コンピュータソフト
シミュレーションロールプレイングゲーム
フロントミッション5
スクウェア・エニックス
まあまあ(10点)
2006年8月20日
近未来のリアルな世界観でいくつかの陣営に分かれる国家群とのあいだに主にハフマン島という突発的に生まれた資源の豊かな島を巡って争われるヴァンツァーというロボット兵器による戦いを題材にしたシミュレーションRPGの人気シリーズの第五弾。ロボットの部品に共通規格があり、色んな会社の部品を組み合わせて自分だけのヴァンツァーを作れるほか、パイロットにもタイプによりスキルを覚えられ、スキルチェーンによる多彩な戦闘が楽しめる。
私は第四弾を飛ばしてこの第五弾をプレイしたので、第四弾で既に生まれた仕組みについてもここで評することになることを留意してほしい。
本作では前半でハフマン紛争と呼ばれるシリーズ既定の歴史を一兵士としての主人公がなぞったあとで、特殊部隊に志願した主人公が幼馴染の人間を追って謎に立ち向かっていく。途中までのストーリー展開は非常によかったと思う。シリーズの土台となっている世界観がよく出来ていて、その上に無難に積み上げたという感じだ。
さて本作独特のテーマが筋の中心となるわけだが、ここが何を言いたいのかよくわからなかった。典型的なSFだと思って楽しめればそれでいいのだろうか。生物の概念を書き換えたと言わんばかりの黒幕の設定までは良かったが、その設定の実現可能性については言及されておらず、終盤は誰がどう見ても「あれで終わり?」と思うはず。
そして本作の本当の主題は、超々ツンデレなヒロイン・リンの存在だろう。病弱だった少女をあそこまでヤバいキャラにしてしまったのは正直やりすぎだと思うが、どうせやるんだから半端はしねえぜという製作者の思い切りの良さがヘンに清々しい。あんなかわいいキャラに「くそ虫」と言わせるのだから。そしてそんな強烈なキャラのヒロインが一方で外科的な副作用による弱点を持っていて、そのあたりのことでの主人公とのやりとりが、定番ながらもドキッとした。ただ、それ以外の面では典型的なツンデレキャラとして多少見え透いたやりとりがあって辟易しなくもない。
脚本の出来が素晴らしい。登場人物たちの会話の中身がよく出来ている。ここまでいい脚本の書ける人がこの業界にいたのかと驚いた。特にコリンズ周りの、アメリカ映画をいい感じにパクってきたおどけたやりとりには何度も微笑した。
さてゲームのシステム面に話を移す。
メカニックの存在には同シリーズ・オンライン版でも不要論があった。HPを回復させることができることにより、一見戦術の幅が広がったかにみえて、実のところいかに敵を少しずつ削りつつ味方のHPを維持するかという単純な解法に収束してしまったように思えて少し残念ではある。ただ、そんなに気になるほどではなかった。
色んなパーツを組み合わせてヴァンツァー(ロボット)を作っていけるのがこの作品の魅力だが、今回私はやる気がしなかったので主人公が最初から乗っていた機種のまま通した。ちょっとでも工夫すれば、たとえば主力武器を持つ腕を多少良くしたりとか、機種ごとの長所をいいとこどりして強いヴァンツァーを作れたと思う。これはプレイヤーである私自身の問題なので仕方ない。ただ、そんなに気を使わなくてもクリアしていけるように、良く言うと間口が広く、悪く言うと大味なシステムになっている。唯一アリーナではパーツを練らなければ勝ち残れないのでここだけは頭を使って楽しめた。ステージ型のシミュレーターといい、本編以外でマニアックな要素をちりばめたのは良いと思う。
その分、本編が単調なのが気になった。突破や防衛や目的遂行型のミッションのはずなのに、なぜか毎回のように殲滅が目的となるのはなんとかならなかったのだろうか。工夫次第でプレイヤーの作業感が少なくなるし、やりたい人だけ殲滅すればいいようにも出来たと思う。にしても「全敵の殲滅を以って任務完了とする」という台詞は聞き飽きた。
本作のシステムはかなり完成されている。フロントミッションオンラインをやったときにもそう感じた。マシンガンとショットガン、格闘武器二種、武器と装甲の属性、ミサイルやグレネード、四肢パーツとダメージなど。それらと密接に関わるスキルとの組み合わせも楽しい。ここまでシステムが着実に進化していったのは、地味ながらも非常に大きな成果なのではないだろうか。惜しむべきは、それらがいたずらに用意されている一方で、ステージのクリアにそんなに左右されないところだろうか。
プレイステーション2になってからのヴァンツァーの戦闘でのグラフィックスの美しさにはうっとりする。特にマシンガンを撃ってそれが敵に当たるところは非常にリアルで、見ているだけで快感なのでスキップ可能なのだが毎回見てしまう。
全体的なところを述べると、本作は割と小粒だと思う。ネット上とくに2ちゃんねるでの評判は、不朽の名作である第一弾に迫るまとまりの良さで、第二〜四弾の駄作(?)を吹っ切ったと思いのほか高評価だった。しかし私には本作は、前作までと比べてストーリーの広がりが感じられなかった。それと、オンライン版と平行してやっていたのでどうしても比較してしまうのだが、このゲームの特徴はシミュレーションRPGであるというところにありそこが根強いファンを獲得しているのだが、システム自体はアクションゲームのほうが相性がいいのではないかと思った。
多分人気シリーズなので続編は出ると思うが、正当な続編は当然シミュレーションRPGとして出るのはいいとして、これまで出たリアルタイムストラテジーのオルタナティブやネット多人数対戦アクションのオンライン版などの派生版として次にどんなものが出るかのほうが私には楽しみだ。正当な続編には何を期待すればいいのか分からない。ファイナルファンタジー12のようなガンビット(簡易AI編集)を使ったリアルタイムな形になると面白いように思うが、さすがにそのままでは無理だろうから、期待して待っているしかない。
私は第四弾を飛ばしてこの第五弾をプレイしたので、第四弾で既に生まれた仕組みについてもここで評することになることを留意してほしい。
本作では前半でハフマン紛争と呼ばれるシリーズ既定の歴史を一兵士としての主人公がなぞったあとで、特殊部隊に志願した主人公が幼馴染の人間を追って謎に立ち向かっていく。途中までのストーリー展開は非常によかったと思う。シリーズの土台となっている世界観がよく出来ていて、その上に無難に積み上げたという感じだ。
さて本作独特のテーマが筋の中心となるわけだが、ここが何を言いたいのかよくわからなかった。典型的なSFだと思って楽しめればそれでいいのだろうか。生物の概念を書き換えたと言わんばかりの黒幕の設定までは良かったが、その設定の実現可能性については言及されておらず、終盤は誰がどう見ても「あれで終わり?」と思うはず。
そして本作の本当の主題は、超々ツンデレなヒロイン・リンの存在だろう。病弱だった少女をあそこまでヤバいキャラにしてしまったのは正直やりすぎだと思うが、どうせやるんだから半端はしねえぜという製作者の思い切りの良さがヘンに清々しい。あんなかわいいキャラに「くそ虫」と言わせるのだから。そしてそんな強烈なキャラのヒロインが一方で外科的な副作用による弱点を持っていて、そのあたりのことでの主人公とのやりとりが、定番ながらもドキッとした。ただ、それ以外の面では典型的なツンデレキャラとして多少見え透いたやりとりがあって辟易しなくもない。
脚本の出来が素晴らしい。登場人物たちの会話の中身がよく出来ている。ここまでいい脚本の書ける人がこの業界にいたのかと驚いた。特にコリンズ周りの、アメリカ映画をいい感じにパクってきたおどけたやりとりには何度も微笑した。
さてゲームのシステム面に話を移す。
メカニックの存在には同シリーズ・オンライン版でも不要論があった。HPを回復させることができることにより、一見戦術の幅が広がったかにみえて、実のところいかに敵を少しずつ削りつつ味方のHPを維持するかという単純な解法に収束してしまったように思えて少し残念ではある。ただ、そんなに気になるほどではなかった。
色んなパーツを組み合わせてヴァンツァー(ロボット)を作っていけるのがこの作品の魅力だが、今回私はやる気がしなかったので主人公が最初から乗っていた機種のまま通した。ちょっとでも工夫すれば、たとえば主力武器を持つ腕を多少良くしたりとか、機種ごとの長所をいいとこどりして強いヴァンツァーを作れたと思う。これはプレイヤーである私自身の問題なので仕方ない。ただ、そんなに気を使わなくてもクリアしていけるように、良く言うと間口が広く、悪く言うと大味なシステムになっている。唯一アリーナではパーツを練らなければ勝ち残れないのでここだけは頭を使って楽しめた。ステージ型のシミュレーターといい、本編以外でマニアックな要素をちりばめたのは良いと思う。
その分、本編が単調なのが気になった。突破や防衛や目的遂行型のミッションのはずなのに、なぜか毎回のように殲滅が目的となるのはなんとかならなかったのだろうか。工夫次第でプレイヤーの作業感が少なくなるし、やりたい人だけ殲滅すればいいようにも出来たと思う。にしても「全敵の殲滅を以って任務完了とする」という台詞は聞き飽きた。
本作のシステムはかなり完成されている。フロントミッションオンラインをやったときにもそう感じた。マシンガンとショットガン、格闘武器二種、武器と装甲の属性、ミサイルやグレネード、四肢パーツとダメージなど。それらと密接に関わるスキルとの組み合わせも楽しい。ここまでシステムが着実に進化していったのは、地味ながらも非常に大きな成果なのではないだろうか。惜しむべきは、それらがいたずらに用意されている一方で、ステージのクリアにそんなに左右されないところだろうか。
プレイステーション2になってからのヴァンツァーの戦闘でのグラフィックスの美しさにはうっとりする。特にマシンガンを撃ってそれが敵に当たるところは非常にリアルで、見ているだけで快感なのでスキップ可能なのだが毎回見てしまう。
全体的なところを述べると、本作は割と小粒だと思う。ネット上とくに2ちゃんねるでの評判は、不朽の名作である第一弾に迫るまとまりの良さで、第二〜四弾の駄作(?)を吹っ切ったと思いのほか高評価だった。しかし私には本作は、前作までと比べてストーリーの広がりが感じられなかった。それと、オンライン版と平行してやっていたのでどうしても比較してしまうのだが、このゲームの特徴はシミュレーションRPGであるというところにありそこが根強いファンを獲得しているのだが、システム自体はアクションゲームのほうが相性がいいのではないかと思った。
多分人気シリーズなので続編は出ると思うが、正当な続編は当然シミュレーションRPGとして出るのはいいとして、これまで出たリアルタイムストラテジーのオルタナティブやネット多人数対戦アクションのオンライン版などの派生版として次にどんなものが出るかのほうが私には楽しみだ。正当な続編には何を期待すればいいのか分からない。ファイナルファンタジー12のようなガンビット(簡易AI編集)を使ったリアルタイムな形になると面白いように思うが、さすがにそのままでは無理だろうから、期待して待っているしかない。