・ザラとキラ・ヤマトが対立していたが、それは単に異なる陣営にいたからであり、それぞれの陣営で守るべきものがあったからに過ぎなかった。しかし本作では、登場人物それぞれが大なり小なり考え方を持ってそれぞれの陣営にいて、たまに揺れて陣営を切り替えたりするところに感銘を受けた。二つの陣営を代表するミネルバとアークエンジェル双方のクルーを濃く描き、戦い合わせている。
オーブという独立国家は、明らかに日本とだぶらせており、アメリカのイラク派兵に追従する日本への批判が感じられる。
以上、語るべきテーマは非常に素晴らしいと思う。しかし残念ながら成功の度合いは微妙だと思う。戦争とは善と悪が戦うわけではない、ということは十二分に描かれており、これはハッキリと成功だと思う。しかし、それ以上の主張についてはどうだろうか。分かる人にだけ分かればよいのだろうか。あんまり分かりやすく書きすぎると危険思想だと思われるから控えめにしたのだろうか。高度な思想は反社会的になる。それは受け取った側が各自で感じれば良いものなのだろうか。
ラストの盛り上がりがいまいちだった。前作は、中途半端なクローン人間として短命を宿命づけられた男が、自分を生み出した世界に復讐しようとするところを、主人公たちに倒されるという分かりやすい舞台が作られた。しかし本作ではどうだろうか。ネタバレはやめておくのでどう説明したらいいのか難しい。最後の戦いに難解な思想が絡んでいるため、爽快感がない。終局が意味不明だった。
主人公はどうなったか。多分普通の理解では、主人公は物語のカヤの外でした、ということになると思う。本作がいまいちだと言う人の感想は大体こんな感じだった。自分は少しうがって、主人公は自分の意志で自分の戦いをしました、ということだと理解した。彼にとってこの戦いは、人間の存在意味だとか世界の行方だとかそういった意味はなく、ただ自分が人間として戦ったということなのだと思う。だとしたらちょっと深すぎるのではないだろうか。
ステラという、まさにZガンダムに出てくるフォウそのまんまのようなキャラが出てくる。自分は正直かなりうんざりさせられたのだけど、昔の本シリーズを知らない世代にとっては衝撃があったかもしれない。本作は本作で素晴らしいのかもしれないけど、過去の蓄積の上に成り立っている作品だということを改めてここで強調しておきたいと思う。
さてどう評するべきかなのだけど、気になる点が非常に多く見られるけれど、本作でしか成し得なかった点、本作で成し遂げられた点には揺ぎ無いものがあるため、総合すると自分は非常に素晴らしい作品だと思う。
前作のテーマは「非戦」なのだそうだけど、本作ではそれを否定する造りになっている。コーディネーターの国家であるザフトの議長ギルバート・デュランダルという人物が、相互の陣営の憎しみを超えて平和を求めようとしているように描かれており、本作の主人公であるシン・アスカや彼の乗艦である新造戦艦ミネルバのクルーたちもそんな議長についていくのだけど、そこへ前作で生き残った大量の登場人物が徐々に関わってきて議長のやりかたに反対する。
本作はテーマが非常に分かりにくいと思う。こんなに分かりにくくて一般ウケするのだろうかと心配になった。議長の本当の狙いが語られるのは終盤も終盤、確か全50話中48話だか49話だった。本作の題が冠する destiny つまり運命だとか宿命とかの本当の意味がそこで初めて分かるようになる。目的のために手段を正当化してはならない、結果に優劣はない、それが生き物というものだ、とまあそんなことを言いたいのだと思う。
自分は本作でこの種明かしがされたとき、真・女神転生3の「ヨスガ」の考えを思い出した。そのゲームでは世界に大きく三つの思想が存在し、力こそ全ての思想(シジマ)、孤独こそ全ての思想(ムスビ)、そして秩序こそ全ての思想(ヨスガ)、の三つがあった。ヨスガの思想とは、まず完璧に秩序だった世界があり、そこに歯車として人間がはまるべきであるという考え方だった。
とまあだいぶ本作の核心に迫ることを言ってしまったけど、本作にとってこの核心はそんなに比重が高くはない。たぶんむしろどうでもいい部類だと思う。
では本作にとって何が一番重要なのかというと、考え方を異にする人々が対立しあってしまうということをなるべく公平にそして衝撃的に浮き彫りにしている点だと思う。前作でもアスラン・ザラとキラ・ヤマトが対立していたが、それは単に異なる陣営にいたからであり、それぞれの陣営で守るべきものがあったからに過ぎなかった。しかし本作では、登場人物それぞれが大なり小なり考え方を持ってそれぞれの陣営にいて、たまに揺れて陣営を切り替えたりするところに感銘を受けた。二つの陣営を代表するミネルバとアークエンジェル双方のクルーを濃く描き、戦い合わせている。
オーブという独立国家は、明らかに日本とだぶらせており、アメリカのイラク派兵に追従する日本への批判が感じられる。
以上、語るべきテーマは非常に素晴らしいと思う。しかし残念ながら成功の度合いは微妙だと思う。戦争とは善と悪が戦うわけではない、ということは十二分に描かれており、これはハッキリと成功だと思う。しかし、それ以上の主張についてはどうだろうか。分かる人にだけ分かればよいのだろうか。あんまり分かりやすく書きすぎると危険思想だと思われるから控えめにしたのだろうか。高度な思想は反社会的になる。それは受け取った側が各自で感じれば良いものなのだろうか。
ラストの盛り上がりがいまいちだった。前作は、中途半端なクローン人間として短命を宿命づけられた男が、自分を生み出した世界に復讐しようとするところを、主人公たちに倒されるという分かりやすい舞台が作られた。しかし本作ではどうだろうか。ネタバレはやめておくのでどう説明したらいいのか難しい。最後の戦いに難解な思想が絡んでいるため、爽快感がない。終局が意味不明だった。
主人公はどうなったか。多分普通の理解では、主人公は物語のカヤの外でした、ということになると思う。本作がいまいちだと言う人の感想は大体こんな感じだった。自分は少しうがって、主人公は自分の意志で自分の戦いをしました、ということだと理解した。彼にとってこの戦いは、人間の存在意味だとか世界の行方だとかそういった意味はなく、ただ自分が人間として戦ったということなのだと思う。だとしたらちょっと深すぎるのではないだろうか。
ステラという、まさにZガンダムに出てくるフォウそのまんまのようなキャラが出てくる。自分は正直かなりうんざりさせられたのだけど、昔の本シリーズを知らない世代にとっては衝撃があったかもしれない。本作は本作で素晴らしいのかもしれないけど、過去の蓄積の上に成り立っている作品だということを改めてここで強調しておきたいと思う。
さてどう評するべきかなのだけど、気になる点が非常に多く見られるけれど、本作でしか成し得なかった点、本作で成し遂げられた点には揺ぎ無いものがあるため、総合すると自分は非常に素晴らしい作品だと思う。
(最終更新日: 2023年1月8日 by ひっちぃ)