マンガ
学園もの
高校デビュー 8巻まで
河原和音
最高(50点)
2007年5月4日
中学の頃はソフトボール部での活動だけで過ごしてきた主人公・長嶋晴菜は、高校に入ってからは恋愛だけで過ごそうと決意するが、恋のあれこれを知らないため何をやったらいいのか分からない。そこへ偶然現れた格好いい男・ヨウにコーチを頼むが、なかなかイロハが分からずひたむきに努力する。
本作は少女漫画である。中原アヤ「ラブ★コン」のアニメのコマーシャルで別冊マーガレットの宣伝をやっていてその中のイチオシがこの作品らしいので手に取ってみた。
何も分かっていない主人公の体育会系少女が街頭でナンパ待ちするところとか、偶然通りかかったイケメンに教えを請うところなんか、ありえない上にベタすぎる展開に序盤から不安になった。
しかしそのあとの展開が素晴らしい。まず教えを請う相手であるヨウの人物造形が素晴らしい。モテすぎて一方的に想われることにウンザリしていた中学時代、唯一自分が好意を示せる女の子を見つけて付き合うようになったものの、相手の望むようなことができずに彼女を泣かせてしまい、その思い出がトラウマとなって(すぐ泣く)女という存在自体に嫌気がさしていた。女に対して容赦ない言葉を浴びせるヨウだったが、そんなヨウに対して主人公・晴菜はひたむきに教えを請い、沢山の努力をして自分を変えようとする。こうしてヨウは晴菜に親身になっていくうちに、かつての自分の失敗をやりなおす機会を得ることになった。ヨウは晴菜のことを終始「アンタ」と呼んでいるのだが、親しみと尊敬の絶妙の距離感がこめられているようで、二人の物語に私は何度も感心のため息をもらした。女のほうだけでなく男の成長まで描いていて言うことがない。
三巻ぐらいまでは主人公のがんばりが勘違いギャグとともに緊張感のある展開で進む。それ以降は割と落ち着いてくるのだが、その分ギャグ比率が上がっていくことに感動した。最近読んだ中原アヤ「ラブ★コン」はギャグはギャグとして分けられているのだが、こちらは真面目で真剣な中にある勘違い系のギャグで、私にはとても爆発力があるように感じられた。ここまでシリアスと笑いが同居できる作品ってちょっとした奇跡じゃないだろうか。私は最近小説に浮気しているが、マンガ特に少女漫画はあらゆる作り話の芸術の中で一番レベルが高いのだということをこの作品で再認識した。
他の主要登場人物も特にコレというのはいないが全員キャラが立っていてそれぞれの魅力がある。ヨウの妹の美少女・麻美が性格悪いけど寂しがり屋なところとか、人がいい史也、特に彼氏彼女を作っていない落ち着いた朝丘と真巳、元強打者で晴菜に負けない変人の松阪。
絵もいい。正直最初ありきたりで特筆すべきものはないと思ったが、表情豊かな登場人物たちの絵はこの一風変わった物語を十分に支えている。あと晴菜の呆け顔はとても愛らしくてかわいい。というか晴菜のすべてがかわいい。最近読んで魅了された藤原ヒロ「会長はメイド様!」のヒロイン・鮎沢に勝るとも劣らないほど好きになった。
コラム(1/4スペース)の文章も面白い。姪っ子の話が結構出てくる。姪っ子の所作の観察とか、自分も子供みたいにかわいがってくれとか、他の作家さんの絵の下絵を描いて姪っ子に塗り絵遊びさせているうちにプロなのにその絵を投稿してやろうとか言い出す。当たり外れもあるけどいい。
ちょっとした愚痴として言わせてもらうと、少女漫画に出てくる男は子供以外は大抵誰も背が高い。多分平均180cmぐらいあると思う。この作品も例外ではない。
この作品の最大の欠点は題だと思う。「高校デビュー」という題は確かにこの物語の本質を突いている。しかし若干引いてしまう。じゃあ何がいいかと言われると困るのだが。
今後ちょっと気になるのは、7巻から迎えた新入生の男三人組だ。8巻でさっそく一人うまいこと処理して楽しませてもらったが、残る二人をどうやっていくのかやや不安である。でもしばらくは息切れしないだろうエネルギーを感じるのでこれからもとても楽しみだ。
本作は少女漫画である。中原アヤ「ラブ★コン」のアニメのコマーシャルで別冊マーガレットの宣伝をやっていてその中のイチオシがこの作品らしいので手に取ってみた。
何も分かっていない主人公の体育会系少女が街頭でナンパ待ちするところとか、偶然通りかかったイケメンに教えを請うところなんか、ありえない上にベタすぎる展開に序盤から不安になった。
しかしそのあとの展開が素晴らしい。まず教えを請う相手であるヨウの人物造形が素晴らしい。モテすぎて一方的に想われることにウンザリしていた中学時代、唯一自分が好意を示せる女の子を見つけて付き合うようになったものの、相手の望むようなことができずに彼女を泣かせてしまい、その思い出がトラウマとなって(すぐ泣く)女という存在自体に嫌気がさしていた。女に対して容赦ない言葉を浴びせるヨウだったが、そんなヨウに対して主人公・晴菜はひたむきに教えを請い、沢山の努力をして自分を変えようとする。こうしてヨウは晴菜に親身になっていくうちに、かつての自分の失敗をやりなおす機会を得ることになった。ヨウは晴菜のことを終始「アンタ」と呼んでいるのだが、親しみと尊敬の絶妙の距離感がこめられているようで、二人の物語に私は何度も感心のため息をもらした。女のほうだけでなく男の成長まで描いていて言うことがない。
三巻ぐらいまでは主人公のがんばりが勘違いギャグとともに緊張感のある展開で進む。それ以降は割と落ち着いてくるのだが、その分ギャグ比率が上がっていくことに感動した。最近読んだ中原アヤ「ラブ★コン」はギャグはギャグとして分けられているのだが、こちらは真面目で真剣な中にある勘違い系のギャグで、私にはとても爆発力があるように感じられた。ここまでシリアスと笑いが同居できる作品ってちょっとした奇跡じゃないだろうか。私は最近小説に浮気しているが、マンガ特に少女漫画はあらゆる作り話の芸術の中で一番レベルが高いのだということをこの作品で再認識した。
他の主要登場人物も特にコレというのはいないが全員キャラが立っていてそれぞれの魅力がある。ヨウの妹の美少女・麻美が性格悪いけど寂しがり屋なところとか、人がいい史也、特に彼氏彼女を作っていない落ち着いた朝丘と真巳、元強打者で晴菜に負けない変人の松阪。
絵もいい。正直最初ありきたりで特筆すべきものはないと思ったが、表情豊かな登場人物たちの絵はこの一風変わった物語を十分に支えている。あと晴菜の呆け顔はとても愛らしくてかわいい。というか晴菜のすべてがかわいい。最近読んで魅了された藤原ヒロ「会長はメイド様!」のヒロイン・鮎沢に勝るとも劣らないほど好きになった。
コラム(1/4スペース)の文章も面白い。姪っ子の話が結構出てくる。姪っ子の所作の観察とか、自分も子供みたいにかわいがってくれとか、他の作家さんの絵の下絵を描いて姪っ子に塗り絵遊びさせているうちにプロなのにその絵を投稿してやろうとか言い出す。当たり外れもあるけどいい。
ちょっとした愚痴として言わせてもらうと、少女漫画に出てくる男は子供以外は大抵誰も背が高い。多分平均180cmぐらいあると思う。この作品も例外ではない。
この作品の最大の欠点は題だと思う。「高校デビュー」という題は確かにこの物語の本質を突いている。しかし若干引いてしまう。じゃあ何がいいかと言われると困るのだが。
今後ちょっと気になるのは、7巻から迎えた新入生の男三人組だ。8巻でさっそく一人うまいこと処理して楽しませてもらったが、残る二人をどうやっていくのかやや不安である。でもしばらくは息切れしないだろうエネルギーを感じるのでこれからもとても楽しみだ。