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Romancing SaGa - Minstrel Song -

SQUARE ENIX

傑作(30点)
2006年9月9日
ひっちぃ

ストーリーやパーティ編成や装備などあらゆるものの自由度が高いコンピュータRPGの人気シリーズの最新作。プレイステーションで出すようになってから進化を目指して進んできた過程の中で問題作が生まれたこともあったが、本作では原点回帰を目的としたことで古くからのファンからの賛同を得た。

いきなりオープニングで山崎まさよしの飄々とした歌声が聞こえてくる。一つの世界を舞台にして、八人の主人公から好きなのを選ぶことが出来ることを始めとして、この世界には色々な人々がそれぞれの生活を送っていることがオープニングムービーから伝わってくる。本シリーズの魅力の一番大きなところだろう。

まずストーリーだが、序盤だけはなにかしら用意してくれるものの、そこから背中を蹴られてしまう。町の人と話しているうちに色んな場所にいけるようになるのだが、何も目的がないまま町から町へ移動しなければならないこともある。小さいシナリオをクリアしていったり、大きなシナリオが始まったりして、最終的にはサルーインという大ボスを倒すところまでいくのがこのゲームの目的である。

最初主人公は大体一人から始まるが、ストーリー展開上もしくは町のパブなどに出現する登場人物から好きなのを誘って最大五人まで組める。このいい加減さ、選り好み出来るところもまた本作の魅力の一つだろう。キャラクターのグラフィックスのうち美男・美女系は安野モヨコの絵じゃないかと思わせるぐらいタッチが似ている。マンガタッチの三頭身キャラがあふれている。

戦闘システムは普通のターン制のありきたりなものをベースとしているが、十数種類の武器のいくつかを使っているうちにその武器に応じた技を運によってひらめいて覚えていく。魔法は店から買うのだが、使えば使うほど強くなっていく。武器と魔法にはスキルレベルがあり、お金とはまた別のジュエルというポイントを稼いで町で強化していく。キャラクターによって内部で得意スキルなんかが決まっているようだが、それを除けば好きなスキルを好きなキャラクターに覚えさせることができる。

普通のRPGでは、弱い敵・強い敵が出現するエリアというのは決まっていたが、このゲームでは単純に戦闘回数が増えれば増えるほど強い敵が出現する。敵はどんどん強くなっていき、それにつれて味方も成長していくが、ちゃんと戦略を立ててキャラクターを育てていくかどうかで戦闘が楽になったり厳しくなったりする。このゲームバランスが微妙で、良く言えばゲーム要素が強くなっていて、ただ単に味方を育てていけばそのうちクリアできる他のRPGとは一線を画している。

以上ここまででおおざっぱにこの作品について説明してきた。ここからはいくつかポイントを絞って批評していく。

このゲームは一応シリーズが進むにつれて若干親切になってはいるが、それでもまだまだ敷居が高いように思う。メニュー画面でのヘルプや、ギユウ軍による解説、そしてなんと戦闘中に起きた連携などの事象を初回だけボイス付きでかっこよく解説してくれたりしてくれるのが笑ったのだが、根本的な部分での説明が足りないように思う。じゃあどうしろというのかと言われたら私も困るのだが、妖精さんでもつけてプレイヤーに次の行動を提案してくれたりするとか、色々方法は考えられるのではないだろうか。もちろんこれらは通なゲーマーにとっては不要なものだ。

詩人がこの世界の物語を語っていくというのは味があってなかなかいい。この作品の副題が Minstrel Song というのも、製作側がそこらへんに力を入れたからだろう。物語は牧歌的な音楽とともに声優が語る。この声優が、アニメの声優とはまた違う魅惑のボイスを聞かせてくれる。どちらかというと劇団という感じがする。一体どういう人がどういう方針でまとめたのだろう。

戦闘が鬱陶しい。このゲームは、マップ上の敵と接触することでエンカウントし戦闘画面に入るので、マップ上の敵を避けることができれば不要な戦闘は避けることができる。敵と戦うことがこのゲームの目的の一つなので、戦闘は一つ一つ確実にこなしていかなければならないのだが、ダンジョンの探索に集中したいときは敵を避けたくなるものだ。避けようとして避けれないと不利な態勢で戦闘が始まってしまう。敵によって移動パターンがあってゲーム性が高いのだが、それがときにわずらわしく感じてしまう。敵の強さもまちまちで、拍子抜けするほどの雑魚が出たかと思ったら、運が悪いとあっというまに全滅させられてしまうような強力な敵が出てきて気を抜けない。このゲームはこまめのセーブなしには成り立たない。敵がいるところでは常に全滅≒ゲームオーバーの危険があるため、1〜5回の戦闘ごとにクイックセーブしなければならない。そうしているうちに戦闘自体が鬱陶しくなる。

このゲームのゲームバランスがあまり良くは無いというのは多くの人が感じるところであると思うのだが、その悪いバランスのなかでいかにうまく立ち回るか、序盤から大金を得てキャラクターを強化したり、強力なパーティを編成して育て上げて快進撃するという楽しみがある。このマニア好みの楽しみのためにこのゲームがあるのだろう。もしここが変わってしまったら、本作は本作ではなくなってしまうのかもしれない。しかしもうちょっとなんとかならないのだろうか。マニアなら主人公八人分クリアするだろうから、うまく立ち回れば十時間ちょっとぐらいで一人クリアできるほど時間短縮できるとか、そういう攻略ができることに方向転換するともっと良いのではないだろうか。いま私は一人目の主人公でクリアしたあとで、もっとうまくプレイできたんじゃないかという思いで二人目の主人公でプレイしはじめてしまった。ゲーム展開が一人目と似てきたらやめるつもりでいるが、効率プレイの快感と新たな舞台・展開でやめられない。

スキルが戦闘だけでなくマップアビリティという非戦闘系のものもあって楽しい。クライミングのレベルがいくつ以上ないと進めない場所とか、○○サーチというアビリティを使うことで鉱石や薬草や宝箱や仕掛けが分かり、それを採取するためのアビリティを使うとなにかアイテムが手に入ったりするのが楽しい。ただし対応スキルのレベルと人数により回数制限があってそのあたりがストレスに感じる。アビリティのレベルがないばかりに進めなかったり採取できなかったりすると悔しい。とてもいいアイテムが手に入ると飛び上がりたくなるほど嬉しい。

自戒を込めて言うが、本作の独自性はコンピュータRPGの中で貴重なもので、多少プレイヤーたちが文句を言ったことで変わって欲しくない。それは製作側も分かっているようで、販売店に在庫の山を作って悪名を残したアンリミテッド・サガのような問題作が出ても本シリーズがそれほど変化無く続いていることからはっきりしている。だから希望するとしたら、間口を広くした外伝のような作品が出ると良いのではないだろうか。

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