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彩雲国物語7〜8の序盤まで

雪乃紗衣

駄作(-30点)
2007年6月6日
ひっちぃ

古代中国をモデルにしたファンタジー世界で初の女性官吏となった大貴族の娘を主人公にした恋と冒険と仕事の物語。二人ペアで異例の州知事となった主人公と影月少年だったが、貧乏な州のために画期的な政策を思いつき、主人公が自ら中央政府に乗り込んで段取りを進めようと奮闘する話と、州に残って謎の伝染病と戦う影月少年の話らしい。

六冊目の短編集の出来がひどかったので七冊目は読んでも読まなくてもいいやと思いながら読みつつなんとか読み終わった。もういいかと思ったが八冊目まで買っていたので少しだけ読んでみてついに投げ出した。

七作目は中央政府に働きかけるというちょっとプロット的に面白そうな話だ。作者はこういう筋書きを考えつくところはいい感じで、一人堅物の大臣がいて女で駆け出しの官吏なんかまったく相手にしないので、主人公はあの手この手でなんとか話を聞いてもらおうとする。

だがこの本来痛快であるはずの話が全然面白くないのはなぜか。一人の堅物以外の大臣とは既に仲が良くなっているのでゆるゆる。堅物を納得させる手段がありきたりな上に、こんなことに命を掛ける倫理観がおかしい。百歩譲ってこの倫理観が時代設定上よいとしても、こうしてがんばってやり通そうとしている政策が近代的でチグハグだ。

そしてこのシリーズにとって一番致命的なのは、王様や男どもとの関係が迷走していることだ。主人公は一体どうしたいのか。まず仕事第一だと言っている。迷ったあげく仕事が一区切りつくまで恋愛がどうのは一切考えないようにしようと結論を出すのはいいのだけど、なんかもうちょっと揺れてくれないと楽しくない。揺れないわりに王様の未練たらしい心情ばかり描写されていてうっとうしい。一方の静蘭とは完全に切れたようにしか見えないのだけどそれでいいのか。ちょっとは期待をつなげたほうがいいんじゃないかと、ここまで言ってしまうと身勝手な読者になってしまうけどそうも言いたくなる。

で八巻。影月の回想シーンがダメ過ぎ。この人はこれまでに何度も色んな人物の回想シーンを描いているが、そのたびに筆力の低さを感じた。感傷が先行しすぎ。最初読んでも誰の回想シーンか分からず、最後の方でやっと名前を出すのは、そういう演出でやっているのだろうけど読んでいて面倒。

特に今回の回想シーンがダメな理由は、伝染病かなにかの悲惨な状況の描写がへたくそすぎ、中でも死に掛けの老婆の口から「あたしがもう五十ばかし若けりゃ、押し倒してたもんだよ」なんて言わせる感覚が異常。村人のメンタリティが妙なところで洗練されている違和感。時代小説全体に言えることかもしれないけど。

とコキおろしてきたけど、よく考えたらこれは少女小説だからしょうがないのかもしれないな。少年が主人公のハーレムもののヤマグチノボル「ゼロの使い魔」なんか私は大好きだけど、男と女をひっくり返したらちょうどこの作品みたいになるのかもしれないな、と思うとちょっと自分に引いてしまう。

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